学生×海外居住×非「被扶養者」の税金~年金編~

 学生の身分であり海外居住であるという状況は、一定程度の確率で生じます。生じないよと思う人もいるかと思いますが、学生の身分で留学するとこれに当てはまります。学生の身分を持ちながら海外居住であり、しかし日本の税金を納める必要のある人に参考となるよう、私の個別具体的な経験をまとめます。特にこのページでは、年金(国民年金・厚生年金)について記載しています。

私の置かれ(てい)た状況1

 ここでは、私の置かれていた状況を、①私の肩書き、と②私の税金納付の実績に分けて記します。


 まずは、私の肩書きを箇条書きでまとめると以下になります。
・日本にある大学に学生として所属している
・日本国外に居住している

 次に、私の税金納付の実績を箇条書きでまとめます。
・修士号取得後、厚生年金を納めてきた
・上記期間中、勤務先が加入する健康保険に入っていた
※いわゆる会社務めの方と同じステータスと同様かと思います。

私の置かれた状況2と行政担当者とのやり取り

 上記の状況だけであれば、「日本の大学の学生である」ことを利用して、国民年金に関しては「学生特例納付」制度を利用してしまおうと考えていました(既に厚生年金を一定期間納めていたこともあって、今後もできる限り日本の年金制度に乗ることが個人としてのベストの選択と思いました。)。


 そこで、学生特例納付を申請すべく、居住する市町区村(出国してからは「日本国内における最後の住所地を管轄する市区町村」が担当となりますが、私の場合は同義です)へ連絡をしました。改めて、私からの連絡内容は以下のとおりでした。


・学生の身分を(再度)持ったので、学生特例納付を申請したい
・加えて、海外居住となる(=住民票を抜いて除籍する)ので、その際の特例納付の方法を教えてほしい

返答は下記のようなものでした。
・海外居住の場合、年金へは「任意加入」の扱いとなる。
・任意加入の場合、学生特例納付は受けられない。
・他方、学生でありながら海外居住で年金を納めることが妨げられるわけではない。任意加入のとおり、通常の海外居住の人が払っているのと同額を納める。


※失業による特例免除も、産前産後による特例免除も、強制加入者のみを対象としたものなので海外居住の場合はいずれも免除の対象にならないそうです。


※※上記の返答を年金担当者から得るには、何度か時間ややり取りを重ねる必要がありました。細かいことであっても、対応や制度についてわからないことがあれば都度担当者に尋ねるのが良いと思います。


※※※↑というのも、海外在住期間は国民年金(特に老齢基礎年金)の免除期間に加算されるということを、上記のやり取りの後自分で調べていて知ったためです。海外居住期間が免除期間に参入されるのであれば、学生特例納付と同じ状態を意味するのでは?とも考えましたが、国民年金の3つの柱のうち2つである障害基礎年金と遺族基礎年金の扱いが変わってきます。(そもそもの国民年金の内訳については、岩手県奥州市のページが非常によくまとまっています。学生特例納付を行っている最中であれば、仮に障害の残るような事故にあった場合、その後同年金を受給できますが、海外居住で任意加入をしていない場合海外居住中に初診日のある事故や病気が原因で障害を負った場合、請求ができないとのことです。逆に、海外居住でも任意加入をしていれば海外居住中に負った障害が理由で同年金を受給できるようです。この辺りについてはあきる野市のHPにまとまっています。また、遺族基礎年金についてはそもそもの受給要件が「18歳未満の子がいる時に本人が死亡したこと」に限られるためここでは割愛します。)どうやら海外居住時に任意加入しなくても、国民年金それぞれの「免除期間」には加算されるようなのですが、その免除期間の扱いが異なってくるのでややこしいようです(受給要件に関し、老齢基礎年金は納付+免除期間が10年以上であれば給付対象だが、障害基礎年金は初診日の前々月において、被保険者期間のうち、保険料納付済期間と免除期間を合わせた期間が3分の2以上であるか、もしくは、初診日の前々月までの直近の1年間に保険料の未納がないことが必要、など)。私の場合、海外居住であり任意加入をしないことで学生特例納付と思っていたほどの差は出ないものの、(老齢基礎年金の免除期間にはなるので)学生特例納付が受けられていたら受給できた障害基礎年金(と、場合によっては遺族基礎年金)が海外にいる限りは見込めないことがわかりました。
 その他参考にしたページ:「海外在住期間の長い人が、日本の年金を受け取るための要件は」、「海外でも受け取ることのできる日本の老齢年金・遺族年金・障害年金

 以上の返答を受けて、改めて海外居住者が国内の様々な制度に乗ることの難しさを感じました。(学生であっても思わぬ失業をしても(たとえそれが日本の企業での勤務だとしても)日本の国籍の子供を出産しても、海外居住者であれば特例免除が受けられないためです。)
 制度の詳細には詳しくなったものの、この情報だけでは国民年金をどうするのかについては答えが出せないままでした。


 やはり、現地(居住国)でどの程度の保険に入っているか、将来日本で生活する(年金を受給する(近年は海外居住でも受給できる制度が整えられつつありますが))可能性がどの程度あるか、日本の年金制度の見通しなど、複数の要因を考慮して決めていく必要がありそうです。

続いては、日本で確定申告をしなければいけない場合の、~所得税編~となります。


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