フルリモートで博士課程を行う

 私は現在、フルリモートプログラムではなく、いわゆる普通の課程において博士課程をリモートで過ごしています。下記では、フルリモートでの博士課程受け入れの経緯からやってみての現在の実感を記してみたいと思います。なお、他のブログ記事にも記している通り、私の研究分野は実験や施設が不要な社会科学です。
 私がリモートで博士課程を修了したいと考えた理由は、①配偶者の仕事の都合で居住地が定められていること、②その居住地で希望するような大学の博士課程がなかったこと、③更には今後数年の間に居住地が変わる可能性があること、があります。①の配偶者との「二体問題」は難しい話ですが、今回はここには焦点を当てず、どのようにリモートの博士課程を探したか、実際に回してみての雑感を書いています。

フルリモートでできる博士課程を探す道のり

 フルリモートできる博士課程を探す場合、はじめの大きな分岐点は、オンラインプログラムの設置されている大学を探すか、通常の博士課程をフルリモートで修了できるかどうかを確認することになるかと思います。
 まずは前者を一通り探してみたのですが、修士課程プログラムが圧倒的に多いことや博士課程といっても授業をメインにしていること、何といっても自分の志向する研究内容に合致する大学が見つからず、早々に断念しました。COVID-19の影響でどこの大学も実質リモートになっていることが多いのだから、オンラインプログラムというからには通常の博士課程にはない利点を期待して探す自分もいて、そうした点を見つけられなかったというのも断念した理由の一つでした。
 続いて、後者にあたりました。所在国を問わず、自分の分野に合致する研究を行う研究室へアドミンを通して連絡しました。結果はほとんどのところが受け入れ不可とのこと。理由は大きく二つに分かれ、単にphysical distanceがある状態で博士ワークを許容していないか、博士課程とはいえ単位取得が必須でそれが授業など対面でしか許可されないワークであること(これはほとんどが日本の国立大学からの回答でした。ちなみに、2020年末辺りの情報なので、今はさすがに変更されているかもしれないです。)でした。
 受け入れ先探しが難航したことで、一時期はフルリモートで博士課程は無理かもしれないと思ったこともありましたが、結局私が良い回答を得られたのは過去に顔を見知っている教授に直接連絡し、事情を話した上で理解を得たことによるものでした。
 直接の知り合いでなくても、メールアドレスを公開している先生にあたってみるというのはあり得る選択肢だと思います。特に、これほどにCOVID-19の収束が不確定なままである現在、大学側も変化してきていると思います。(入学後の所感) 

フルリモートで博士課程をしてみた雑感

諦めたこと

・授業のTAやライティングティーチングのサポートを担うこと
→これは早々に断念しました。TAの募集やライティングのアドバイザー募集など、ティーチングの機会があるごとに応募先へ連絡してみましたが、授業やサービスがオンラインであっても教える側はミーティングの機会などがあるためNGとのこと。

案外大丈夫だったこと

・ゼミや研究会
→現在基本的に授業はないものの、ゼミや有志の研究会などはオンラインでまったく問題なく進めています。むしろ、様々な準備の時間が省けたので快適にやっています。他方、結果的には大丈夫だったのですが、研究費のために必須の授業などがオンラインで受けられるかどうかがわからず少しひやひやした日々がありました。

・レファレンスやコピー、購入希望などの図書館サービス
→こちらも問題なくやっています。もともとレファレンスサービスなどはオンライン上で行えていたのですが、COVID-19の影響を受けて、文献をコピーした上で所定の場所に郵送するサービスも増えました。自前の図書館にない文献は一度図書館に取り寄せた上で郵送をしてもらえるので、大変助かっています。英語の書籍でe-bookがあるものは、購入依頼をすると2週間かからずに購入してもらえるので、ある程度タイムリーに文献にあたることができています。他方、こうしたサービスが存在することを認知するために普段からしっかりアンテナを張るように心がけています。(学内掲示板などで目に飛び込んでくる回数が少ないため)

・その他大学サービス
→大学が提供するウイルス対策ソフトやテクニカルツールなど、ITサポートもメールやシステムを使って遠隔で受けられています。奨学金の申し込みも、最終的に書類を郵送する必要があることを除けば、情報は不足なく得られているという実感があります。
 その他、単発のセミナーやテクニカルスキルの問い合わせ(データの使い方など)、説明会などの機会もオンラインで行っています。

大変なこと・苦労していること


・研究の壁打ち相手がいない
→もともと一人で研究を進めることには慣れていましたし、指導教官ともメール等で意思疎通ができる状態でのスタートだったため心配していなかったのですが、そんな自分でもここがネックになるか・・・という状態です。一人で黙々と研究室や研究棟で毎日朝から晩まで研究している日々でも、ふとした瞬間の雑談や、ホワイトボードでロジックを練っている時の誰かからの声かけによって得ていたものの大きさを実感しました。
 もし同じように壁打ち相手に困っている方がいればお声かけいただけると嬉しいです。

・家族の理解を得ること
→フルリモートということは研究室以外の自分でこしらえたスペースで研究を進めるということも意味しており、時間管理が大切になってきます。私の場合ずっと家で作業をしているので、それをどう家族(共に生活をする人)に理解してもらうかは課題だなと感じています。特に博士課程は、修士課程や仕事と比較して授業や打ち合わせなどのわかりやすい拘束が少なく、本人以外は何をしているのかまったくわからない場合も少なくありません。せめて大学に物理的に行けばわかりやすいものの、それもないリモート下で日々の理解(※これは博士課程に進学することそのものの理解とは多少異なるので)をどう得ていくかは難しいところだなと思います。

 まだまだこれから博士課程を修了するまでには色々な気付きが出てくるかと思いますが、とりあえずの雑感をまとめました。今後もフルリモート博士課程がメジャーな選択肢になることは考えにくいものの、何らかの事情があって選択したい場合に一助となればと思います。

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