見出し画像

[ヘアケアの歴史]日本独自の文化が生まれた戦後〜現代のヘアケア

民主主義国家として新たにスタートした戦後の日本では、さまざまな改革が行われました。しばらくは社会と経済の混乱期が続き、人々は生活難に苦しみます。
しかし戦争が終わったという開放感と、新しい時代を作るという希望にもあふれていました。
その時代に生き、当時の製品を消費した生活者の目線から、ヘアスタイルの流行やヘアケアを考察します。
1970年代以降は、私の実体験や感じたことをお伝えします。

どんどん向上した日本女性のおしゃれとヘアケア

戦争中は抑圧されていたおしゃれへのあこがれが一挙に吹き出し、女性のファッションにも華やかさが戻ってきました。
髪型はパーマスタイルがモダンなアメリカ文化の象徴として流行しました。戦後初期の洗髪頻度は月1〜2回といわれています。

昭和29年(1954)には映画「ローマの休日」の影響もあり、オードリーヘップバーンの髪型をまねたショートヘアが大流行しました。

昭和30年(1955)「ムチャです 大切な髪を…石鹸や洗剤で洗うのは」というコピーを用いたシャンプーの広告が新聞に掲載されました。
コピーから、まだ洗髪にシャンプー剤を使うことが浸透していないことが想像できます。

昭和34年(1959) 「5日に一度はシャンプーを」というコピーを用いたシャンプーの広告が新聞に掲載されました。
たびたび洗っても髪が傷まず、仕上がりが良いという内容。洗髪頻度が増していたことが分かります。

昭和41年(1966)ライオン エメロンリンス発売。ヘアリンスが一般家庭でも普及し始めました。

1960年代に入り洗髪頻度が高くなると、かゆみや臭い、フケなどの頭皮トラブルが減少して快適で心地よいため、シャンプー・リンスが習慣化したと考えられます。シャンプーの頻度は5日に1回位に。

45年間、自らが体験したヘアケアの変遷から見えること

ここまでの記事は、書籍やインターネットで調べて集めた情報をもとにお伝えしました。ここからは美容師歴45年、私(1958年生れ)の体験を軸に書いていきます。

画像1

出典:70年万博から半世紀 記念公園で記念式典

昭和51年(1976)美容室(広島市)に就職
当時のお客さまは多様でした。毎週シャンプー・セットにご来店されるお客さま。あまりシャンプーをしないご年配のお客さま。1〜3ヶ月に1度の頻度でご来店されるキャリアウーマンのお客さまなど、ご希望のヘアスタイルに合わせてカット・ブロー・パーマ・ヘアカラーなどのメニューを組み合わせて施術していました。
多くのお客さまのご自宅でのお手入れは、「カーラー仕上げ」でした。寝る前にパーマスタイル全体をカーラーで巻き、朝にブラシでとかしてふんわりさせて、ヘアスプレーをかけて仕上げるというものです。お風呂のあとに髪をドライヤーでしっかり乾かす人は少数派でした。
ヘアケアの目的は髪の傷み改善より、頭皮を清潔にすること(かゆみ、フケの改善)やカーラーを上手く巻けないなどの悩みの解決が中心でした。シャンプーの頻度は週に2〜3回でした。

昭和57年(1982)横浜の美容室に就職
レイヤーカットでパーマかけ、ブローしたスタイルが普及。松田聖子のアイドル風ヘアスタイルです。当時のシャンプー頻度を検索すると週に2〜3回とありますが、高校生や若い世代は、毎日シャンプーをしてドライヤーやクルクルドライヤー(ブラシ付ドライヤー)で一生懸命にブローをしていました(枝毛や切れ毛が多い)。また超ロングヘアー、ソバージュ(強めのパーマスタイル)が流行。毛髪のダメージリスクが多くなっていき、枝毛や切れ毛など毛髪の傷み・枝毛対策のニーズが高まりました。

平成4年(1992)横浜市綱島にて創業 美容室オープン
ヘアスタイルは美容技術と薬剤の進歩により、多様な表現が可能になっていきます。軽さが求められ、きっちり作るのではなくラフに乾かし、ワックスで毛束感を作り、動きを出す仕上げが普及しました。
美容室の薬剤やシャンプー・トリートメンも改善され、より毛髪へのダメージが少なくなっていきました。そのため頭皮ケアへのニーズが高まります。
シャンプーの頻度はほぼ毎日に。

2000年代以降 
子顔効果をねらって、カットで頭の丸みを作り毛先を削いだスタイルや、長めのヘアスタイルが多くなりました。40代でもセミロング以上が増えました。
頭皮ケアへの関心が高まり、髪のエイジングが研究され、そのことをコンセプトにした商品が発売されます。また自然派志向の高まりにより、シリコンフリーの商品に注目が集まるようになりました。若い世代ではヘアカラーのニーズが高まり、パーマをかけずにヘアアイロンでストレートやカールスタイルを楽しむ傾向になっています。

画像2

まとめ

近年は頭皮を清潔に保つニーズが高まり、洗髪頻度が上がりました。シャンプーをすると髪がきしむので、それを軽減する役割のリンスが生まれます。
さらにヘアスタイルの多様化も相まり、シリコン(油脂)配合のシャンプー・トリートメントや、洗浄力の弱いアミノ酸シャンプーなど、ただ洗うだけではなく高機能な付加価値が必然となりました。
髪が傷まないことが普通になったら、頭皮ケアのニーズがさらに高まります。天然由来のシャンプー・トリートメントが人気になり、シリコンフリー製品が爆発的にヒットしました。
しかしシリコンフリーの製品は、髪の手触りやおさまりが悪くなる傾向があります。そこでシリコンの代わりとしてメーカーがシャンプー・トリートメントに配合した成分が、コーティング剤のカチオン界面活性剤でした。カチオンは一時的に髪にツヤを与えて扱いやすい質感にしますが、髪と頭皮に負担を与え、ゆっくりとさまざまなトラブルを引き起こします。

ほぼ毎日シャンプーをする、日本独特のヘアケア文化。
昔に比べて、枝毛や切れ毛など髪のダメージはほとんどなくなりました。しかし薄毛、髪のうねり、白髪、つむじの割れなど、頭皮の悩みやトラブルを持つ人はとても多くなった気がします。電車に乗っていてもヘアの分け目が目立ち、頭頂部がベッタリした人を多く見かけます。
原因はカチオン。ヘアケア商品に過度に配合されたコーティング剤が引き起こしています。実はこのことは美容師の手荒れとも深い関係があります。
(追伸として)ヘアケアに関する悩み・ご質問、記事へのご意見など大歓迎です。何でもお寄せください。

-----------------------------------
この記事は 永森博明 が書きました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?