見出し画像

斜め上をいく生活

「アメックス・ゴールドカードを作りませんか?」とセゾンカードから案内が来た。

若い頃はお金がなかったので、将来はアメックスを持てるくらいの金持ちになりたいと夢見ていた。
常にお金は足りなかったが、食べ物が全くないわけではなかったのだから、今客観的に考えれば充分恵まれていたと思う。だが、自分では、地面を這いつくばって、砂を噛むような思いをしながら、貧乏でも何とか生き延びているつもりになっていた。そんな中、アメックスは金持ちの象徴のような、手の届かないものだった。

セゾンは長年使っているし、昨年からの感染症騒ぎでカード決済が増えているので、ここでもう1枚カードを作らせて、もっと使ってもらおうとするのは、正常な営業行為だと思う。

家族に「いつも行くドラッグストアで、アメックス・ゴールドを見せつけてやったらどうだろう?」と言ってみた。「そもそもカードを、どこで使ってるの?」と言うので、使用履歴を確認すると、ショッピングモール、酒類量販店、ディスカウントストア、回転寿司などの名前が出てきた。「うちには必要ないね」ということになった。「それに、そもそもあのドラッグストアでアメックス使えるの?」

かつての夢は一瞬で消えたが、長年の間にカードのステイタスも私の価値観も変化した。金持ちでなくても、食べものがあって、スマホを操ってnoteを書いているのだから、当時の夢の斜め上をいく生活を今、しているのかもしれない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?