地球温暖化実験を解かりやすく図解する
1 空気を温める物質は2つあるため、その昇温メカニズムを解りやすく図解することは、大変難しい事柄でした。
何とか、「二酸化炭素濃度別赤外線反応実験ー地球温暖化実験」の結果および、その二酸化炭素の濃度差による変化を多くの人々にも解りやすく図解できないものかなと、ずっと考えてきましたが、良い方法をなかなか見い出せないでいました。
ところが前回のブログで、空気1立方m中に含まれる二酸化炭素0.8gを基準値にして、同じ重量の物質を一つの「〇」で図解すれば良いことを発見しました。
同じ重さの水蒸気も一つの「〇」表現します。
「〇」の数の差が空気中に含まれる量の差になります。
その場合、水蒸気は同じg数で比較すると、二酸化炭素の数倍の昇温効果力あるため、水蒸気を2.5mmの「〇」で、二酸化炭素を1.5mmの「〇」で表示すれば、ほぼ正確に両物質の昇温効果力を表現できることがわかりました。
そうやって作り上げたのが以下の図解図になります。
こうやって作成してみると、いろいろなことがわかります。
① AとBはほとんど違いはありません。実験用高精度温度計を用いないと、その昇温差を計測することは不可能です。
② CとDは確かに地表1m以内の空気はより昇温します。しかし中空(1.5m~)では地表付近で早々に赤外線のエネルギーが吸収されてしまうために、逆に本来昇温すべき温度より低下するという現象が起きてしまいます。
③ Bはともかくも、自然界がC、Dの状態になることは有り得ません。
水蒸気であれば、湿度差50%など日常的に起きています。
しかし二酸化炭素の大気中の含有率は、年単位でゆっくりとしか変動しません。
2 物理に詳しい方からこの図はおかしいとお叱りを受けそうです。
それは分子の原子量を考えた場合です。
原子量で考えると
水素1、炭素12、窒素14、酸素16
であるので、
水蒸気分子の原子量は18、二酸化炭素分子の原子量は44になるので、二酸化炭素分子の方が、はるかに質量があるからです。
しかしそれでは赤外線の照射を受けた時の昇温力が全く反映されません。
この図はあくまで一つの「〇」は空気1立方m中のg数が0.8g(CO2 400ppmの場合の1立方m中の量)であることの表示です。
そのうえで、そのg数当たりの赤外線による昇温力に応じて「〇」の大きさを調整しています。
このことをご理解のうえ、図解図を見ていただきたいと思います。
なお、大気の主成分である
窒素分子は原子量 28
酸素分子は原子量 32
になりますが、窒素分子も酸素分子も赤外線に対しては透明です。
つまり、赤外線の照射を受けても全く反応しません。
さらに窒素分子・酸素分子は太陽光に対しても透明です。
ではどうして晴れ上がると暖かくなるのでしょう。
それは地表面が太陽光の照射を受けて昇温すると、その地表面から大量の赤外線が発生するからです。
その赤外線は空気中に含まれる水蒸気や二酸化炭素によって、大きくそのエネルギーを吸収されてしまいます。
それは、水蒸気分子や二酸化炭素分子が3個の原子で成り立っているからです。
その形は「やじろべえ」みたいな形をしていて、その「やじろべえ」の腕の部分が赤外線を受光すると振動を始めます。
すなわち赤外線のエネルギーを吸収して昇温します。
その水蒸気分子と二酸化炭素分子のまわりには、大気の主成分である酸素分子と窒素分子が大量に存在し、猛烈な頻度で衝突を繰り返しています。
こうして水蒸気と二酸化炭素が吸収した赤外線のエネルギーは窒素分子や酸素分子に受け渡され、空気全体が温まります。
温まった空気は対流によって上空に運ばれ、大気全体が温まります。
本当に自然界は不思議に満ちていますね。
3 二酸化炭素濃度別赤外線反応実験(地球温暖化実験)というものは、実は、水蒸気・二酸化炭素混合含有気体の赤外線による反応実験です。
地球温暖化実験においては、できるだけ水蒸気による影響を取り除くために、実験用ボックスの湿度は30%以下になるよう除湿剤で調整しています。
しかしいくら頑張って除湿しても、湿度15%位が限界です。
これ以上湿度を下げるためには、実験用ボックスを完全密閉にしたうえで、強力な化学物質を用いるか、強力な機械力を用いるかしか方法はありません。
そういった仮想空間的なものを構築するのは、コストもかかるし、自然界の状態からかえってかけ離れてしまうという結果をもたらします。
そのため、この「地球温暖化実験」では
実験用ボックス内の湿度が30%以下で、両ボックスの湿度差があまりなければOKということで行ってきました。
したがって、この「地球温暖化実験」を図解するために、気温18℃、湿度30%という基本条件を設定しました。
気温18℃、湿度30%のときの水蒸気量をまず求めます。
気温18℃の飽和水蒸気量は15.4gです。
これに湿度30%ですから、0.3をかけると4.62gです。
図解図の二酸化炭素濃度との対比は以下のようになります。
水蒸気 二酸化炭素
気温・湿度 量 〇数 濃度 量 〇数
18℃・30% 4.62g 6 400ppm 0.8g 1
〃 〃 〃 800ppm 1.6g 2
〃 〃 〃 4,000ppm 8.0g 10
〃 〃 〃 8,000ppm16.0g 20
これで空気中に含まれる両物質の量をほぼ正確に表現することができます。
4 あとは両物質の昇温効果力を図解図の中にどう反映するかです。
同じ重量であるならば、水蒸気が二酸化炭素の数倍の昇温効果力をもっていることはすでにわかっています。
具体的な数値を求めるために、放射スペクトル表に15℃位の実効範囲を設定して、その実効面積からその比率を求めたことがあります。
その結果は、水蒸気の昇温効果力はおなじg数で比較すると約3.3倍であるという数値を得ました。
また「地球温暖化実験装置」を使って「水蒸気実験」を行ったこともあります。
この時の室温は17℃です。
一方の実験用ボックスを湿度20%にして、もう一方の実験用ボックスを小型加湿器を使って湿度70%以上にして、低温ヒーターで加温してその昇温差を見るというものですが、この時は水蒸気2.6gで二酸化炭素14gと同等の昇温効果力を計測しました。
その差は5.38倍です。
いろいろなデータを勘案してもはっきりとした数値は求めにくく、「数倍程度」という表現にとどめておくしかなさそうです。
そのため図解図においても
「〇」の直径 面積的には 体積的には
水蒸気 2.5mm 6.25mm² 15.625mm³
二酸化炭素 1.5mm 2.25mm² 3,75mm³
という大きさで表現すれば、ほぼその昇温効果力に合った図解図を作成できそうです。
そういうことで作り上げたのが今回の図解図ということになります。
中央にマッターホルンのように描かれているのが、高度別赤外線吸収グラフで、二酸化炭素の含有量が変化するにしたがって、どのように赤外線の吸収量が地表高度によって変化していくのかを示したものです。
もちろんそのグラフには
「二酸化炭素の濃度が高くなると、高さ1m以内はより昇温するが、中空(1.5m~)では地表付近で早々に赤外線のエネルギーが吸収されるために、逆に本来上がるべき温度よりほんの少しではあるが低下してしまう。」
という実証実験から得られた知見も織り込んでいます。
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