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「西加奈子」一編書くたびに、生まれ変わったような気持ちになりました。皆さんに何をお渡し出来るのかは分かりませんが、この本は、最先端の私の生そのものです。

 西加奈子 著者の本の装画は自身が描かれブックデザインは鈴木成一デザイン室。

クローズアップ現代インタビューより

装画の説明です。彼女はアーティストだとしみじみ考える。

いろんな皮膚の色がある体の木に、おっぱいの実がたくさんなる、みたいな。実際の絵ではおっぱいは1個ずつ別々に描いたので、取ってもええし、着けてもええし、みたいな。いろんな形や色が自由にあって、「いろんなおっぱいがあるよね」という感じの、コンセプトというほどじゃないんですけど、そういう感じで描きました。』西加奈子said

 コロナ禍以前の2019年より、自身の乳がん発覚から治療を行った22年にかけて発表された7編と書き下ろし1編を含む、全8編を収録。 

概要

・「わたしに会いたい」――ある日、ドッペルゲンガーの「わたし」がわたしに会いに来る。
・「あなたの中から」――女であることにこだわる「あなた」に、私が語りかける。
・「VIO」――年齢を重ねることを恐れる24歳の私は、陰毛脱毛を決意する。
・「あらわ」――グラビアアイドルの露(あらわ)は、乳がんのためGカップの乳房を全摘出する。
・「掌」――深夜のビル清掃のアルバイトをするアズサが手に入れた不思議な能力とは。
・「Crazy In Love」――乳がんの摘出手術を受けることになった一戸ふみえと看護師との束の間のやり取り。
・「ママと戦う」――フェミニズムに目覚めたママと一人娘のモモは、戦うことを誓う。

・「チェンジ」(書き下ろし)――デリヘルで働く私は、客から「チェンジ。」を告げられる。

 カナダで癌が発覚しカナダで治療をする。2023/04に刊行したノンフィクション「くもをさがす」2019〜2022年に発表した7編と書き下ろし「チェンジ」
1編。

 外国(カナダ)の癌患者への医師、介護士等の対応に関心を持ちました。
ノンフィクションと加えています。日本の医療とは違って患者の意志が人として尊重されています。「くもをさがす」

 西加奈子氏は氷河期世代(ロストジェネレーション)生まれ。
しかし、西加奈子氏はテヘランで生まれてカイロで育つ。学生時代は関西。

特殊な環境で幼少期を過ごした。ダンボールにクレヨンで描く絵は日本の田舎の自然界の色とは異なる。

ペルシャ語の中で生まれ、アラビア語で育って、関西弁で考え、カナダでは英語をツールで使って子育てや治療をしていた。

耳や目、感性は幼い時代に環境で育つ。多国籍感覚は成長しても拭えない。(経験者)

 I am ~ (私は) 「私は」は英語で I am. 主語を意識するのは当然です。

『アイデンティティ』自分が自分であること、さらにはそうした自分が、他者や社会から認められているという感覚。


 中黄色のカバーの本「くもをさがす」を手にしたのは装丁に惹かれたからです。日本人が本に使う色ではない!と直感です。文字(ロゴ)ももちろん本人が書いた。

 「わたしに会いたい」最後の7編目"書き下ろし"に彼女の本質を感じる。

ちなみ、"デリヘリ"とは始めて知ったワードです。googleさんに尋ねながら読み進める機会が増えた… 日本語も急速に壊れていく。

しかしながら、著者のその複眼のような優しさは最大限に溢れて…いる。

西加奈子さん自筆




 そう言えば、芥川賞「パンチバック」を読むために何度もgoogleさんに尋ねた。ネットの世界と施設の中だけで書かれた作品で、短縮語が連なる。

美しい日本語(文字)を並べる「森茉莉」が好きな作家と知って更に驚いた。

何度もgoogleさんに尋ねて読後、再読しても本を横にしたり元に戻したり…疲れた。

造語、俗語、短縮語は世界的なものらしい…

 養老孟司氏のつまらない本だった!に花鳥風月が無いなどに"頷く人"はすでにかなりの少数派

言わんや「情緒」が肝要といわれる、岡潔(1987没 数学者)の名言など心にとどくはずがない。

『現代は他人の短所はわかっても長所はなかなかわからない。そんな風潮が支配している時代なのだから、学問の良さ、芸術の良さもなかなかわからない。』

リアル癌から真の"わたし"を探した西加奈子のこれからに期待します。


#わたしに会いたい
#読後感

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