読後感想「光のところにいてね」 羽/雨/光…
・写真の題: セットの大波
・月日: 1857年
・アーティスト:
ギュスターヴ・ル・グレイ
・フランス:
1820–1884(明治17)年
和暦江戸時代〜明治
ヘッダーの写真(作家)がイメージに繋がった作品…だそうです。
一穂 ミチ 著
『ル・グレイがこの作品を撮影した時代は、風景と空を一枚の写真に収める際、両方の対象に同時に適切な露出を得ることが困難でした。
そのため、当時の写真家の多くは彼の作品に見られる海景色の日光や雲、水が描き出す劇的な効果に驚嘆しました。
ル・グレイは、海と空を別々に撮ったふたつのネガを、1枚の印画紙に焼き付けることによってこの問題を克服しました。
ネガはそれぞれ別の日や異なる時や場所で撮られることもありました。
ル・グレイの海景は、技術的な成果だけでなく、それまでの作例にはない詩的な効果により大反響を巻き起こしました。』
「校倉果遠」が高校入学時、図書館に掛けていた海の写真が心に留まる。
日本の最南端の海辺の町が舞台になっています。(和歌山県 串本)
2022/11/10 初版一刷
462頁 厚さ 2.7㎝
第一章 羽のところ
第二章 雨のところ
第三章 光のところ
1987年生まれの作家が通り過ぎてしまった小学校2年(7〜8歳)、高校1年(15〜16歳)、29歳。
少女の頃の微妙、繊細な心の動きを忘れる事なく不思議なほどリアルに描き留めている。
すっかり忘れてしまっていた"感情"とまでも…ない、幼い日の心の表現に惹かれて厚い本を久しぶりに一気に読んでしまった。
小学校2年生は、家族に守られて、高校生一年生はまだ夢や希望と現実感が一致せず悩む材料が溢れて、29歳にはほぼ自分の選択した人生を歩いていた。
考えるとそれで与えられた三分の一は終わっていた。
「上楽 藍」さんの本文を邪魔しない小さな小さなイラストに誘われ、二人の心の対話が交代に綴られている。
「校倉果遠」「小瀧結珠」の個性的な二人の脇に影のように付き添いスルーしてしまう男…
パッヘルベルのカノンのピアノの音がBGMに流れる…
読後、落ち着いて素材を吟味すると作家の意図が知れてきました。
マツバラリエ(表紙のオブジェ)は独特な質感(コルク)。
works
『「再生」「視点を変えること」「物語」をテーマに、
使用済みコルクなどの廃材を使った作品を制作しています。』
風や雨のが聞こえる自然の風景。特別嬉しいでもない、寂しくもないフラットな精神状態。そして、フツーの家族がいる。無色透明。コレが日常だと好い…つくづく思う。
生きている時代背景はどう足掻いても変えられない。血縁も拭いきれない。
ピッカピカでもヨレヨレでもどこかにホツレはあっても美化できる事もある。
入り口も一緒で、出口も同じこと。どちらも選べない。
一穂氏に望むなら、後の3分の2の続々をいつの日かお願いしてみたい。
久しぶりにピュアな気持ちを思い出す時間が嬉しかった。
最初は,ピカピカの少年・少女だったね。
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