THE FIRST SLAM DUNK感想
この映画14回も観たからにはそろそろ何かしら感想を残そうと思った。なんで10回でも15回でもなく14回観た時点で書くんかというと、言うまでもなく三井大好きだから。8歳から三井一筋なのじゃ
スラムダンクは人生で初めてしっかり読んだ漫画であると同時に、一番読み返した一番好きな漫画。
最初は小2のとき。バスケのなんたらとかあんま理解できないところも多くて、ちゃんと理解できたのって序盤の喧嘩してるシーンらへんだった。だから当時はその辺ばっか読み返してたし桜木軍団が参上して三井軍団やっつけるところがここ一番の盛り上がりどころだった。でも私は三井の女ですから。いずれはおそろいの差し歯になる予定です。
映画の感想ね。なにから話そうーって感じなわけよ。14回も観てれば頭の中整理されてんだろとか思うか。整理されてるわけがないんよ。むしろどんどん混濁している。
このまま思ったことを書き連ねてると本当に秩序が無くなってしまうから、適当に項目を設けよう、そうしよう。項目から話逸れることは大いにありうるが。あと原作の内容も沢山盛り込みながら書く。
作品全体の構成とかその辺
スラダンの主人公って桜木花道なんだけど、この映画では宮城リョータが主人公だった(リョータについては別項目でちゃんと語る)。で、映画のストーリーは編年体的なひとつの時間軸に乗っかってるのでなく、現在の試合と過去の回想を行ったりきたりするもの。いいと思う。
なんかさ、山王戦だけを漫画通りに素直にやれとか言ってる人たちいるけど、それじゃ映画としてなんも成立しないって分からんかね。映画として作る以上、一応それ一本での視聴に耐えうるものにしないとならん。それまでの原作を31巻読んでないとなーんも分かりませんっていうんじゃ映画としては失敗、駄作。だからこそ原作勢すら知らないリョータの過去にフォーカスして、他のメンバーのことも分かるようなエピソードをちょっと入れたりしつつ山王戦と折り合いつけたんだよ。そうしなかったら初見の人はまるっきり観れないし新規ファン取り込むなんて不可能だし、そもそもこんな満を持してイノタケ監督で映画化するのに漫画をまんま映像化したんじゃつまらなすぎる。
いやそんなの関係ねえから原作ファンのためだけに山王戦だけを映画化しろやってまだほざく輩は、映画=商業、つまりカネであるということをなんも分かってない。そしてそういう輩に限って公式に金を落とさないということを私は知っている!
あとアニメ派はこの映画にすごく否定的な人が多いね。声優が違うだの主題歌が違うだので。確かにアニメの声優は良かったし主題歌もそれだけがひとり歩きしてるくらい名曲揃い。私も声優変更と主題歌変更が決まったときは少なからずがっかりした。だけど!だけどだよ、スラムダンクのアニメは、全然良いアニメとは言えない、むしろアニメとしては底辺のクオリティ。それをね、映画観たけどやっぱアニメには勝てんだの、アニメが最高だから映画は観ないだのほざいてる輩は、確実に思い出補正で脳みそやられちまってるんよ。冷静になれ。アニメスラムダンクのコートの全長は2キロメートル近くあったことを思い出せ!シュートモーションの紙芝居率の高さを思い出せ!試合中の背景が宇宙だったことを思い出せ!そんなアニメのどこが良いと?バスケの疾走感をなに一つ描けていないうえにテンポも悪い。個々の声優の良さと主題歌だけで持ってたようなアニメだぞ。まあその声優も私としてはアヤちゃんと仙道に関しては声合ってないと思っているわけだが。だからスラダンのアニメが好きって言ってる人はスラダンの「バスケットボール」が好きなわけではないんだなと私は認定している。そしてこの映画は紛れもなくスラダンの「バスケットボール」を描いた作品なのでそりゃあアニメ勢とは相容れんわ。スラムダンクの面白さの核って合間のギャグシーンでもキャラそれぞれの感動エピソードでもなく、バスケットボールというスポーツの面白さ・熱さそのものを描いてるところにあると思ってるから、やっぱり私はアニメしか認めん勢とは絶対に仲良くなれませんはい。
ストーリーの感想に戻る。そんなわけで私は誰がなんと言おうと山王戦とリョータの過去回想のコンボで良かったと思ってる。良かったところを挙げればキリがないから、先に悪かった・気になったところを挙げる。
つい今しがたリョータの回想良かったとか言いつつなんだって感じだけど、回想の配分はもう少し考えても良かったかなと思うんだ。試合の疾走感とか勢いが凄い分、その合間に回想が断続的に入ってくることでなんかブレーキがかかっちゃうみたいな。ぐっ…て感じ。何度も観てると、やっぱここしか無いなってとこにちゃんと回想入れてるんだけど、初見のときは試合がノリに乗ってるときほどその勢いを一旦抑えられるのがもどかしく感じた。そんな感じで入る回想が、結構試合の終盤まで続くから、まあカタルシスと思えばいいんだけど最初はちょっとやだった。試合パートだけ繋げてまとめて観たいとか思ったりしてた。
それから、ソータが海難事故で死ぬんだが、そのときリョータとソータ軽く喧嘩(喧嘩というよりリョータが一方的に怒ってるだけだけど)してたから、船に乗るソータにリョータが「もう帰ってくるなー!」って言っちゃうわけ。それがさあ、いや死亡フラグが古(いにしえ)すぎるじゃろて!コナンの、「もういい!オレは先に寝る!」くらいあからさますぎてちょっと笑っちゃった。それだけ。
あともう一個寒いシーンある。赤木が河田に突っ込んでいって倒れるんだけど、その時に過去の嫌な先輩が悪魔に扮して現れるところ。赤木の精神世界みたいな感じで。その時に先輩が歌ってる歌なのかなんか知らんがそれがクソ寒い。初見は軽く帰りたくなった。原作では、突如コートに現れた魚住が大根の桂剥きをする。私そのシーンまじで大好き。そこの台詞も良いんだよね〜「お前は鰈だ。泥にまみれろよ」って…ビック・ジュンにしか言えない台詞よ。説得力が違うもの。
で、映画に関しては魚住のシーンがカットされたことが不満なんじゃない。代替案の先輩悪魔の演出が寒すぎることが不満なのだ!もうあのシーンだけは無視してます、はい。
最後。リョータがアメリカに居て、は?ってなった。大して沢北と因縁無いんよリョータは。加えて、リョータには悪いがお前は、お前だけはアメリカじゃない。しっかり肌も焼いてアメリカナイズされたビジュになってるところ悪いが、お前はBリーグ選手でなくちゃならん!お前だけは!!
以上悪いところ・気になったところでした。
良いところは別に項目作って書き連ねる。
宮城リョータ
宮城リョータという男。私がこの映画を観るまで宮城リョータについて知っていることは名前だけだった。原作何度も読んだって、宮城リョータは、足が速いPGでなぜかバスケが上手い、アヤちゃん大好きな高校二年生である以上のことはなんにも分からなかった。なんでバスケやってるのかとか、どこの中学から来たのかとか、なんで湘北なのかとかそういうのは全然分からない。流川でさえ中学の話はほんの少しだけど出てくるし、桜木も中学の話が少しあって謎の親父が一瞬見切れたりする。リョータのことだけが、不自然なくらいなんにも語られなかった。さっきリョータについて知ってるのは名前くらいだけだと言ったけど、名前さえ、「リョータ」というのが本名なのか、または別に漢字があるけど公開されてないだけなのか微妙だったくらい。だから今回の映画でリョータを主人公に据えることは必然だったと思う。山王戦を初見の人でも観られる一本の映画に昇華させるためには突破口はリョータしかない。このあと詳しく説明するけど流川や桜木にフォーカスしてもそれは作品として良い方向には働かないから。だからこれまで何も語られることのなかったリョータに焦点をあててこそこの映画は活きる。
個人的に、流川と桜木については過去を描く必要は全くないと思っている。むしろ過去なんて描かない方がいいんだこの二人に関しては。流川はきっと生まれたときからずっと流川楓で、バスケが好きで寝るのが好きで、ずーっとバスケのことだけを考えながらバスケだけに打ち込んできたはずだから。ここまで突き抜けてるキャラなら語るべき過去なんて必要ないし、変に後付けで過去の話とか作られても逆に興醒めだって。桜木は流川とは辿ってきた過去は全く違うだろうけど、それでもやっぱり桜木も過去なんて描かない方がいいんだ。親父の話だって、あれ結局なんだったんだろう?くらいで留めておくのがちょうどいいんだ。なんてったって桜木花道は「オレは今なんだよ」の男ですから。天才ですから。過去を振り返る仕事は三井と小暮で受け持つから、桜木花道はただこの一瞬、この今に煌めく男であれ!そこがキミの一番の魅力なんだから!
ということで桜木と流川に関してはこれから先も過去エピなんて求めてないから絶対に描かないでほしいわね。私はこの二人の未来なら見たいです。
で、宮城リョータね。この映画で初めてリョータが沖縄出身で兄弟がいてお父さんは亡くなっててお母さんはいて…ってことを知ったわけよ。お前うちなーんちゅだったんか!ってなったよさすがに。いやでもだから宮城という名字にしてたんだ〜って思ったし言われてみれば読谷以北に住んでそうな感じするなって思ったよ。イノタケ曰くリョータのバックグラウンドはずっと自分のなかにはあったけど、描くタイミングが無くて描けずにいたのだと。そりゃそうだと思う。リョータって、桜木や流川みたいに突き抜けちゃってる感じの人間でもない。リョータみたいな絶妙な塩梅のキャラクターって、そいつのバックグラウンドがある程度頭にないと描けないはず。桜木流川みたいなある意味超人的なキャラはバックストーリー特に固めなくても描けちゃったりする。けどリョータはそうじゃない。だからこそ原作でリョータに関するエピソードが殆ど皆無だったことは不自然だったんだ。
リョータの過去すんげえ重…ってなって。いやでも待てよ、一番しんどいのこれお母さんじゃんねってなって。リョータは死んだソータとちょっとヤな別れ方をしたもんだから、余計引き摺ってるわけね。それでなぜかお母さんは自分でなくソータの方がよっぽど好きなんだと思い込んでいる。実際は全然そんなことないわけよ。お母さんは確かにソータが亡くなってすごく悲しいというのはあるけど、それはリョータとは切り離された感情。リョータは生きててソータは死んでるからどうこうとかそういうのでは全くないわけ。ビデオ観て泣いてるのだって、誕生日だから観てるだけ。ソータの部屋片付けたくなるのは、ソータが死んだことがただ辛いから。リョータがバスケ続けてるのヤダなんてこれっぽっちも思ってないし、思春期の男子高校生と母親の普段の距離感なんて実際はあんなもん。マンガやドラマで描かれる家庭ってのが異常なくらい円満で仲睦まじいだけ。リョータの誕生日の席で母親の態度が冷たすぎるとか言ってる人いたけど、普通です、まじで。会話の感じも全然普通の親子。妹のアンナはすっげえ伸び伸びやってるとこみても、全然普通の家庭だと思う。お母さんの方はリョータになにか負の感情を抱いてるとか全くないんだ。むしろリョータが怪我したり事故ったときもすごく心配してるし。心配だから怒りもするわけで。リョータが勝手ににいろいろ考えて自分が死ぬべきだったとかアホな勘違いしてるだけ。だから手紙に母上様なんて書いちゃってお母さん軽く困惑してたじゃん。まあそんなリョータが好きだよ、私は。
でもリョータがお母さんに間違った認識を持つのは無理もない。これは自分が子供だった頃を思い出すとよく分かる。子どもってもの凄く世界が狭くて視野も狭い。家庭と学校が全てみたいな感じ。リョータにとっては、家庭とバスケが全て。自分よりバスケが上手いソーちゃんは自分より凄くて、お母さんはバスケが上手いソーちゃんの方が自分よりもきっと好きだ。そんな短絡的な考えになってしまうものなんだ子どもっていうのは。みんな大人になると忘れがちだけど、子どもの価値判断なんてそんなもん。リョータはずっとそう思い込んで成長してきたし、映画の最後で母子がいい感じにわだかまり解けた風に見えてもリョータの思い込みがなくなったわけではない。でもリョータはそれでいいと思う。ソーちゃんのリストバンド付けて山王戦の舞台に立って、明後日の方向の思い込みを抱えながらもお母さんに手紙で自分の気持ちを伝えて。なんかそうやってちょっとずつ柔らかくなっていけばいいのかなって思うし、もし仮に一生リョータがお母さんの気持ちを誤解したままでも、家族として保っているならそれが宮城家のかたちということでいいんじゃないすかね。
まあリョータにひとこと言いたいのはバイクのガムテぴろぴろしてるやつちゃんと貼れ!ということ。
楽曲と音
この映画、曲がとてもイイ…!曲も効果音の入れ方もなにもかも!この映画を映画館で観るべき理由の一つです。大音量で観るべし(ちなみにいろんな音響の映画館で観比べた結果Dolby cinemaが一番良かった)。
まず主題歌二曲。どちらとも骨太ロックで最高なんだよ。下手にしっとりさせないしお涙頂戴ソングでもなく、激アツなゴリゴリロック!これぞスポーツ!って感じの曲で選曲センスが光っていた。エンディングの「第ゼロ感」は劇中でも形態を変えて何度か流れるんだけど、使いまわしてるという印象は全くない。曲が激アツすぎて純粋に盛り上がるだけ!何かと三井がシュート決めるタイミングで流れることが多いのも好きポイント。で、一番カタルシス感じる最後の最後、リョータの「ドリブルこそチビの生きる道なんだよ!」からのプレス突破で最大音量でかかるのが非常に良い。そこだけ歌詞入れてくるのも分かってるよね。ほかに個人的なお気に入りポイントは、「本気だ!あいつら残り1分で5点を本気で追いつく気だ!」と叫ぶモブの声とともにこの曲入ってくるところ。そこ映像も良くて、カメラが動いてコート全体をぐーっと映す感じ。ノリちゃんの振ってる旗がまた良い味出してるのよ。からの三井の4点プレイ炸裂という鬼アツ展開。
劇中何度も流れる「第ゼロ感」とは対照的に、The Birthdayの曲はオープニングでの一回しか流れないんだけど、強烈な存在感がある。それはやっぱりあのカッコよすぎるオープニング映像と組み合わさって曲の破壊力が増したからだろう。ロッカールーム、リョータの手、赤いリストバンド、「行ってくる」の一言、ロッカーの閉まる音、真っ白い画面、静寂、鉛筆の音、目の前で完成していくリョータの絵、からのこの曲。この流れ天才すぎる。
効果音もさ、とても良いのよ。ドリブルの音、バッシュの摩擦音、リングの音、体育館特有の音の反響具合。全部しっかり録ってあることが分かる。お気に入りの効果音その一は、グレ期三井が一人道を歩いていて安西先生を見かける場面。そのとき三井が履いてる靴がティンバーランドっぽいゴツめの靴なんだけど、ゴツい靴履いてる!って分かるゴッゴッ…みたいな足音がするんだよ、ちゃんと。こういう細やかさ良いなって思う。
お気に入り効果音そのニは、リョータが深津からインテンション貰ってフリースロー打つとき。二本目のフリースローを放つ直前に一瞬沖縄のさとうきび畑っぽいサァァァみたいな風の音が入ってくる。もちろんコート上にそんな音が存在するはずないからリョータの頭のなかに流れてる音なんだけど、その音の入れ方がものすごく自然。自然すぎて私の幻聴かと思うくらい。でもリョータにとってはあのフリースローのとき確かに沖縄の風が吹いたんよ。幻聴でもなんでもなく。だからその瞬間だけは私も宮城リョータと意識が同化してたってわけよ。
最後三つ目。神奈川に越してきたばかりの中1リョータが団地の自室で不貞腐れてるシーン。窓を隔てた外の遠くの方で救急車のサイレンが鳴ってるんですよ。遊んでる子どもの声に混じって。人生で何回も聴いたようなごく当たり前の効果音すぎて、映画7回目くらいでやっとこの効果音の存在を認知したというか意識した。あっまりにも自然なものだから、脳が勝手に排除しちゃってたみたい。もう気づいたときにはびっくりしたよ。ほんと細かいところまで手を加えてあってすごく感心した。
この映画、音に対するこだわりが並々ならないから絶対に映画館で観た方がいい。これだけは何度でも言うぞ。
映画の良いところ・好きなところ
メインディッシュといっても過言ではない項目!!ここで燃え尽きるぞ…。とりあえず箇条書き的にどんどん良いとこ好きなとこ書いていく。
・オープニング。まずなんと言ってもこれでしょう。ほんとこの映画、公開前は全く期待してなかったし、プロモーションのやり方が悪すぎて前評判最悪だったんだけど、そんなんこのオープニングで全部吹っ飛んだ。イノタケ作画のリアルタイムデッサンでシャシャシャシャッてリョータが描かれてからのThe Birthdayのベース。ここだけで私はもう満足したよ初見時。あ、もう元取れたわと思ったし、まじでオラわくわくすっぞになった。これを観るためだけに金払ってもいい。それくらいこのオープニングは最高です。一人一人さあ、骨格から筋肉のつき方までちゃんと違うのよ。私も絵を描くのだが、絵を描き始めたばかりの頃はスラムダンクの模写しまくってた。イノタケの絵が大好きだし永遠の憧れなんですわ。そんなイノタケの絵をね、まさか令和の映画館で視界いっぱいに見られる日が来るなんて!!もう画力が高い高い。惚れ惚れした本当に。一人一人歩き方まで違うんだ。元ヤンの三井が一番スッとしてておしとやかな歩き方なの面白すぎる。ゴリでさえチンピラみたいな歩き方してるのに。
そこから階段から人が降りてくるカットに移る。山王の文字が目に入った瞬間ガッツポーズしたよ、試合終了間際勝利を確信し小さくガッツポーズを決めた堂本監督ばりに。前情報一切無かったから、山王戦かどうかもその瞬間までは分からなかった。だから大声でキターーー!って叫んだ、心で。イノタケの絵で、動いてる山王が見れる…15年待った…15年…(福ちゃんふるふる…)!感慨深かったわ。
それとね、イノタケは坊主の可能性を限りなく押し広げてくれた功労者だと思っている。だって坊主だよ?普通の漫画ならそんなんモブだって。それをみんな髪型坊主なのに顔面の描き分けだけでこんなにキャラが立ってかっこよくなるの!?って。こんなに王者の風格出るの!?って。子どもながらに凄いと思ってた。映画館で観る沢北深津河田がかっこよすぎて。「ノーマークだったはずだよな?深津なんて」と心の一ノ倉が呟いた。私は深津の夢女子の気持ちが分かってしまったよ…。
そこからなにが良いって、余計な説明無しにヌルッと試合に入っていくんだよ。普通だったら試合前にさ、とうとうここまで来たかとかキャラ同士のやり取りとかごちゃごちゃ入りそうなところを、スラムダンクは当然のように流れるように試合が始まる!この展開は痒いところに手が届いた感じで凄く良かった。大好き。お!これは誤魔化しのないバスケを魅せる気だな!ってなんとなく分かってテンション上がった。
・脱線するけど、スラムダンクの原作も映画も、うだうだ下手な説明を入れないところが良い。いちいち人の心情に突っ込みすぎないし行動の意味とか表情の意味とかほとんど説明しない。淡白で、距離感がちょうど良い。フィクションは往々にして細部までを説明しすぎてしまうきらいがあって、作品が野暮になったり却ってつまらなくなってしまったりすることが多い。スラムダンクはそのバランス感覚がとても良い。キャラクターの心情とか過去の描写は最低限だけど、あとは読者のご想像にお任せしますっていう無責任さは無い。映画もそこが良かった。リョータの過去、特にお母さんとの関係性。お母さんが何を考えてるか全く描かれないけれど少しの表情とか声色で表現できてるし、リョータとの関係のズレみたいなのも何の説明もなくたってよく分かる。ひとつの例としてお母さんのこと持ち出したけど、ほかにも沢山あるんだよなあ。まあリョータのことは前の項目で掘り下げたからこの辺にしておく。
映画では、試合の疾走感を妨げないように省ける心情描写は省いてたし、ギャグパートも大幅に削られてた。良い判断だ(←沢北ですか?)。例えばメガネ君の「二年間も待たせやがって…」って名シーンがあるけど、表情を映すのみに留められてた。台詞がなくても成立するし、原作勢は台詞脳内再生されるし、意外とどっちでもいけるんじゃんってその時思った。無くても成立するもの・無いと成立しないもの・あると初見の人には意味が分からなくなるもの・新たに加えると分かりやすくなるものが丁寧に取捨選択されていて、すごく大変な作業だったろうけどちゃんと成されていて、相当な原作愛がないとできない作業だよこんなん。原作の魅力である「過剰な説明の無さ」がちゃんと映画に引き継がれててとても嬉しかった。
・アニメーション、モーションの素晴らしさ。
この映画の最大の特徴とも言える3Dモーション。観る前の印象はすごく否定的だったし短いプロモーション映像でもその良さは伝わってこなかった。公開初日におそるおそる観にいったら3D特有の変なヌルヌル感は全く気にならないばかりかむしろモーションめちゃくちゃ良くね?ってなってマジで手のひらクルクルでしたわ。あ、イノタケが映像化したかったバスケってこれだったのね!っていうのが明白に提示されてて、そりゃ以前のアニメのクオリティには渋い反応するわなって思ったよ。ちゃんとバスケしてる、ちゃんと試合してるとしか言いようのない動きの繊細さ。キャラクターの重量感までモーションから伝わってくる。なんだろう、物理の法則を無視してない感じ。しかもみんな一辺倒の動き方じゃなくて各々のプレイスタイルとか身体能力に合わせてモーションを細かく調整してるのが分かるんだよ。
例えばリョータだったら重心が低くて頭の位置がぶれなくてすばしこい動き。その動きに合わせてなびくユニフォーム。沢北もリョータと同じくらい速いし頭の位置のブレなさも凄いんだけど、リョータより派手さのある動きだったり。同じようなドリブルのプレイでも人によって全然違う。いや実際のバスケってそうであるはずなんだけど、その微妙なニュアンスをアニメーションで表現できちゃうんだって凄さしかない。コートが2キロメートルも無いし、ちゃんとコートの長さの範囲内でキャラ同士会話してるし転ぶ時はしっかり足がもつれてるし。ほんとに映画全部を通して全てのモーションが素晴らしいんだけど、いくつかお気に入りポイントを挙げる。
一つ目、角度がないゴリ。河田とのマッチアップで、三井からパスを貰う直前河田の足の外側に自分の足を入れ込むんよ。そこにリョータと三井が即座に気づいて、三井が「上手い…!」って思ってすぐゴリにパスを入れる。そこで瞬時に判断できる三井のバスケIQの高さと周りをよく見てるリョータの視野の広さが同時に味わえていいよね。で、パス貰ったゴリがピボットしてシュートモーションに入るんだけど、ゴールの真下に入り込みすぎて角度がなくなる。シュートが打てないわけだ。そこで仕方なくボードに当てるだけのゴリの動きがほんとに良いんだよね。ついでにゴリの動きと河田の動きの差異にも触れたい、これもお気に入りポイントだから。ゴリの動きってすごく泥臭くて、なんかガッチリしてるんだよね。努力の跡がそのままプレイに出てるような。パスもらって次はこう!っていう自分で練習した型みたいなのがガッチリ固まってる感じ。で、あんまり身体は柔らかい方じゃないんだろうなっていうのが伝わる動きなんだよ。対して河田は、もともと小柄で全部のポジション経験したっていうのもあって、ゴリと似たような体格だけど動きの質は全然違う。しなやかで小回りが効いてて、ドリブルもできるし外のシュートもある。あんまりプレイの型みたいなのがガッチリあるわけじゃないんだ。同じくらいの体格でセンターだけど、動きが全然違うってことを言葉での説明無しにアニメーションの表現だけで魅せてて痺れた。そこちゃんと差別化してくれてありがとうって思った。
二つ目、桜木の走り方。試合後半湘北の速攻の場面。桜木だけが先に走っててパスもらってからのレイアップ外す流れがあって(その後に突っ込んでくる流川と桜木がぶつかるモーションも慣性の法則感じられて良い)、そこのパス貰うまでの走り方がまじ桜木花道って感じで良いんだよ。ガニ股で体力の使い方の効率悪そうな走り方でさ。でも桜木の体力は底無しだからそんな走り方でもへっちゃらだしちゃんと速いし。野生みの溢れる走り方っていうのかな、走り方だけじゃなく桜木の動きは全体的にそんな感じだった。桜木の一番の見せどころでもあるジャンプ力も、バネの強さを感じる飛び方なんだよ。原作では桜木が飛ぶとき「びょんっ」て効果音が入るんだけど、映画でも「びょんっ」て聞こえるような気がするくらい。桜木は耐空時間の長さも凄いんだけど、河田が「あれ、まだいる…」って驚くシーンでも桜木は河田よりちょっと早く飛び始めてる。それなのに河田が飛んでる間もまだ桜木は飛んでる。さりげない場面だけどその辺りもちゃんと映像で再現してたのはまじで評価高い。
その三、バテ三井。三井寿のバテ具合の表現が完璧すぎる。初手は一ノ倉のスッポンディフェンスがボディブローのように効いた三井寿。身体が重そうな感じ分かる〜私も体力無いからすぐそうなるよ分かる〜ってなった。だらんだらんして身体の芯がへろへろになってる感じ。ウンウン。それでも三井なんてHP残り1になってからが本番みたいなゾンビですから、まあしっかりシュート決めるわけよ。でもバテてることには変わりないからシュート決めたあと腕をだらんって脱力させるんだ!その脱力具合がね、もうこいつ限界超えてるんだって分かるわけよ。なあ、松本?だけどスリーポイントのフォームだけは絶対に崩さん男、それが三井寿。
最後はやっぱり、試合終了間際の例の音無くなるシーンだよね。凄いなんか絵のタッチが変わってよりマンガちっくというか、絵圧が強くなるんよ。動きにもっとスピード感が出てさ、もう0.1秒を争う次元に入ったことをそれが知らせてくれるわけ。原作読んでるときあまり気にしてなかった深津のハンドサインからの河田がスクリーンかけて沢北をフリーにする流れ。あ、こんなスピード感で行われたことだったのねって思ったよ。で、湘北の最後の攻めではもうほぼ漫画が混ざり込んできてた。部分的に白黒になって、白黒の範囲がどんどん広がって、桜木だけが色を持ってた。静と動の使い分けが本当に上手い。アニメーションの新しい境地だと思ったまじで。こんなのが観れるなんてって。泣くだろあんなん。別に悲観的なシーンでもなんでもない。感動的なナレーションがあるわけでもしっとり楽曲があるわけでもない。ただ必死に勝ちたくてバスケをする10人がいるだけ。それだけでこんなにも感動するのよ。それがスポーツだし、スポーツの全て。余計な説明なくたって、スポーツというだけで、それだけで感動できる力がある。この場面は原作が非常に素晴らしい分、ハードルが高かったと思うけどきっちり超えてきた。あの流れを動いてる絵で、それも全く新しいアニメーション表現をして観ることができて私は本当に嬉しかったです。
・表情。イノタケの描く人間の表情が大好き。二次元のキャラの表情って感じじゃない、ちゃんと「人間の」表情。絵の上手さにも起因することだと思うけど、人間のビミョ〜な顔を描くのがほんとに上手い。今回の映画で言うと、例えば子どもの頃のリョータの表情。子どもの顔のまだ出来上がってないふにゃふにゃした感じがよく出てる。あとは、桜木が「ヤマオーは俺が倒す!」って叫んだときのリョータの顔。驚きとも戸惑いとも興奮とも取れないあの顔。もうね、これに関しては表情が絶妙すぎて言語化できないので実際に見てください。
それから試合の最後、赤木がついに河田に競り勝ってブロックを決めたときの河田の顔が非常に印象的だった。さわやかに驚いてる感じの顔。目の表情がすごく良かった。
あとこれ、あんまり理解されないかもしれないけど、ソータと桜木の顔からものすごく平成の風を感じる。一重の具合かな?笑い方かな?髪型もあるかも。とりあえずなんか総合的に平成を感じるんですよ。平成初期の10代ってああいう雰囲気の人多かった気がするんだけど、今はどこに消え去ってしまったのやら。好きだったんだよねあの感じ。
表情つながりでいくと、「泣き」の表現が良かった。作中で泣いたやつは二人。リョータと沢北。二人のの泣き方が結構対照的で面白い。リョータは爆発力高い。多分普段全く泣いてないんだろうなって分かる泣き方。抑えられなくて決壊した感じ。表情もさ、そうそう泣くときってこんなしわくちゃなるよねっていう顔。目も閉じないでさ、声の演技の上手さも相まってまさに悲痛だよ。首元に力入って血管ぐってなるのも分かる〜こういう泣き方してるときって息が苦しくて身体がきつい。
対して沢北の泣き方もね、私大好きなんだ。なにが好きって、鼻から泣くところ。たしかに人間が泣くときって、堪えようとすればするほど鼻につーんといって鼻からぷはぁって泣くんだわ。沢北がまさにその泣き方してて、すげえ!って思った。小鼻がちょっと膨らんで、そこからはぁっと息を吐くと同時に涙が溢れる。リョータみたいに大声で泣くんじゃなくすすり泣く感じだね。細かいけど沢北が泣くまでの表情って、ちょっと怒ってるみたいな顔してる。それって多分泣くの堪えてる顔なんだよね。子どもが泣くの我慢してるときってあんな顔してる気がする。え、沢北は子どもってことですか?
原作でのイノタケの繊細な表情が、映画の動きのなかでもちゃんと掬い上げられててよかったし、結構見どころだと思う。
・沖縄の方言。まじドラマとかアニメで沖縄出てきたらほぼ100パー方言終わってるんだけど、スラダンの方言は沖縄出身の私からみてもかなりクオリティ高かったぞ。特に「これ地元の人間使ってる?」ってくらいクオリティ高かったのが、リョータのミニバスの試合中に後ろでずっと声掛けしてるコーチの方言。もうね、イントネーションがまんまそれよ。「はい誰が誰みてるかー?」ってやつ。いるいるこういう先生!ってなって興奮した。初見はここで軽く笑っちゃって、周り誰も笑ってないから恥ずかしかったわね。あとね、リョータがソータに言う、「1on1やるって言ったやっし!」も、まじで誇張抜きで沖縄の小学生みんなこの喋り方だから懐かしかった。あらゆる作品で適当にやられがちな沖縄の方言をしっかり抑えてて、エンドロールで方言監修の人見たらテニプリ比嘉中の木手の声優だったから納得しちゃった。
・声とセリフの淡白さ。声優総入れ替えということでどうなるやら心配もあったけど、完全な杞憂だった。桜木以外はほとんど違和感なく観ることができた。桜木は油断するとジャイアンが顔を出すから気を抜けない。それ以外のキャラクターの声はドンピシャで良かったし、何よりアニメ版と比べて演技がとてもナチュラルになっていて、より等身大の高校生感が出ていた。リョータとか新しい声の方が好きかも。自然だし、リョータの過去を知ったいま、ちょっと落ち着きのあるこっちの声の方がしっくりくる。三井の声も、前回の奥行きのある声質を引き継ぎつつもちょっと若返りして、ちゃんと男子高校生の声になってた。イケボです。
でも私が何より気に入ったのは河田の声。当たり前だが山王に声がついたのはこれが初めてだけど、原作読んでいたとき何となく頭の中でイメージしていた河田の声とピッタリだった。身体がでかい人間から発せられる声だって分かる声質だし、喋り方も掠れ具合もちょうどいい。一番のお気に入りは、「勝利への…か。うはっ」ってところ。この「うはっ」の言い方がそれだ!ってなったし、あとダンク決めたときの「だらっ!」も、めちゃくちゃ自然な「だらっ!」でそれだ!ってなった。
それから、安西の声はアニメ版の柔和な声質よりもやや芯のある声で、なんとなくホワイトヘアードデビル時代を思わせるような声だった。全然怖くはないんだけど、昔怖い人だったんだろうな〜って分かる声。耄碌してない感じでちょうどいいはっきり感でした。
なんか映画全体を通して良かったのは、声の演技がナチュラルだから、セリフが押し付けがましくなってないところ。普通だったら「諦めたらそこで試合終了ですよ」を間をためたり音楽入れたりして目立たせようとすると思うんだ。でもスラダンはあくまで自然に、さらっと、この名言とされてるセリフを流してくれるわけ。本当にセンスがいい。野暮なことしない。唯一ちょっと溜めたのが「俺は今なんだよ」くらいで、あとのセリフはどんなにいいモノでも淡々と。「負けたことがあるというのが〜」もあくまで一つの流れに乗ったセリフになってて良かった。いちいちセリフが押し付けがましいの嫌いなんで。かえって興醒めしちゃうから。向こうが何でもないことのように言うからこちらに響いてくるもんなんだよ。この映画はその辺良く分かっていたと思う。
・新規エピソード。リョータと三井の出会いとかゴタゴタとか、湘北でリョータが一年だった頃のエピソードとか、原作にない話が新たに追加されてて、それがすごく良かったんだよね。原作勢にとって嬉しい楽しいサービスだった。
特に衝撃的だったのが中2三井よ。リョータと三井お前ら二人だいぶ前に会ってたんか!?っていう衝撃と三井お前だれや!?っていう衝撃。あのね、初見の時三井って分からなかったし取り巻きの友達が「みっちゃーん」って呼んでてもいや顔が似てる同じ名前の別人だろとか思ってしまった(早よ受け入れろ)。だって我々の知ってる中学生三井って、私大文系大学生みたいなセンターパート三井寿だよ? それがあんな短髪さわやか兄ちゃんバージョンもご用意されてるとは思わなんだ。まあこれ以上三井について語ると止まらなくなるので別項目で騒ぎます。
いやあこの二人会ってたんだねー、そして三井はその時のこと綺麗さっぱり忘れててリョータだけが覚えてるもんだから、高校で最悪の再会果たしたときに「いつでも1on1やってやるよ」って言うに至ったわけだね…。
原作でもさ、リョータと三井が一度個人的に揉めた話はあって、でもその詳細とかは全然描かれてなかったよ。お互い病院送りになったけど、リョータはほかの奴にやられようとも執拗に三井だけを狙っていたという情報しかなかった。その詳細がついに映画で観れるとは…!嬉しかったのは、ちゃんとリョータが三井だけを攻撃してたところ。いくらノリちゃんたちがリョータを殴ろうとも見向きもせず三井だけを狙う。ちゃんと原作で聞いてた話の通りで嬉しかったんだ。またさ、三井に殴られたときのリョータの表情が良いんだわ。諦めとか悲しさとかそういうのが入り混じった冷たい顔。あの顔はなんとも言えんよ。リョータにしかできない、イノタケにしか描けない顔。三井に馬乗りになって殴ろうとするときに目がちょっとイッちゃってるのもいいよ。三井の歯折れてないじゃんって言ってる人、よく見ろ!ちゃんと殴られて前歯折れてるから!それでノリちゃんたち焦ってるから。あと関係ないけどリョータのカバンの中身が見れて嬉しかった。筆箱持ってないんだね…鉛筆二本だけってもう勉強する気ないやん。鉛筆二本にノート二冊、バッシュとタオル。簡素だね〜。そのバッシュを忌々しそうに見下ろす三井の画角が非常に良い。原作のロン毛三井って割と顔きもいんだけど、映画のロン毛三井はかっこよかった。
ほかに良かった新規エピソードたくさんあるんだけど、中でも神社沢北は良かった。原作沢北のエピソードを省いたぶん、あそこでいい感じに沢北のことやってくれたのは良いね。またあの神社の雰囲気好き。東北の空気感だよね。沖縄とは全然違う。空気が少し冷たそうで静謐。階段トレーニングする沢北も見れて嬉しかった。ちなみに沢北は階段の数を数え間違えている。あれは300じゃなく299段だ。
・細かい見どころ。これに関しては数えきれないほどあるから、箇条書き的に簡単に済ませる。
まず観客席の配置も細かくてそこ観てるだけで楽しい。魚住が水戸洋平たちのところで最初あぐらかいてるんだけど、ゴリが倒れた後は原作では桂剥きして警備員に連行されて後ろの方の観客席に移動する。それが映画でも忠実に再現されてた。桂剥きのシーンはないけど、ゴリ倒れた後は魚住の位置が変わっている。試合終盤桜木がぶっ倒れたときに立ち上がる男が魚住だからすぐ分かると思う。それから海南勢は観客席上の方、愛和と大栄はコートサイドにいる。分かりづらいけど深体大の監督二人も観客席にいる。緑色の服着てるメガネの人。一度気づいてしまえば結構目につくんだけどね。で、これ私は11回目にしてやっと見つけることができたのだが、テツ沢北(沢北父)がいるんですよ!山王の応援席の右側に、メガネかけて帽子かぶってベストに半袖のおっさんがいるんですよ!テツ沢北!私これ気づいたきっかけが、最後の最後無音のシーンで沢北がジャンプシュート決めた瞬間に観客席で立ち上がったおっさんがいて、それがテツ沢北だったの。感動した。映画全部を通しても少ししか映らないから気づきにくいと思う。
あとね、桜木が沢北のブロックを顔面で受けてそのままシュート入っちゃうところがある。原作ではその後鼻血が出て一瞬ベンチに下がるんだけど、映画では鼻血出てないのかな?って思ってた。いやそんなことなかったよ。ちゃんと桜木一瞬ベンチ下がってた!あの顔面シュートの直後、ベンチ前で地べたに座ってる桜木が0.5秒ほど映ってる。気づいたとき、あー!って声出そうになった。桜木ちゃんと鼻血出てたんだー!って。そういう芸が細かいところもこの映画の良いところなんだ。
高校生リョータが沖縄の砂浜で一人トレーニングするシーンも好き。なにが好きって、あそこのリョータの走り方。砂浜の上なのにめっちゃ走りのフォームが綺麗。頭が一切ブレてなくて、運動できる奴の走り方なんだよね。
ゴリが河田プレッシャーを感じているとき、ゴリの後ろ姿が映される。顔を映してるわけでもないし、心情を吐露してるわけでもない。ただ走ってる後ろ姿を映してるだけなのに、ゴリの様子が普段の違うことがはっきり分かる。色の塗り方とか首や背中のちょっとした角度でゴリが感じてるプレッシャーを表現しきれてる。同時に、ゴリが河田と自分を比較することをやめ、吹っ切れたときもまた、ゴリの後ろ姿だけが映される。同じ後ろ姿のはずなのに、さっきとは全然違う、付きものが取れたんだって分かる背中になってる。不思議なんだよね。この描き分けはどこから生まれているんだろうって。なにが違うのかはっきり言語化できないから、次観るときはゴリの背中に注目しよう。
床ドンするやつが三人いる。リョータと沢北と深津。リョータの床ドンは動物の威嚇みたいでかわいい。沢北の床ドンはかっこいい。そして深津の床ドンは、怖すぎる!顔も怖いし、音もバァァンッてでかすぎるし、とにかく私ならあんな床ドンされた時点でそれだけで戦意喪失です、はい。
桜木と流川のハイタッチ。このシーンは全ての漫画の中でも10本の指に入るくらい名シーンではなかろうか。原作だと見開きで桜木と流川がすげえ躍動感あるハイタッチをかましてる一枚絵が挿入されてる。その場面を映画では、ちゃんと動きの中でハイタッチさせてた。なにが言いたいかというと、ありきたりなアニメの演出だったらね、原作のタッチをなぞって描いた静止画一枚でハイタッチの効果音だけいれて誤魔化したりするのよ。それをね、一枚絵の静止画に逃げずに、きっちりアニメーションで表現してた。ハイタッチのモーションから一瞬の間、我に帰ってのくるっとそっぽ向くまでをちゃんと動かしてた。ハイタッチのモーション、すごくこだわったんだろうな〜。静止画に負けない躍動感と演出だった。そうそう、原作でもハイタッチの瞬間までは無音で、ハイタッチを機にコートに音が帰ってくる。それがそのまま映画に落とし込めてた。さすがに込み上げちゃったよね。我々観客もその瞬間まではもうほぼ息止めてんのよ。無音のとこからずっと。で、音が帰ってきた瞬間こちらも「はあ〜」と呼吸ができるようになる。で、湘北のやつらと一緒に解放感に浸るわけ。気持ちいい場面だよ。試合勝つけど終わり方があっさりしてるのも好き。
この映画の桜木って、アニメ版と比べて知性を感じる。声がそんな感じだからだと思う。でも原作の桜木って、言われてみればそんなところもあるんだよね。桜木けっこう周りのこと見てるし、ゴリが元気ないのもすぐに気づいて、なにも言わないけどカンチョーしたのは桜木なりの元気付け。そういう繊細なところ好きだよ。
腰に限界がきて、チクショー…って思ってるとき過去の回想が走馬灯のように入ってくるんだけど、そこで一瞬見切れる魚住と仙道を描いてくれて感謝。
細かいけど、最後の無音シーンで沢北がシュート決めたとき、堂本がめちゃくちゃガッツポーズしてる場面。私原作でもそこの堂本と表情が大好きなんだけど、映画でもその表情再現してくれてた。ほぼ白目剥きかけてるんだよね。白目剥きかけ堂本が気になる人は原作か映画をもう一度見てほしい。
この映画で沢北栄治ってめちゃくちゃかっこいいなって再認識しました。流川に対して「受けてやる」って言うときの顔イケメンすぎるし、湘北の5人をドリブルでびゃーって抜くときのスピード感あるプレイがかっこいいし、泣き方が良いし、なにより声がイケボすぎる。坊主でそのかっこよさってことは本物の美形である証。原作では沢北の凄さもっと炸裂しているから映画しか観てない人は沢北がどんだけヤバいやつかあんまり分かってないと思うけどそういう描写不足を差し引いても余りあるかっこよさ。イケメンは正義!
三井寿
最後に余熱で三井寿への想いを語って終わりにする。歴史に名を刻め〜〜お前等!!はいっ!
三井寿の女でありながらここまで不自然なくらい三井の話を出さなかったのはこの項目にゲージ残しとくためだったんだよ!さて、三井寿の話をしよう。
この映画ね、リョータの次に目立ってるのが三井なんだよ。いや三井は原作でもめちゃくちゃ目立ってるんだが、映画でもいいとこ取りしてしまう三井。まず試合で盛り上がるポイントは必ずといっていいほど三井のスリーが決まるとき。序盤は三井寿!からのバンバンスリー決めるときも激アツだし、HP無くなってからスリー決めて何度でも蘇る三井寿も激アツすぎる。そして三井がスリーを決めると10-feetのカッケー楽曲が待ってましたと言わんばかりにかかりはじめ、試合もまた動き始める。特に四点プレイ決めた直後に「わははははは」って高笑いする悪役顔三井がカットされずに映画で観れたのはでかい。あとね、「静かにしろい…」のくだりで三井のシュートがパツンって入る音が響くんだけど、そのパツンって音に確実に人の声が入ってる。人の声で「パツン」って言ってるんよ。これはまじ。心残りがあるとすれば「おう、オレは三井…諦めの悪い男…」のあの色っぽ煽り顔が見られなかったことくらいですかね。
そんでね、試合中でも三井のバスケIQの高さ光ってたね〜。個人的に三井寿は作中で1、2を争うバスケIQの高さを誇ると思っている。なんか安西の三井評が「知性」であることに疑問を抱いてるアホがいたが、原作読んでください。三井はバスケのこととなると、ピカイチの「知性」持ってるんだ。山王戦でいうと、序盤ドライブからのシュートフェイクからの赤木へのパス。それからリョータから三井に入ったパスを取らずにダイレクトで弾いて赤木に入れる瞬時の判断。最後の四点プレイのきっかけとなったスリーポイントは、松本が突っ込んできてることを分かってて、敢えてシュートタイミングをずらしファウルを誘い込んだ。さらに、山王が後半から全く戦術を変えてくることをいち早く感じ取っていたのも三井。「ここから別の試合が始まるぞ」って、もう本能のレベルで分かっちゃうんでしょうね、彼には。
原作で三井のバスケIQの高さが分かる特に印象的な場面は、練習のとき桜木を1on1で完全に抑え込んでいた場面。みんな大好き七三分けadidasバンダナ巻き三井のときです。桜木をゴール下まで入れない位置で足止めして、なんにもさせなかった。体格は圧倒的に桜木有利であるにも関わらず、三井は経験値とバスケIQでもってそれを上回ったわけ。また読み返したくなってきたな、あの場面。
それとね、中2三井はジャニーズにいてもおかしくないくらいキラキラしてたが、中身は紛れもなく三井寿で安心しました。初対面の男の子にいきなり「小学生?」って。デリカシーのかけらもない感じが安定に三井寿だったよ。そして見せびらかすようなスリーポイントの応酬。フォームが美しすぎて腹立つ。三井寿の凄いところってシュートフォームの再現性の高さにある。だってさ、魚住は三井のシュートフォームを見ただけで「武石中の三井寿だ!」って気づけたのよ。外見が変わったって、シュートフォームだけは綺麗に保たれてるからそれだけで三井寿だ、と周りが分かるくらいなんだ。中2三井は最初誰おまだったけど、スリー打った瞬間に、んん?てなって、このフォームの感じ…もしや…となり気づくんだよ。中2でフォームが完成されてるってどんだけレベル高いねんって話だけど。リョータも試合中に三井のスリーを見て、昔公園で会った三井を思い出して重ねるわけよ。そのシュートフォームの再現性の高さを保つために並々ならぬ努力をしてきたのは言うまでもないし、オレからスリーを取ったら何も残らねえって思うくらい自分のスリーポイントへの信頼はあついんだ。
話変わるけど、映画のスラムダンクでは三井のバスケ部襲撃事件は無かったんだ〜とか言ってる人がいたけど、いやちゃんとありましたよ。屋上での喧嘩は歯を折られただけ。顔には大して痣なかった。けど、バスケ部に復帰するって戻ってきた三井の顔は絆創膏だらけで青紫の痣があった。リョータもそう。あれはバイク事故の怪我じゃない。つまり映画のスラムダンクでも三井はきっちりバスケ部襲撃してます。描いてないだけで。傷の具合を見ていれば分かるよ。
山王戦声アリ三井の好きなセリフまず一つ目は、「あら。こすい真似しやがって」の「あら」です。元ヤンなのにね、感嘆詞が「あら」なんよ。育ちの良さ滲み出すぎでしょ。二つ目が「おめーが簡単に言えるような点差じゃねーぜ」です。シンプルにイケボ。謎の色気ある。どういうこと?そして三つ目が「バスケは身長が大事じゃねーのか」です。これね、「バスケは」って言うときに軽くスーッて息吸いながら話すんだよ。この息を吸う感じが、気だるい感じがとても良いからみんな聴いてみてほしい。
そして松本にトラウマを植え付ける君の名は。状態の三井寿。お前自分の名前忘れすぎだろ。自分の名前を呼んでくれるまで松本に襲いかかり続けるゾンビ寿。松本まじかわいそう。高校最後の大会でマッチアップしたのがゾンビで。大丈夫。松本は山王でなければどこでもエース張れる男だからバスケ辞めないで続けてね。オフェンスとディフェンスの区別すら曖昧なゾンビ野郎に負けるな!
あ、一個めっちゃ好きな三井のこと書くの忘れてた!リョータに「オレを使え…うぷっ…」て言う三井寿。あのゲロ吐く一歩手前みたいな顔とても良いし、その後の「あ…赤木が…スクリーンかけてくれる…オレがオープンになるぞ…」のゼェゼェしながら言うセリフもかっこよすぎる。特に「あ…赤木が…」の「あ…」が、最初言葉を発してると気づかないレベルで呼吸苦しそうなもんだから、えっ?なんか言ってる?って感じでこちらが聞き入っちゃうんだよ。ずるい男だよまったく。
最後に、三井寿、お前は将来素晴らしいバスケット選手になって、そして有能な指導者になれるよ。私はな、お前が卒業ギリギリで滑り込み推薦を貰って大学でもきっちり活躍した後Bリーグでスター選手になり、その後は実況者としてテレビに出たりしながらまずはプロチームのコーチをやることを知っている。そして満を持して人生折り返してからは湘北高校に戻ってきてそこのバスケ部で監督をやるんだよ。今は亡き安西先生のことをときどき思い出したり、自分の高校時代のバスケ部のことを思い出したりしながら。お前はそうやって素晴らしい人生を歩むことが約束されている。私はそう確信している。
そしてイノタケ、山王戦を映画化してくれて、スラムダンクの映画化に関わってくれて監督やってくれて本当にありがとう。きっと最後のプレゼントだと思うから公開終了するまで存分に楽しみます。
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