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八百屋で働いたことで学んだこと

このnoteでは、私が八百屋で実際に働いてみて考えたことについて書いていきたいと思います。

何回かnoteでも書いたのですが、半年ほど八百屋で働いていたことがあります。都内に住んでいる方は目にしたことがあるかもしれませんが、
旬八青果店という都内10店舗ほど展開している会社です。
・どんな会社なのか?
・働く中で私がどんな経験をし、何を考えたのか?
という流れで書いていきます。
こちらの記事は前回の記事にも関連しているので、ぜひそれも読んでみてください。

旬八青果店について

旬八青果店は皆さんが思い浮かべる一般的な八百屋とは少し違うかもしれません。家族経営などが多い中、ベンチャー企業として食農分野にアプローチしている会社です。

会社情報
株式会社Agrigate
設立 2010年1月
代表取締役 左今 克憲
資本金 333,215,000円 ※2020年1月1日時点(資本準備金含めず)
展開事業 旬八青果店/旬八大学/AgrigateConsulting

八百屋(小売業)と言えば、

コメント 2020-01-19 180059

基本的にこんな感じで、商品を仕入れて売ります。
前回の記事でも書いたように小売業において八百屋の様な業種型専門店はGMSなどの台頭により数が激減しています。
そのような大量生産大量消費に対して、
食農を豊かにすることをコンセプトに旬八は動いています。
まず、

第一に、
「おいしく、安い、新鮮な」食材を消費者に届けることで、食が豊かにすることを目指しています。

第二に、
サプライチェーンで無駄をなくし持続可能なシステムを作ることで生産者も豊かにし、地方の活性化にもつなげることを目指しています。

社是が
「食農業界の常識を疑い、
新しい経済を創造する」

というところからも真剣に日本の食農分野を変えようとしていることが伺えます。

簡単にですが、どのように変えようとしているかについて書きたいと思います。

【ビジネスモデル】
もちろんすべて非常に緻密に考えられているのですが、特に挙げるべきは粗利率の高さでしょう。

一般的に粗利率は30%に達すればよいといわれています。上の例では、粗利率37.5%、営業利益率9.2%です。

旬八では、粗利率は50%程度だといわれています。業界としてはあり得ない数字です。(ホリエモンも動画メディアで紹介したらしいですね(笑))

一部メディアにも記載されていますが、10坪の店舗で月商は300~500万円を達成しています。

・八百屋の収益について簡単な解説

一般的に八百屋さんがどんな売り方をしているのか?
ある八百屋さんがいるとします。

かかる費用としては、
仕入れ・人件費・光熱費・家賃・運搬費・減価償却費・諸経費(消耗品・広告費等)
が考えられます。

コメント 2020-01-19 180042

例えば、ある日20本のカブを100円/本で仕入れたとします。
そして、そのカブを160円/本で15本売れたとします。

売り上げは160円×15=2400円となります。
5本在庫として残ったので、在庫は100×5=500円です。
仕入れ値は100円×20本=2000円です。
⇒原価は、2000円-500円=1500円となります。
⇒粗利益は、2400円-1500円=900円となります。(粗利率37.5%)
そこから、上記で述べた、人件費、光熱費、賃料、運搬費などを引いていきます。
人件費250円
光熱費50円
賃料100円
運搬費80円
広告費50円
減価償却費100円
諸経費50円
以上の費用を粗利益から引くと
220円が残ります。これが営業利益となります。
つまり、仮に160円の商品を145円で売っていたら、仕入れ値よりも高い値段で売っているように見えて、
145×15-1500円(原価)-(費用)=△5円
で赤字になるわけです。
また、もっといえば青果の場合は加工品ルートがない限り破棄になることも十分考えられるので、よりシビアに考える必要があります。(八百屋で儲けるには、かなりの計算量が必要ですね(笑))

コメント 2020-01-18 174452

つまり、ここの営業利益を大きくできるかがカギになってきます。

・旬八のビジネスモデル

コメント 2020-01-19 112654

端的にまとめるとこのような強みが挙げられます。
これらをもう少し深堀してみます。

旬八が行っているのは、主に2つの事業です。
①SPF事業(Specialty store retailer of private label food事業)
②PF事業(Plat Form事業)

①SPF事業とは、アパレルなんかで知られるSPAを食農の分野に適応するということです。
つまり、各チャネルによって効率化を図り、サプライチェーンの無駄を省くことで「おいしく、安い、新鮮な」商品を届けるシステムを構築するということです。

コメント 2020-01-19 115943

上のように、サプライチェーンを構築することにより、消費者に質の高い商品を届けることが実現している。

②PF事業とは、上のSPFを実現するには、様々な障壁があります。例えば、社内・社外での三つのコミュニケーションであったり、社内教育、広告宣伝のシステムも構築する必要があります。

コメント 2020-01-19 121250

ここまで徹底してビジネスのノウハウから八百屋を経営しているところはほとんどないですよね。

また、上でも書いたように日本の食農分野を変えたいという壮大なビジョンを掲げているため、旬八のスタンスとしては、ノウハウを隠さずに提供します。
そして、従事する人の質と量をあげて底上げをしようとしています。

是非興味がある方は旬八大学などで講義なんかお行っているので参加してみてください。
もっと具体的に、数値等で紹介していたり、代表がインタビュー等で記事になっていたりするので、それらもぜひ読んでみてください。

私が働く中で気づいたこと

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私は半年ほど実際に大崎の駅前で催事の販売に関わりました。
具体的に申しあげることはできませんが、売上はかなり出していました。

まず、印象的なのは、そもそも人材の質が非常に高いです。
催事では1日(営業時間は11時半~19時)に600人~800人ほど人が来ます。
催事では店舗ではないので、トラックで商品が段ボールでひたすら届き、店の組み立てまで行います(フリマを想像していただければいいと思います。)。

その業務を通常3~4人ほどで行います。
八百屋では、上で述べたように、生鮮食品を扱うため、弁当ラインがあるとはいえ、売り残れを多くすることはタブーです。

基本として、
ロスをすると廃棄費用や運搬費用も掛かるため、値下げをして1円でも多くさばくことが大事です。
⇒店側としては、大体40~60種類ほどある商品を開店とともに値段を覚え、時間によって覚えた値段が変化していくので、結構大変です(笑)

【青果販売をする中での気づき】

青果販売をするまでは、主にウェブメディアをしていたため、対面での営業は初めての経験でした。当然ですが、お客さんの表情や行動を見て勧めたり、声を出して耳に情報が届くようにしなければなりません。

【商品の置き方】
僕は商品を売る上で以下の指標でみるようにしました。

主に、3つの点です。(恐らく小売りの基本のキ)

コメント 2020-01-19 160501


①どれだけ良いものをそろえてもお客さんの目に留まらなければ意味がないです。そのため、見せ方や置く場所、シナジーの良い並びを考えます。
バランスよく商品を売っていくために常に場所については考えます。

②お客さんが手に取って戻すことが多いときは、鮮度が悪いことが多いです。その場合、袋詰めをしたり鮮度の悪いものを引いたりします。

③値段を下げるのは、一番最後です。上で書いたようにただ仕入れ値より高ければいいというわけではありません。
一方で、ロスを作ると0円になってしまうので、原価以下でも買っていただいた方がいいです。
スポットや粗利取りを頭に入れながら時間と相談して進めていきます。
(夏になると商品自体が痛んでくるので、それも考慮に入れる必要があります。)

ここで、面白いのは、レスポンスの速さです。
正解という正解はないので、仮説と検証をしていくのですが、少し場所を変えるだけで驚くほどに変化があります。
以上の点で営業時間中ずっと頭を使いながら考えます。

【対面での営業】

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実際には、かなりの少人数で業務を行っているので、
優先順位は
①商品を滞りなく、出し続ける②コミュニケーションです。
(そもそも来店して商品が十分に出ていなかったらリピート率が下がるからです。対話はあくまでも付加価値です。)

上でも書きましたが、八百屋の利点として、
お客さんとの距離が近いことで対話の中で商品に付加価値を付けられることが大きいです。

スーパーであれば、これを買うために行くというモチベーションで来る人が大半ですが、
八百屋はその日に売っている新鮮な商品を買う、なじみのない商品を買う人が結構な人数がきます。

また、顧客のニーズにあったことをリコメンドしたり対話するためには、もちろんですが、顧客の性質を理解する必要があります。
例えば、大崎駅のあたりの性質は、以下の様に挙げることができます。

1、果物⇒年齢が高い世代が昼頃に買う&19時ごろに帰り際の30~50代男性
2、野菜⇒15時~18時に主婦層がメイン
3、比較的食へのこだわりが強い
4、値段も他の地域に比べて気にしない人が多い(値段<<商品の質)

【独自行った工夫】

コメント 2020-01-19 174814

主婦の方は、家庭を持っているためにある程度買うことを決めてから来ています。
⇒野菜の調理方法を伝え、組み合わせで購入してもらったり、その流れで高単価の果物も進めます。
また主婦などの若い層は直接話しかけなくても全体に向けてのアナウンスを結構聞いてくれています。
(お子さんにサービスすることもかなり有効です。)

年齢が高い層
⇒この層は、果物を日頃から習慣として食べることが多いです。そのため、様々な果物を紹介したりします。特に産地へのこだわりが強いことが多いです。
この世代は全体へのアナウンスはあまり聞かないので、直接話しかけることが大事です。
ただ、おいしかったら必ずリピートしてくれ、また友人にも紹介してくれます。(しゃべりに来ている人も多いです)

買った商品を覚える
⇒常連さんの顔を覚えることはもちろん、買った商品もできるだけ覚えます。
・常連さんは、毎回来る分あまり買わないことも多いので、元気よく挨拶をするだけで買ってくれたりします。

・前回来た時の買っていただいた商品を覚えて、どうでしたか?と聞くとお客さんにとってこれ以上に喜ばしいことはないでしょう。
また一度そのやり取りをすると毎回来てくれるようになったりもします。
(600~800人も来るので、なかなかハードルが高いですが)

店員の配置をバランスよくする
⇒人が多くいたりするところに集まる傾向があります。
そのため、セルサイドはバランスよく立ち位置を取り、声を出しているとお客さんの動きもよくなります。
(セルラーシステム的な?違うか)

まとめ~対面営業は心の豊かさにつながる?~

小売業を自分が実際に携わって思った所感としては、ビジネスに精通した人材がもっと流入することでもっと利益率の高い業界になりうるということです。
上でも書いたようにまだまだ無駄の塊のような業界です。
(市場とかにiPadをもっていってなんやねんそれ!的な感じらしいですw)

前回の記事でも書いたように、大量生産・大量消費の時代を経てきましたが
最近では高単価スーパーなんかも出てきており、より顧客のニーズに合わせた業態もふえてくると思われます。

また、消費者のより高い要求水準は、「心の豊かさ」になってくるのではないでしょうか。
つまり、八百屋の「対面で売ることで付加価値をつけられる」の価値が上がってくるのではないでしょうか。

働いていた肌感でも、話すことを求めている人は数多くいます。
(特に東京で上の世代は多いでしょうか)
他の小売店でも中々対話の場というのは効率化とは対極の位置にあるので、失われてきています。
上記で述べたように、参入障壁が比較的低く、生活必需品を扱う八百屋がこの社会課題の大きなソリューションとなるかもしれないなと感じました。

営業に興味のある方は旬八で働いてみることをお勧めします。
結構大変な職場ですが、上にあげたように経営も営業のディールも考えられているので、学ぶことは多いです。

又、なかなか小売りでこの売上を出せることも多くないと思います。
また、八百屋はあらゆる層の人が来るので、絶対に今まであったことのないような人と一回は触れるのではないでしょうか(笑)

しかも、仕入れも含めほとんどすべての情報が社内SNSで共有されていて、値段の設定も配置も結構自由に考えて判断させていただけるので、主体的に出来る環境だと思います。

都内で営業もしているので、ぜひお立ち寄りください!
また、恐らく採用もしているのでぜひ応募してみてはいかがでしょうか。
(退職しているので、純粋なお勧めです)

おまけ

旬八の面白いのが、社内で飲み会とか少ないんです。
僕も入ってから一度も懇親会も飲み会もなく、初めて飲み会をしたのが僕が退職する1週間前に一回。(笑)
でも、職場では全員が自分で考えて連携をとって動けています。

1つ目に、採用時に結構決まっている気がします。かなりの量の業務をこなさなければいけないので、そもそも食に興味があるとか営業に興味があるという人でないと厳しいです。

2つ目に、絶対に良いことをしているという自覚。自分たちで味見もするのですが、すべての商品がおいしいです。しかも安い!だから自信をもって売ることができます。

個人的にこの二点はかなり重要だと思っています。
まぁ当たり前ですが、モチベーションがあって、自信をもって出来たらシステムさえよかったらのびていきますよね(笑)

時には、手を取ってきて「死んだ息子に似てる」ってずっとおじいさんに話されたりとか、
運んでいるときにスイカを割ってスイカの汁かかかるとかもありました(笑)
一方で対面で商品をお勧めして買ってくれたり、「この前勧められたやつおいしかった」と言ってもらえることもたくさんあるので、人との関わりは面白いなと思います。


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