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小売業の歴史と変遷

今回のnoteは、日本の小売業について業界のポジショニングマップを用いてそれぞれを説明し、またどのような歴史を歩んできたのかをまとめていきます。
次回のnoteでは、小売業をいくつかピックアップして、
より具体的に収益やビジネスモデルを図解を用いて学んでいきたいと思っています。
今回のnoteは次回に向けての前提知識の位置づけとしています。

なぜ小売業をまとめるのか?
小売業には古くからは数百年の歴史があり、通貨の歴史とほぼ等しいといえるでしょう。
そして、食品・生活必需品など生活と切り離せない商品を扱うことで時代の背景をかなり色濃く反映してきました。
その小売業を理解することは、他の業界にも応用できる基本的な考え方といえることでしょう。
(※素人が書いたものであり、お見苦しい点が散見されると思われますが、是非とも指摘していただけますと幸です。)

そもそも小売業とは?

小売とは、卸売業者や生産者から商品を仕入れ、最終消費者に販売することです。

経産省が毎年出している小売業についての報告書に載っていた資料です。
経産省は小売業を以下のように分類しています。

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これを見ると小売業といっても、多岐にわたることが分かると思います。
最終消費者に商品を販売することを生業にしているので、皆さんに一番なじみがあり生活と密接に関わっていることでしょう。
以下では、いくつかピックアップして簡単な特徴を解説したのちに、
どのような歴史背景とともに発展してきたかについて詳しく時系列とともに解説していきます。

今回取り上げる小売業

今回は、
百貨店/総合スーパーマーケット/食品スーパー/コンビニエンスストア/ショッピングセンター/業種型専門店
についてです。
他にもホームセンターや業態型専門店・ドラッグストアなどが挙げられます。簡単に小売業のポジショニングマップを作ってみました。

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横軸を価格、縦軸を効率性としました。
下でそれぞれについてまとめていきたいと思います。
【百貨店】
百貨店というと三越、伊勢丹、阪急、西武などが頭に浮かぶかもしれません。

百貨店の定義は、
衣・食・住の商品群の販売額がいずれも10%以上70%未満の範囲内にあると同時に、従業者が常時50人以上おり、かつ売り場面積の50%以上において対面販売を行う業態。(経産省)
(百貨店の中でも売り場面積によって区分がある)

百貨店の歴史は、1904年に当時呉服店を営んでいた三井呉服店と三越呉服店が三越百貨店を設立したことが最初だといわれている。
1920年には、阪急梅田駅に阪急百貨店の前身となる売り場を広げた。
そこから駅直結型百貨店が始まったといわれている。
つまり、呉服店型と鉄道型が百貨店には存在するのです。

・特徴
対象は主に富裕層
圧倒的な広さの売り場面積
ブランド力と接客

【総合スーパーマーケット(GMS)】

主に郊外にあるイオンの様な複数階にわたり衣食住に関する日用品を扱う形態。
価格が分かるようになっており、顧客が商品を選びレジにて一括で支払いを行うセルフサービス式を導入しました。
また本部で一括で購入し売り場の構成や量はマネージャーに任されている。
米国のGMSでは、食料品を扱っておらずイオンなどは日本版GMSともいわれます。

・特徴
対象は一般消費者
売り場面積の広さ
商品を幅広くそろえている
プライベートブランドを作っている
CMなどを使いマスプロモーションを行う

【食品スーパー(SM)】

売り場面積が250㎡以上で食料品などの日用品を提供する業態で、
上で述べたセルフサービス式を取り入れている。
顧客には、高頻度で利用してもらうことを想定している。
(代表例:ライフ)

・特徴
本部が一括で仕入れをすることによる低価格
直接手に渡りやすいチラシ広告
高頻度・高回転を想定している
商品を幅広くそろえている

【コンビニエンスストア(CSV)】

売り場面積が30㎡~250㎡で主に飲料・食料品を扱い営業時間が14時間以上の業態。
直営店はあるもののフランチャイズ方式が多いため、ロイヤリティでの収益が見込める。
(代表例:セブンイレブン・ローソン・ファミリーマート)

・特徴
24時間営業しているところが多い
店舗数の多さ
高回転・生活に必要な最低限の品物を提供
フランチャイズ方式(地域性を重視できる)
POSシステム

【ショッピングセンター(CS)】

デベロッパーにより計画的に開発された施設であり、大型小売店と専門店によって構成される。より詳しい分類があるので、気になる人はこちら

・特徴
GMSに専門店を付加させた施設
アミューズメントパークの側面を持つ
映画館などと併設されることも多い
比較的郊外に作られる

【業種型専門店】

専門店には、業種型専門店と業態型専門店が存在します。
専門店とは、取り扱い商品が、特定の分野で90%以上占めるお店で、主として対面販売(セルフサービスではない)で販売を行なう店のことです。
業種型とは、電気屋・肉屋・魚屋・八百屋など商店街にありそうなお店
業態型とは、アパレルやベビー商品など大型チェーン店のイメージ
より詳しくはこちらでまとめてくれてます。

・特徴(業種型専門店)
家族経営が多い
顧客のニーズにこたえやすい
対話がある
回転率に限界がある
知識を享受できる

定義に関しては、法規制などが絡んでいるので、もっと詳しく知りたい方は調べてみてください。次に歴史について話していきたいと思います。

小売業の歴史

上では小売業の大まかな分類について整理させていただきましたが、小売業がどのような歴史を歩んできたかについてまとめていきます。

【小売業が確立されたのは江戸時代】

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小売業が確立したのは江戸時代と言われています。
小売業は、最終消費者と品物をつなぐものなので、貨幣の歴史とほぼ同義だと思うのですが、モノの行き来が活発になり今のサプライチェーンができ始めたのが江戸時代です。
江戸時代の参勤交代制度により、それまでよりも江戸の町と他の地域とのつながりが強くなりました。地方の大名は、家族などを城下に住ませたりしていたので、この時期に江戸の人口が急増しました。
そのため江戸だけの供給に対して需要が追い付かなくなったために商業が発達したといわれています。
そして江戸期後半ごろになると
生産⇒問屋(市場)⇒仲買(卸業)⇒小売⇒消費者
というサプライチェーンが確立されるようになりました。
なぜ生産⇒小売もしくは消費者としなかったのか?については藩が税金を漏れなく納めさせるためだといわれています。
小学校の生活の授業とかでせっかく習うのにそこまで踏み込んでは教えてくれませんよね(笑)

【百貨店の登場(近代化)】

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日本の小売業が発展していった流れに百貨店の存在は欠かせません。百貨店自体の起源と言われているのは、19世紀半ばのパリだといわれています。
産業革命により市場経済が発達し商店が増えてきたところを一つの建物にまとめようというコンセプトで生まれました。
日本でも同じように近代化が進む中で上で述べたように西洋風大型建築の三越百貨店ができました。ひと昔前の映画などを見ればわかるように「近代化」の象徴として休日に百貨店に買い物に行き屋上のテーマパークで子供を遊ばせ、西洋風のレストランでランチを食べることがステータスでした。
それが鉄道型百貨店も登場し、主に地方都市にとってはデベロッパー的な役割がありました。

【GMSの登場(効率化)】

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戦後の復興期が終わるとともに1960年代からの日本の高度経済成長期が訪れました。高度経済成長期の訪れとともに大量生産・大量消費の時代となりました。
そこで登場したのがダイエーです。(1963年)
GMSは個々の店舗・企業経営・顧客のショッピングという3つの点で効率化を図りました。
それまでは個人専門店で日用品を買いそろえたり、百貨店で対話しながら買い物をすることがメジャーでしたが、陳列している商品を自分で選びかごに入れてレジで精算する方式をとりました。
また、複数店舗経営を行うことで本部が一括仕入れを行い、低価格で提供可能とするだけでなく、財務・経理面でも効率化を進めることができました。
百貨店法により百貨店の営業に制限がかかった背景もあり、1972年にはダイエーが三越の売り上げを超えるまでに成長しました。
ただその翌年の1973年には、小規模小売業と大規模小売業の利害調整を目的として、大規模小売店舗法が制定され、GMSにも規制がかかるようになりました。(この法律については、今は廃止されているがその背景にも様々な要因があるので気になる人は調べてみてください)

【経済安定期とSM・CVSの登場】

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1970年代のオイルショックを受けて、高度経済成長期が経済案的に突入した。効率化や量的拡大を進めた小売業界だったが、消費者のニーズはより多角化するようになる。

つまり、要求水準の高度化と所得水準の上昇を背景に消費者は安価で効率的な商品を積極的に選択しなくなり、買物の快適さや豊富な選択肢を求めるようになった。
そこで1971年にマクドナルド、1974年にセブンイレブンが出始めた。
1980年代末の規制緩和が拍車をかけて一気に普及することとなった。
詳しくはこちらで説明されています。
簡単に言うと(円高等も実際には絡んできますが)、GMSへの規制が緩和されることにより出店数を一気に増やしました。
売上は伸びたものの、GMS同士が顧客の取りあいをしたため価格競争に陥りました。

GMSは大規模経営による効率化には非常に適していましたが、
その反面一括で仕入れを行うため多角化したニーズには答えにくく、価格区競争に陥りやすい性格を持っていることが分かります。

このような競争市場になることで、対象顧客を絞りニーズにあった商品を扱う形態が成長するようになりました。ユニクロが店舗数を伸ばしたのもこれくらいの時期です。
この時期に食品スーパー・コンビニ・100円ショップ・家電量販店などが台頭してきました。

産業革命⇒需要の拡大⇒効率化⇒安定⇒ニーズの多角化⇒市場の分解
これは、インターネットなんかでも同じことが言えます。

このような背景から消耗戦に敗れた多くのGMSは経営破綻し、市場からの撤退という流れになりました。
また、この時期に多くの業種専門店が低価格化や高回転率に耐え切れなくなりなくなっていきました。

【小売業に付加価値⇒複合商業施設】

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2000年代に入ると、六本木ヒルズや丸ビルなど今でも多くの人が訪れる複合商業施設ができ始めた。
消費者としては、より高次な要求水準になり、ブランド・マーケティングといわれるようになったのはこの時期でしょう。

良い製品を安く作りやすく売る⇒他とは違う商品を高い値段で提供する

という考え方に変わっていきました。ユニクロの例を出すと2005年あたりで業績不振に陥りました。
小売業では、1970~1990年代で経営破綻に陥っていった業種専門店の救いとなったのが、複合商業施設であった。
生活水準の上昇に伴うより高次な消費者の要求に伴い、体験型や個性を生かした商品を並べるようになりました。
背景としては、街づくり法やメディアの発展による情報への簡単なアクセスによって、広告塔としての役割を担うこともできる複合商業施設が増えていったことは納得できます。
東京の六本木ヒルズ・丸ビル・渋谷ヒカリエなど
大阪では、阪急梅田・グランフロント大阪など
に代表されるように都市計画の変革が起こるようになりました。

これ以降も都市型スーパーであるイオングループのまいばすけっとや高単価スーパーなど小売業は様々に変わってきています。説明しきれない部分や調べきれていない部分もたくさんありますので、気になった人はより詳しく調べてみてください。

まとめ

小売業を浅く広く時系列に沿ってまとめてみました。
もちろん私が書いた因果の他に法的側面や経済的側面が色々関わっています。ただ、大きくとらえることで、需要と供給の関係でどのように発展・転換していくのかが分かり他の業界でも応用することができます。
次に、やはり「順序」が大切です。この長い歴史があるからこそ発展してきて残ってきた企業はその歩みをしてきたからこそ今の確固たる地位があります。2000年代に入り付加価値をどのように消費者に提供するかになってきますが、それまでの効率化をし、市場の中で高品質・高性能・安全な商品を扱い顧客を獲得してきたからこそ情報の付加価値やポイントカード制を導入することができます。近年だとamazonやzozoなど多くのサプライチェーンがネットでできるようになりました。そこから今後はどのように高性能・安全性・高品質な商品を提供し付加価値をつけていくかが焦点になってくるでしょう。

次回以降は、より詳しく米国での小売業についてや既存の上で述べた八百屋やスーパーなどのビジネスを分解し解説していきたいと思います。

ご指摘など、どんどんしていただけたら幸いです。
ありがとうございました。

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