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【離婚後共同親権】面会交流の”強制”はどこまで許される?<判例調査> ※適宜更新

下記の前回記事で、面会交流は別居親が同居親に面会交流を「強要」する権利ではないことを明らかにしました。

とはいえ、いったん決められた面会交流の約束に反し、面会交流を不当に拒否した場合は、裁判所は法的強制力に基づいて、面会交流の実現を迫ってきます。
いわゆる直接強制・間接強制というやつです。

これはどこまで認められるのでしょうか?
今回も主要な裁判例を調査しました。

【ご注意】
本記事の掲載情報は、DV、ハラスメントなどに悩み、離婚を考えているシングルマザーのような方を想定し、正確かつ信頼できる法律情報を、著名な判例、標準的な学説、信頼できる実務家の見解・書籍等に基づき、出典を明示して提供していますが、当方は法曹資格を有しないため、個別のケースに関するご相談・お問い合わせには対応できません。あらかじめご了承ください。

1、面会交流の強制に関する最高裁判例(最決平25.3.28)

決定要旨
「監護親に対し非監護親が子と面会交流をすることを許さなければならないと命ずる審判において、面会交流の日時又は頻度、各回の面会交流時間の長さ、子の引渡しの方法等が具体的に定められているなど監護親がすべき給付の特定に欠けるところがないといえる場合は、上記審判に基づき監護親に対し間接強制決定をすることができると解するのが相当である。
 そして、子の面会交流に関する審判は、子の心情等を踏まえた上でされているといえる。したがって、監護親に対し非監護親が子と面会交流をすることを許さなければならないと命ずる審判がされた場合、子が非監護親との面会交流を拒絶する意思を示していることは、これをもって上記審判時とは異なる状況が生じたといえるときは上記審判に係る面会交流を禁止し、又は面会交流についての新たな条項を定めるための調停や審判を申し立てる理由となり得ることなどは格別、上記審判に基づく間接強制決定をすることを妨げる理由となるものではない。」

上記判例は、通常、
(1)面会交流を命じる審判を監護親が履行しない場合に、その審判に基づいて間接強制(民事執行法172条)ができること
(2)審判において面会交流の日時・頻度をはじめとする一定の事項が具体的に定められ、監護親のすべき給付の特定に欠けるところがない場合には、間接強制ができること
を明らかにした判例として紹介されています。
〔出典〕水野紀子・大村敦志編「民法判例百選Ⅲ親族・相続(第2版)」有斐閣 21事件(解説:高田昌宏早稲田大学教授)

実はもう1つ、無視してはならないことを最高裁判所は述べています。
それが太字部分で示した箇所で、
(3)子の拒絶の意思表明は間接強制決定を妨げる事由とはならないが、子の拒絶的態度などの事実が、審判等の後に生じた新たな事由(事情変更といいます)として、面会交流を禁止する調停や審判を申し立てる理由になりうる
としているのです。

2、間接強制が可能な文書とは?

間接強制が判例上可能とされていても、調停調書等が間接強制のための債務名義(債権者に執行機関(執行裁判所又は執行官)の強制執行によって実現されるべき債権の存在および範囲を公的に証明した文書のこと)と認められるためには、次の2つの要件を満たすことが必要です。

①給付を内容とした債務名義であること
②給付の内容が特定していること

①については、文書に「面会させなければならない」という文言だと理想的ですが、「面会交流を認める」といった文言でも、要件を満たすとされています。(上記最高裁決定と同日付に行われた、別の最高裁決定より)

②については、上記最高裁決定で述べられているとおり、面会交流の日時または頻度、各回の面会交流の長さ、子の引渡しの方法等が面会交流の審判に具体的に定められているなど、監護親がすべき給付の特定に欠けるところがないといえる場合、としています。
これについては、面会交流の定めはあるが、その他の点が事前に協議する、債権者が選択するなどの定めにとどまるケースでは、特定が否定され間接強制が否定される裁判例があります。(高松高決平14.11.15、東京高決平18.8.7)
一方、審判の前提となった当事者間の暗黙の了解を考慮して給付の特定および間接強制を認めた裁判例もあります。(東京高決平26.3.13)

3、錯綜する判例ー子の意思が間接強制を阻止できるか?

問題なのは、子どもの意思です。
実は、参照可能な判決文や論文を検索しましたが、非常に錯綜しています。

上記の最高裁判所決定の前の決定例で、①監護親が説得したにも関わらず、子がいったん決まった直接強制を拒否した事案では、間接強制を否定されています(東京高決平23.3.23)。また、②間接強制の手続において子の強固な意思が尊重され、間接強制が却下された裁判例もあります(大阪高決平24.3.29)が、いずれも上記最高裁決定後でも有効性があるかは消極的にならざるを得ません。

一方、上記最高裁決定後、③子が拒絶の意思を示しているにもかかわらず、間接強制を認めた裁判例も現れていました(大阪家決平28.2.1)。(※)
ところが、④子どもが15歳に達しているケースでは、監護親(債務者)のみの意思では実現できない債務にあたるとして、間接強制が却下された裁判例もあります(大阪高決平29.4.28)。
また、⑤いったんなされた間接強制決定の後、別居親が無断で学校の参観日に出席したり、子らの拒否感情がきわめて強く、新たに1年間の面会交流禁止の審判が確定したなどの事情がある事案で、当該間接強制に基づく強制執行が権利濫用にあたる、とした裁判例があります(大阪高決平30.12.21)。

なぜ、判例が錯綜するのか。
キーは「子の年齢と成長」です。
年齢が長じれば、自我が発達しますし、思春期や反抗期もあります。年齢によって子の反応や山の天気のように変わる一方、監護親は強引に引っ張ってでも面会交流を実施するわけにはいきません。
この場合、法的には「債務者の意思のみでは実現できない債務」とされ、間接強制の要件を満たさない、とされるのです。
上記最高裁決定は、実は、子どもの年齢が7歳でした。しかし、判例を検索すると、おおむね10歳以上では、子の意思を相当尊重していることがうかがえます。

<判例と子の年齢>
最決平25.3.28・・・7歳
①事件・・・8歳
②事件・・・10歳
③事件・・・7歳
④事件・・・15歳
⑤事件・・・12歳
といった具合です。

※・・・②事件では間接強制を認めたものの、カッコ書きで(なお、現在の未成年者の状況等から前件審判で定められた面会交流の方法が適切でない場合には、債務者において申立てを予定している面会交流の調停事件等の手続において、より適切な方法を検討すべきである。)と判示し、債務者側で新たに別途裁判上の申立てを行うべきことを示唆しています。

〔出典〕
①事件・・・家月63巻12号92頁
②事件・・・判時2288号36頁
③事件・・・判タ1430号230頁
④事件・・・家庭の法と裁判2018年4月号(Vol.13)
⑤事件・・・家庭の法と裁判2019年12月号(Vol.23)

6、まとめ つまりどういうことなの?

現状、調査した段階でいったん示すまとめは次の3ポイントです。

【まとめ】
①確かに平成25年の最高裁決定は、面会交流を拒否したケースでの間接強制を認めたが、子どもが7歳のケースである。

②①の最高裁決定にもかかわらず、具体的事情によっては裁判所は、子の年齢や監護親の意思のみで実現可能かを現実的に考えて、間接強制をすべきかを決めている。

③間接強制が決まったケースでも裁判所は、監護親に新たに申立て手続きを促すなどし、妥当な解決に努めている。

というところでしょうか。

7、最後に

この分野は判例と文献がまだ多く、調査未了となっています。
今後、新たな文献を確認次第、情報を適宜追加いたします。

(了)

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