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復習しよう!ウィンドプロファイラ【第59回-専門-問3 気象予報士試験の解説】

第59回気象予報士試験の専門知識を解説していきます。
全ての記事を無料で公開します。
1人でも多くの人に、気象について興味を持ってもらえたらうれしいです。


問題

問3 気象庁が行っているウィンドプロファイラ観測について述べた次の文(a)~(c)の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の①~⑤の中から1つ選べ。

(a) ウィンドプロファイラの観測局から上空の5方向に向けて電波を発射し、大気中の風の乱れなどによって散乱され戻ってくる電波の周波数のずれから、上空の風向・風速を測定している。

(b)ウィンドプロファイラで温暖前線の通過を観測すると、地表付近に南よりの風が入り始め、時間とともにその層が上空に向かって厚くなる様子を捉えることができる。

(c) 雨が降っている場合、大気による電波の散乱よりも雨粒による散乱の方が強いため、ウィンドプロファイラの観測したデータは雨粒の動きを捉えたものとなる。

(一財)気象業務支援センターの掲載許可済

(a)電波の発射方向は5方向 → 正

(a) ウィンドプロファイラの観測局から上空の5方向に向けて電波を発射し、大気中の風の乱れなどによって散乱され戻ってくる電波の周波数のずれから、上空の風向・風速を測定している。

(一財)気象業務支援センターの掲載許可済

問題文のとおりです。

特に、ウィンドプロファイラにおいて、
電波を発射する方向は4方向でなく、5方向という点は、
意外によく問われます。

以下の図を脳内に焼き付けておきましょう。

ウィンドプロファイラといえばこの図(出典1)

(b)温暖前線通過時の層 → 誤

(b)ウィンドプロファイラで温暖前線の通過を観測すると、地表付近に南よりの風が入り始め、時間とともにその層が上空に向かって厚くなる様子を捉えることができる。

(一財)気象業務支援センターの掲載許可済

ここが最も悩んだかもしれません。

前線周辺の大気の断面を、模式図に表してみましょう!

0時時点の大気の構造(前線記号:出典2)

前線とは、【地上における暖気団と寒気団の境目】のことです。
この図では、地上に温暖前線があり、東方向に(右へ)移動しています。

バンザイする虎🐯から見てみましょう。
0時の時点では、温暖前線はまだ遠くにあります。

その後、2時、3時と、時間が進むと、
しだいに温暖前線が右に移動し、🐯に接近します。
それと同時に、上層にある暖気が厚くなっていきます!

7時時点の大気の構造(前線記号:出典2)

その後、虎🐯の付近を温暖前線が通過していきました。
通過と同時に、虎🐯の上空は全層が、南からの暖気でおおわれます。

したがって、通過後は、南よりの風の層が、
時間とともに厚みを増すことはありません。
通過した瞬間に、下層から上層まで、南よりの風に暖気におおわれるのです。

前線が通過した時点で全層が南よりの風となるので、(b)誤です。

(c)降雨時の観測データ → 正

(c) 雨が降っている場合、大気による電波の散乱よりも雨粒による散乱の方が強いため、ウィンドプロファイラの観測したデータは雨粒の動きを捉えたものとなる。

(一財)気象業務支援センターの掲載許可済

問題文のとおりです。

ウィンドプロファイラの上空で雨が降っていない場合は、
大気の上昇流・下降流を捉えます。

一方で、上空で雨が降っている場合は、
雨粒の動きを捉えたものになってしまいます。


まとめ

以上の検討を踏まえると、解答は②です。

いかがでしたか?

(a)と(c)はウィンドプロファイラの基本です。

一方で、(b)は前線の知識を必要とします。
この機会に、前線の知識、立体構造を復習するといいかもですね!

出典など

出典1:気象庁「気象庁|ウィンドプロファイラ」(https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/windpro/kaisetsu.html)から抜粋して作成

出典2:気象庁「気象庁|予想天気図の説明」(https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/kurashi/FSAS_kaisetu.html)から抜粋して作成

※ 本記事における解答や解法は、個人の見解であり、(一財)気象業務支援センターとは関係ありません。