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勾配の定義を確認しよう!【第59回-実技1-問1(3)② 気象予報士試験の解説】

第59回気象予報士試験の実技1を解説していきます。
全ての記事を無料で公開します。
1人でも多くの人に、気象について興味を持ってもらえたらうれしいです。

問題

(3)図4には華中から東シナ海にのびる停滞前線の転移層がみられる。このことに関連して、以下の問いに答えよ。

(一財)気象業務支援センターの掲載許可済

② 地上前線の位置から福岡までの距離は500kmで、福岡上空までの前線面の勾配および転移層の厚さは一定であるとする。その場合の前線面の勾配を分数値1/Fで求め、分母Fの数値を10刻みで答えよ。また、10刻みで求めたFと①の解答を基に、地上における前線帯の水平幅を10km刻みで答えよ。

(一財)気象業務支援センターの掲載許可済

こういう勾配の問題は、たびたび出題されます。

すみません。私ユキは受験時代、勾配問題を解けませんでした。
こういう問題をみた瞬間、次へと飛ばしておりました。

今振り返ると、「勾配」の意味がわからなかったのでしょう。
勾配の定義を理解すれば、たいして難しい問題ではありません。


前線面って?

前線面という言葉が出てきました。

前線面とは、転移層・前線帯の暖気側の面のことです。

その前線面と地表面が接するところが前線です。

(前線記号:出典1)

勾配って?

おそらく、この問題を解くうえで、
勾配の定義を明らかにすることが超重要
です。

勾配とは、ズバリこの式です。
超ざっくり言うと、
水平方向に1m進むごとに、高さ何m上昇(下降)するかです。

「単位水平距離あたりの上昇・下降量」とも言い換えられますね!

鉄道・道路の世界でよく使われ、例えば、

  • 箱根登山鉄道(神奈川県)には、80‰(80/1000)の勾配があります。
    これは、水平方向に1000m進むごとに、垂直方向(標高)に80m上昇します。

  • 青函トンネル(青森県・北海道)には、12‰(12/1000)の勾配があります。
    これは、水平方向に1000m進むごとに、垂直方向に12m上昇します。

  • 2016年にスキーツアーバス転落事故が発生した、
    国道18号碓氷バイパス(群馬県・長野県)には、8%(8/100)の勾配があります。
    これは、水平方向に100m進むごとに、標高が8m上昇します。

(上段)前線面の勾配を求めよう

② 地上前線の位置から福岡までの距離は500kmで、福岡上空までの前線面の勾配および転移層の厚さは一定であるとする。その場合の前線面の勾配を分数値1/Fで求め、分母Fの数値を10刻みで答えよ。

(一財)気象業務支援センターの掲載許可済

①で求めた転移層の高さや厚さ、②の問題文の内容を図にすると、
次のとおりになります。

(前線記号:出典1)

勾配の式にあてはめて計算しましょう。

1/Fの形で答えよという指示ですので、
分子・分母をそれぞれ、÷3910しましょう。

なお、分母Fは10刻みとの指示ですので、
127.877…の一の位を四捨五入し、Fは130です。

(下段)地上の前線帯の幅は?

また、10刻みで求めたFと①の解答を基に、地上における前線帯の水平幅を10km刻みで答えよ。

(一財)気象業務支援センターの掲載許可済

いったい、どこのことを問われているのでしょうか?

(前線記号:出典1)

転移層(前線帯)の水平方向の幅、
上の図でいうxの数値を聞かれています。

そして、勾配は先ほど求めたとおり1/130、
転移層の厚さは①で求めたとおり240mとの条件です。

うーん。どうしたら水平方向の幅xが導出できるでしょうか・・・

ここでも超重要なのが、やはり、勾配の定義です。

今回、水平方向の幅(距離)を聞かれていますので、
上の定義式を、次のとおり式変形します。

この式に数値を代入すると、次のとおりになります。

10km刻みとの指示ですので、31.2kmの一の位を四捨五入して、
解答は30kmです。

まとめ

いかがでしたか?(^▽^)/

皆さまの中には、「勾配ってなんか難しそうだから、捨てよう」と
判断されている方もいらっしゃると思います。
(私もそうでした💦)

でも、勾配の定義をしっかりおさえれば、
意外と難しくありません。

また、勾配の問題はだいたいこんな感じで出題されますので、
一度マスターすれば、次は無敵です!

あきらめず、こういう問題で周りと差をつけましょう!

出典など

出典1:気象庁「気象庁|予想天気図の説明」(https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/kurashi/FSAS_kaisetu.html)から抜粋して作成

※ 本記事における解答や解法は、個人の見解であり、(一財)気象業務支援センターとは関係ありません。