熱的低気圧なんて聞いたことない【第59回-専門-問11 気象予報士試験の解説】
第59回気象予報士試験の専門知識を解説していきます。
全ての記事を無料で公開します。
1人でも多くの人に、気象について興味を持ってもらえたらうれしいです。
問題
熱的低気圧なんて聞いたことがない
熱的低気圧とは何でしょうか?
あまり聞きなれない言葉ですね…!
気象庁は次のとおり定義しています。
確かに、このとおりの定義なのですが、
私は、試験勉強で「熱的低気圧」を聞いたことがありません。
ただ、私は(a)を見た瞬間、海陸風とかの話ではないかと察しました。
(a)熱的低気圧とは → 正
この記述を見て、海陸風を想像します。
そして、記述は正しそうです。
下の図に、春や夏の昼間を超ざっくり描いてみました。
すなわち、日射が強い季節・時間帯の状況です。
陸上に低気圧マーク「低」を描いています。
なぜなのか、超ざっくり言うと次のメカニズムです。
0 そもそも、陸上(内陸部)は、海上よりも比熱、
すなわち温度を上げるために必要なエネルギーが小さいです。
したがって、内陸部は海上よりもすぐに温まります。
1 晴れた日の昼間で、強い日射が発生します。
2 日射が強い晴れた日の昼間は、
特に内陸部で地表面が温められます。
3 すると、内陸部の地表面に接する空気が温められ、
密度が小さく、空気が軽くなります。
4 周囲より軽くなった空気は、まるで熱気球のように、
ぷかぷかと浮いていきます(上昇気流の発生)。
5 内陸部の地表面付近に、浮いてしまった分の空気を周囲から補うため、
海などから風が吹きます(海風の発生)。
6 内陸部の地表面付近に注目すると、
周囲からの空気を集めていることがわかります(低気圧の発生)。
このように、太陽の強い日射をきっかけに、
内陸部に風が集中し、低気圧が生じます。
(b)低気圧の発生する高度・式による表現 → 正
問題文のとおりです。
低気圧が発生しているのは、下層だけです。
先に確認したように、低気圧の発生要因が、
上昇気流で上昇した分の空気を地表で集めるのは地表付近だけであるためです。
また、気圧低下量と気温上昇量の関係も、
気体の状態方程式P=ρRTと、
静力学平衡の式ΔP=−ρgΔZの2式で表現することができます。
(c)山谷風の特徴 → 正
問題文のとおりです。
谷風とは、何だったでしょうか?
これを図にすると、次のとおりです。
超ざっくりと、メカニズムを見てみましょう。
0 そもそも、山肌(地面)と、そのすぐそばにある空気は、
地面から遠い場所にある空気よりも温まりやすいです。
1 晴れた日の日射により、山肌が温められます。
2 山肌に接した空気も温められて軽くなり、上昇します。
3 上昇したためにその場からなくなった空気を、
山麓にある谷や盆地から補います。=谷風の補償流
4 山麓の谷や盆地では、上空から下降気流で空気を補います。
このとき、空気は下降してくるので、空気は断熱昇温します。
まとめ
以上の検討を踏まえると、解答は①です。
いかがでしたか?
今回は海陸風、山谷風の問題でした。
どちらも、海面と陸の地面、山の斜面に近い空気と遠い空気の、
温まりやすさがそれぞれ違うことで発生する点を理解しましょう。
また、気体の状態方程式と静力学平衡の式については、
また改めて取り上げたいと思います。
出典など
出典1:気象庁「気象庁|予報用語 気圧・高気圧・低気圧に関する用語」
(https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/yougo_hp/haichi1.html)から抜粋して作成
出典2:猪熊隆之,2011,『山岳気象大全』山と渓谷社
※ 本記事における解答や解法は、個人の見解であり、(一財)気象業務支援センターとは関係ありません。