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積雪"変質"モデルを知ろう!【第59回-専門-問7 気象予報士試験の解説】

第59回気象予報士試験の専門知識を解説していきます。
全ての記事を無料で公開します。
1人でも多くの人に、気象について興味を持ってもらえたらうれしいです。


問題

問7 気象庁が作成している解析積雪深・解析降雪量について述べた次の文章の中の下線部(a)〜(d)の正誤について、下記の①〜⑤の中から正しいものを1つ選べ。

 解析積雪深は、解析雨量や数値予報モデルの気温や日射量などを積雪変質モデルに与えて積雪の深さを計算し、(a)アメダスの積雪深計の観測値で補正することにより作成される。積雪変質モデルでは、新たに積もる雪の量、とける雪の量を計算することで積雪の深さを求めており、(b)時間の経過とともに積雪が沈み込む深さは計算されていない。また、解析降雪量は、(c)解析積雪深が1時間に増加した量を1時間降雪量(cm)として算出しており、解析積雪深が減少した場合の1時間降雪量は0cmとしている。
 解析積雪深・解析降雪量は(d)約5km四方の平均的な値のため、これより狭い局地的な降雪の多寡は表現できない。

(一財)気象業務支援センターの掲載許可済

(a)観測値での補正有無 → 正

(a)アメダスの積雪深計の観測値で補正することにより作成される。

(一財)気象業務支援センターの掲載許可済

気象庁HPでは、次のとおり解説されています。

解析積雪深は、解析雨量や局地数値予報モデル(LFM)などの降水量、気温、日射量などを積雪変質モデルに与えて積雪の深さを計算した後、アメダスの積雪計の観測値で補正することにより作成されます。

(出典1)

要するに、まずは、積雪変質モデルを搭載したコンピューター上で、
実際に見込まれる降水や気温、日射を再現した上で、
現在の積雪の深さを予測計算します。

しかし、そのままでは予測誤差が大きいので、
アメダスの積雪深計で実際に観測した値に近づくよう、
計算で求めた値を補正します。

(b)積雪の沈み込みの考慮 → 誤

(b)時間の経過とともに積雪が沈み込む深さは計算されていない。

(一財)気象業務支援センターの掲載許可済

気象庁HPでは、次のとおり解説されています。

積雪変質モデルでは、新たに積もる雪の量、とける雪の量、時間の経過により積雪が沈み込む深さ等を計算することで積雪の深さを求めます。

(出典1)

このように、積雪変質モデルを搭載したコンピューターは、
単に、雪が空から降ってきて積もる、
あるいは、雪がとけて流出することを計算するだけでなく、

すでに積もっている雪の沈み込みなど、
積雪自体の変質も計算します。

(c)積雪深の推移の考え方 → 正

(c)解析積雪深が1時間に増加した量を1時間降雪量(cm)として算出しており、解析積雪深が減少した場合の1時間降雪量は0cmとしている。

(一財)気象業務支援センターの掲載許可済

気象庁HPでは、次のとおり解説されています。

解析降雪量は、解析積雪深が1時間に増加した量を1時間降雪量として作成します。
例えば、9時の解析降雪量は解析積雪深が8時から9時までに増加した量となります。
なお、解析積雪深が減少した場合は0となります。

(出典1)

積雪深と降雪量の2つの要素があって、
ややこしいかもしれません。

ざっくり言うと、
積雪深とは、ある時点における積雪の厚み
降雪量とは、ある時間における積雪深の増加量
降雪量は負の値をとらず、必ず0以上である。

したがって、積雪深が減少した場合の降雪量は、
負の値でも正の値でもなく、0cmです。

(d)格子間隔は約5kmか → 正

(d)約5km四方の平均的な値

(一財)気象業務支援センターの掲載許可済

解析積雪深・解析降雪量は、
約5km四方のメッシュで計算・発表されています。

メソモデルと同じですね!


まとめ

以上の検討を踏まえると、解答は②です。

いかがでしたか?

今回は、(b)の誤りを一本釣りしても良さそうです。
だって、「積雪変質モデル」なのに、
雪が沈み込むという「変質」を計算しないって、
変ですよねっ!(⸝⸝⸝´
`⸝⸝⸝)

出典など

出典1:気象庁「気象庁|解析積雪深・解析降雪量、降雪短時間予報」(https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/kurashi/snow.html)から抜粋して作成

※ 本記事における解答や解法は、個人の見解であり、(一財)気象業務支援センターとは関係ありません。