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赤外画像と可視画像は違う!特徴をマスター!【第59回-専門-問9 気象予報士試験の解説】

第59回気象予報士試験の専門知識を解説していきます。
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1人でも多くの人に、気象について興味を持ってもらえたらうれしいです。


問題

問9 図は6月のある日の午前9時に観測された気象衛星の可視画像(上)・赤外画像(下)および、その時の地上天気図である。図にA~Dで示した各領域で見られる雲域について述べた次の文(a)〜(d)の正誤について、下記の①〜⑤の中から正しいものを1つ選べ。

(a) 領域Aの雲域は、地上低気圧の進行方向前面に位置し、可視画像では灰白色に見え、赤外画像では灰色であることから、中層雲あるいは中・下層雲と考えられる。

(b) 領域Bには、可視画像では灰色の雲域が見え、赤外画像では暗い領域として表現されているので、この雲域は霧または層雲である。

(c) 領域Cは、地上天気図で停滞前線の南側に位置し、可視画像では灰白色だが、赤外画像では白く輝く団塊状の雲域が見られることから、この雲域は発達した積乱雲である。

(d) 領域Dには、中国山地を発生源とする地形性の巻雲がへのびている。

(一財)気象業務支援センターの掲載許可済
(一財)気象業務支援センターの掲載許可済

画像輝度の特徴を復習しよう

気象予報士試験では、

  • 赤外画像

  • 可視画像

  • 水蒸気画像

における、画像の輝度や形状について、主に問われます。

今回は、赤外画像と可視画像の、画像輝度の読み方について復習しましょう。

それぞれの画像における明るさの特徴

上の表のとおり、そもそも2つの画像では表しているものが全く異なります。

わかりやすいのが可視画像です。
分厚い雲は、太陽光を地上に届けず宇宙に跳ね返すので、衛星ではまぶしく見えます。
一方で薄い雲は、その逆なのでも、衛星ではうっすらと見えるわけですね。
また、太陽の光がない夜には、真っ暗で観測できません。

可視画像は、私たちの目と同様の仕組みです。
私たちも、太陽やLEDなどの光源から出た光が物に当たって、
反射した光を目で処理しています。

しかし、赤外画像は可視画像と全く異なります。
赤外画像は、地球の表面の温度を示しています。

地球の表面とは、雲がある部分は雲の頂上(雲頂)、
雲がない部分は地表面(草地や水面)のことです。

そうした地球の表面温度を観測して、
温度が低い部分は白く、温度が高い部分は黒く表現するよう、

描画プログラムを人間が勝手に設定しています。

(a)中層・下層雲の判断 → 正

(a) 領域Aの雲域は、地上低気圧の進行方向前面に位置し、可視画像では灰白色に見え、赤外画像では灰色であることから、中層雲あるいは中・下層雲と考えられる。

(一財)気象業務支援センターの掲載許可済

問題文のとおりです。

可視画像では「灰白色」の雲域だそうです。
したがって、雲は、全層に広がっていなくても、
そこそこの厚みがありそうです。

一方で、赤外画像では「灰色」の雲域だそうで、暗めです。
暗くてほとんど写らないくらいであれば、雲頂は地上付近と判断しますが、
多少は写っているので、この雲は中層雲や中・下層雲と考えていいでしょう。

(b)霧または層雲の判断 → 正

(b) 領域Bには、可視画像では灰色の雲域が見え、赤外画像では暗い領域として表現されているので、この雲域は霧または層雲である。

(一財)気象業務支援センターの掲載許可済

問題文のとおりです。

可視画像では「灰色」の雲域だそうで、確かに雲は存在します。

にもかかわらず、赤外画像で「暗く」、ほとんど写っていません。

したがって、雲頂の温度は地表面とほぼ同一なので、
この雲は霧または層雲と判断します。

(c)積乱雲の判断 → 正

(c) 領域Cは、地上天気図で停滞前線の南側に位置し、可視画像では灰白色だが、赤外画像では白く輝く団塊状の雲域が見られることから、この雲域は発達した積乱雲である。

(一財)気象業務支援センターの掲載許可済

問題文のとおりです。

可視画像では「灰白色」だそうで、しっかり写っている印象です。
したがって、ある程度の厚みがありそうです。

また、赤外画像では「白く輝く」、「団塊状」だそうです。
この文言が来たら、雲頂が上層まで達した積乱雲、一択です。

(d)上層雲の成因の判断 →誤

(d) 領域Dには、中国山地を発生源とする地形性の巻雲がへのびている。

(一財)気象業務支援センターの掲載許可済

この雲は、確かに巻雲ですが、
地形性ではなく上層のジェット気流によるものです。

可視画像では色が暗めで、雲は薄そうです。
一方で、赤外画像では明るめで、雲頂は上層にありそうです。
まとめると、上層の薄い雲=巻雲とは言えそうです。

しかし、地形性ではなさそうです。
そもそも地形性巻雲とは、気象衛星センター(出典1)によると…

山脈の風下側に発生する停滞性の上層雲を「地形性巻雲」と呼ぶ。
地形性巻雲は赤外画像では白く表示され、風上側の雲縁が山脈と平行な直線状となり、風下側に長く伸びる。

(出典1)

地形性巻雲では、風上側(風が吹いてくる方向)において、
雲の縁(ふち)が、山脈と平行にできる特徴があります。
例えば、南北に連なる奥羽山脈に、西風が吹いた場合の赤外画像は次のとおりです。

奥羽山脈に沿って発生した地形性巻雲(出典1)

本問では、そうした特徴は見られませんので、誤となります。


まとめ

以上の検討を踏まえると、解答は④です。

いかがでしたか?

私は、この分野、慣れるまであまり得意ではありませんでした。

理解する上で一番ポイントになるのは、赤外画像と可視画像は全く別物だということです。

  • 可視画像は、太陽光の反射の強さを捉えるので、雲の厚みがわかる。

  • 赤外画像は、地球表面の温度を捉えるので、雲頂の温度(高度)、地面の温度がわかる。

出典など

出典1:気象庁「気象衛星センター | 地形性巻雲」
(https://www.data.jma.go.jp/mscweb/ja/prod/pattern_03.html)から抜粋して作成

※ 本記事における解答や解法は、個人の見解であり、(一財)気象業務支援センターとは関係ありません。