前線を引こう!【第59回-実技1-問2(3) 気象予報士試験の解説】
第59回気象予報士試験の実技1を解説していきます。
全ての記事を無料で公開します。
1人でも多くの人に、気象について興味を持ってもらえたらうれしいです。
問題
解答図にはLマークが2つ描いてあります。
今回注目するのは、紀伊半島のほうです。
日本海のほうは無視で大丈夫ですので、お間違いなく。
何に基づいて前線を引こう?
寒冷前線と温暖前線を引くことになりますが、
何に基づくといいのでしょうか?
一般に、前線を引く問題では、
850hPa相当温位の分布図や、850hPa気温の分布図が与えられて、
850hPaの等相当温位線集中帯や850hPa等温線集中帯の南縁を、「850hPa面の前線」(※)とするのが基本です。
そのうえで、風向風速の水平シアや、上昇流域の分布、地上の気圧の谷にも注意しながら、前線の位置を確定させます。
なお、地上の前線を作図する場合は、緯度数度ぶん、暖気側にずらして描きます。
※前線は定義上、地上にしか存在しません。「850hPa面の前線」という言い回しは、850hPaでの前線面の位置を意味しています。
850hPaの前線位置について、参考書では次の記述です。
したがって、今回の作戦は、次のとおりです。
まず、図7(上)の相当温位線や、風向・風速から、「850hPa面の前線」を引く。
次に、図5(下)で地上の気圧の谷を通るよう、前線を引く。
なお、今回は閉塞前線を描かないので、閉塞点は解析せず、
紀伊半島の低気圧中心から2本の前線をのばすイメージでよいと思います。
寒冷前線は?
まず、寒冷前線からみてみましょう。
850hPaの等相当温位線集中帯が、紀伊半島の南海上にあるとハッキリわかります。
紀伊半島の低気圧から集中帯の南縁をたどると、はじめは南縁が315K付近。
低気圧から離れるにつれて、南縁は318K、321K、324Kとなります。
この南縁をたどった線を、「850hPa面の前線」とします。
そして、地上の前線を描くため、解答図では次の点を意識します。
地上の前線は、「850hPa面の前線」より少し暖気側にずらす。
前線が地上の気圧の谷を通るように、位置を微調整して引く。
温暖前線は?
温暖前線は少し難しいかもしれません。
というのも、等相当温位線315Kが東海道沖でグネグネしており、
どこが等相当温位線の集中帯なのか、すぐにはわからないからです。
等相当温位線の南縁は、315K線なのでしょうか?
その北側の312K線なのでしょうか?
そこで、相当温位線だけでなく、風向にも注目してみましょう。
すると、南縁は312K線と判断できます。
というのも、312K線と315K線の間(静岡県付近)は、東海道沖と同様に南西風。
312K線の北側(長野県付近)は、東海道沖と違って南東風になっており、
312K線を境に、風向の水平シアーがあるからです。
こうして、312K線を「850hPa面の前線」とし、
地上前線は先ほど同様、少し暖気側にずらして描きます。
なお、問題文にしたがって、前線は解答図の枠線までのばしましょう。
まとめ
いかがでしたか?😁
この前線の作図問題は、配点が6点もあります!( ゚Д゚)
「作図苦手で絶対ムリだ~」なんて言わず、
判断の根拠を持ちながら、1点でも狙っていきましょう!
出典など
出典1:気象予報士試験受験支援会,[2012]2020,『らくらく突破気象予報士かんたん合格テキスト〈実技編〉』技術評論社
※ 本記事における解答や解法は、個人の見解であり、(一財)気象業務支援センターとは関係ありません。