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前線を引こう!【第59回-実技1-問2(3) 気象予報士試験の解説】

第59回気象予報士試験の実技1を解説していきます。
全ての記事を無料で公開します。
1人でも多くの人に、気象について興味を持ってもらえたらうれしいです。

問題

(3) 図5(下)を用い、図7(上)を参考にして、18日9時に紀伊半島付近に予想される地上低気圧に伴う温暖前線と寒冷前線を、前線記号を用いて解答図に記入せよ。ただし、前線は解答図の枠線までのびているものとする。

(一財)気象業務支援センターの掲載許可済
図5(下)
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図7(上)
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解答図
(一財)気象業務支援センターの掲載許可済

解答図にはLマークが2つ描いてあります。
今回注目するのは、紀伊半島のほうです。
日本海のほうは無視で大丈夫ですので、お間違いなく。

何に基づいて前線を引こう?

寒冷前線と温暖前線を引くことになりますが、
何に基づくといいのでしょうか?

一般に、前線を引く問題では、

  1. 850hPa相当温位の分布図や、850hPa気温の分布図が与えられて、

  2. 850hPaの等相当温位線集中帯や850hPa等温線集中帯の南縁を、「850hPa面の前線」(※)とするのが基本です。

  3. そのうえで、風向風速の水平シアや、上昇流域の分布、地上の気圧の谷にも注意しながら、前線の位置を確定させます。

  4. なお、地上の前線を作図する場合は、緯度数度ぶん、暖気側にずらして描きます。

※前線は定義上、地上にしか存在しません。「850hPa面の前線」という言い回しは、850hPaでの前線面の位置を意味しています。

850hPaの前線位置について、参考書では次の記述です。

等相当温位線集中帯の南縁付近や等温線集中帯の南縁付近です。まずこれが気象学的鉄則です。そして多くの場合に前線付近は、風の水平シアが明瞭ですが、一部の事例や温暖前線では不明瞭なこともあります。
その場合は等相当温位線集中帯の南縁付近や等温線集中帯の南縁付近を優先して850hPaの前線位置を決定します。また、その他の資料(700hPa鉛直p速度が負の部分である上昇流域、地上等圧線の気圧の谷部分、地上風の収束域)との対応があれば正しい前線位置と確認できます。

(出典1:気象予報士試験受験支援会 [2012]2020:121)

したがって、今回の作戦は、次のとおりです。

  1. まず、図7(上)の相当温位線や、風向・風速から、「850hPa面の前線」を引く。

  2. 次に、図5(下)で地上の気圧の谷を通るよう、前線を引く。

なお、今回は閉塞前線を描かないので、閉塞点は解析せず、
紀伊半島の低気圧中心から2本の前線をのばすイメージでよいと思います。

寒冷前線は?

まず、寒冷前線からみてみましょう。

図7(上)
(一財)気象業務支援センターの掲載許可済

850hPaの等相当温位線集中帯が、紀伊半島の南海上にあるとハッキリわかります。

紀伊半島の低気圧から集中帯の南縁をたどると、はじめは南縁が315K付近。
低気圧から離れるにつれて、南縁は318K、321K、324K
となります。

この南縁をたどった線を、「850hPa面の前線」とします。

そして、地上の前線を描くため、解答図では次の点を意識します。

  1. 地上の前線は、「850hPa面の前線」より少し暖気側にずらす。

  2. 前線が地上の気圧の谷を通るように、位置を微調整して引く。

温暖前線は?

温暖前線は少し難しいかもしれません。

というのも、等相当温位線315Kが東海道沖でグネグネしており、
どこが等相当温位線の集中帯なのか、すぐにはわからないからです。

等相当温位線の南縁は、315K線なのでしょうか?
その北側の312K線なのでしょうか?

そこで、相当温位線だけでなく、風向にも注目してみましょう。
すると、南縁は312K線と判断できます。

というのも、312K線と315K線の間(静岡県付近)は、東海道沖と同様に南西風。
312K線の北側(長野県付近)は、東海道沖と違って南東風になっており、
312K線を境に、風向の水平シアーがあるからです。

こうして、312K線を「850hPa面の前線」とし、
地上前線は先ほど同様、少し暖気側にずらして描きます。

なお、問題文にしたがって、前線は解答図の枠線までのばしましょう。

解答例
(一財)気象業務支援センターの掲載許可済

まとめ

いかがでしたか?😁

この前線の作図問題は、配点が6点もあります!( ゚Д゚)

「作図苦手で絶対ムリだ~」なんて言わず、
判断の根拠を持ちながら、1点でも狙っていきましょう!

出典など

出典1:気象予報士試験受験支援会,[2012]2020,『らくらく突破気象予報士かんたん合格テキスト〈実技編〉』技術評論社

※ 本記事における解答や解法は、個人の見解であり、(一財)気象業務支援センターとは関係ありません。