見出し画像

予報精度の評価といえばクロス集計【第59回-専門-問14 気象予報士試験の解説】

第59回気象予報士試験の専門知識を解説していきます。
全ての記事を無料で公開します。
1人でも多くの人に、気象について興味を持ってもらえたらうれしいです。


問題

問14 表はある期間の予報区A、Bにおける、1mm以上の降水の有無の予報、降水の確率予報および実況を示したものである。これらの予報の評価について述べた次の文(a)~(c)の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の①〜⑤の中から1つ選べ。ただし、実況の、「降水あり(●)」は予報区内のすべての地点で降水(1mm以上)があったものとし、「降水なし(○)」は予報区内のすべての地点で降水(1mm 以上)がなかったものとする。

(a) この期間の降水の有無の適中率は、予報区Bの方が予報区Aより高い。

(b) この期間の降水ありの予報のスレットスコアは、予報区Aと予報区Bで同じである。

(c) この期間の降水確率予報をブライアスコアを使って評価すると、予報区Bの方が予報区A より予報精度が高い。

(一財)気象業務支援センターの掲載許可済
(一財)気象業務支援センターの掲載許可済

予報・実況のクロス集計をしておこう

難しい問題ではありません。

精度評価の問題が出たら、すぐにクロス集計を作りましょう。

●が降水あり、○が降水なしであることに注意すると、
次のとおりになります。

各予報区でのクロス集計

(a)適中率 → 正

(a) この期間の降水の有無の適中率は、予報区Bの方が予報区Aより高い。

(一財)気象業務支援センターの掲載許可済

問題文のとおりです。

適中率とは、「全体のうち、予想したとおりになった率」のことです。

「予想したとおりになった」とは、次の場合です。

  • 予想では「現象あり」、かつ、実際は「現象あり」=ありあり

  • 予想では「現象なし」、かつ、実際は「現象なし」=なしなし

作ったクロス集計をみると、全7日間のうち、

予報区A:ありあり3(黄色セル)、なしなし1(緑色セル)
予報区B:ありあり2(黄色セル)、なしなし3(緑色セル)

で、予報区Bのほうが、「予想したとおりになった」回数が多いです。

蛇足ながら、率も出しておくと、

予報区A: (3+1)/7=0.57
予報区B: (2+3)/7=0.71

したがって、予報区Bのほうが、適中率は高いです。

(b)スレットスコア → 正

(b) この期間の降水ありの予報のスレットスコアは、予報区Aと予報区Bで同じである。

(一財)気象業務支援センターの掲載許可済

問題文のとおりです。

そもそも、スレットスコアとは何でしょうか?

天気や気象現象において、ごくまれにしか起きないような現象の適中率評価法

(出典1:気象予報士試験受験支援会 2020:403)

スレットスコアは、砂漠地帯で雨という予報、日本では冬季に太平洋側の地方では乾燥した晴天が続きやすく、同地方で降水が起きる予報などに適した評価法です。

(出典1:気象予報士試験受験支援会 2020:404)

スレットスコアは、基本的に、適中率のことです。

しかし、従来の適中率には弱点があります。
例えば、砂漠地帯で雨が降ることは少ないので、
予報で「降水なし」、実況で「降水なし」というケースが大半です。

毎日「降水なし」とテキトーに予報していても、
適中率は高く出てしまいます。

そこで、スレットスコアでは、当たり前の現象を排除し、
まれな状況を残して評価します。

具体的には、砂漠地帯で雨なしの予報、実際も雨が降らないという現象。
クロス集計でいう、Dが当たり前の現象です。

そこで、適中率の計算からDを排除し、
スレットスコア=A/(A+B+C)
と計算します。

今回の場合、スレットスコアは、予報区A・Bで一致します。

予報区A:3/(3+1+2)=0.5
予報区B:2/(2+1+1)=0.5

(c)ブライアスコア → 誤

(c) この期間の降水確率予報をブライアスコアを使って評価すると、予報区Bの方が予報区A より予報精度が高い。

(一財)気象業務支援センターの掲載許可済

ブライアスコアは、降水確率の精度を評価するのに使われます。

  1. 降水確率を小数にする

  2. 降水があった場合を1、なかった場合を0とし、実況を把握する

  3. 降水確率と実況の差をとる

  4. 差の正負を無視するため、差を2乗する

  5. 2乗の差の計を算出し、予報回数で割る=ブライアスコア

手順どおり進めると、予報区AもBも、同じスコアになります。

まとめ

以上の検討を踏まえると、解答は②です。

いかがでしたか?(*^_^*)

この分野は、「スレット」とか「ブライア」とか
カタカナのことばがややこしいですね・・・!

しかし、問われることは基本的で、
点数稼ぎがしやすい分野ですので、確実にマスターしましょう!

出典など

出典1:気象予報士試験受験支援会,2020,『気象予報士かんたん合格テキスト〈学科専門知識編〉』技術評論社

※ 本記事における解答や解法は、個人の見解であり、(一財)気象業務支援センターとは関係ありません。