見出し画像

BUMP OF CHICKENとRADWIMPSから見る宗教の違い

※全文公開です。おひねりをいただければ幸いです。日々精進していきます。


BUMP OF CHICKENとRADWIMPS


BUMP OF CHICKENとRADWIMPSはよく似ていると言われています。
(以下、バンプとラッドに略します)

後発であったラッドは、バンプの「パクリ」と揶揄されたりもします。

たしかに、なんだか似ているような、似ていないような。
そんなふわふわした感じを見受けられますよね。

どのような類似性があるのか、簡単に分析してみようかと思います。


歌詞の特徴


まずは、人気の曲TOP10をネットの検索上位から抽出してみました。

バンプとラッドの人気曲、20曲の分析はさすがに長くなりすぎるので、
こちらで分析しやすいものをいくつかピックアップしました。

それではさっそく、バンプの歌詞をいくつか見てみましょう。



心臓が始まったとき いやでも人は場所をとる
奪われないように 守り続けてる
・・・
くたびれた理由が重なって揺れるとき 生まれた意味を知る
バンプ 「カルマ」

「怖かったら叫んでほしい すぐ隣にいるんだと知らせてほしい
震えた体で抱き合って一人じゃないんだと教えてほしい
あの日のように笑えなくていい
だってずっとその体で生きてきたんでしょう」
バンプ 「ゼロ」
「いろいろと難しくて 続けること以外で
生きていること 確かめられない
・・・
諦めたこと 黄金の覚悟
・・・
傷は輝く」
バンプ「firefly」


基本的には、

「そのままのあなたでいい。傷もまるごと引き受けよう」
という人間賛歌の歌詞が多いですね。

夢に破れて、失望し、現実がどうしようもなく見えるけど、
それでもなお世界は美しいし、あなたも素晴らしいという世界観。

誰もが傷心している時代において、
歌詞の前半で「あなたは傷ついているよね」ということを述べ、
そのあとに、その傷にどれだけの意味があるのかを教えてくれて、
勇気を出して歩んでいこうと、励まし救済してくれる。

バンプの人気と言われる歌は
このような構成を取っているものが多いですね。


一方、ラッドはどうかというと、

あなたといる意味を探したら 明日を生きる答えになったよ
明日を生きる意味を探したら あなたといる答えになったよ

ラッド 「いいんですか」
君と僕とが出会えた 奇跡を信じてみたいんだ
君と僕とが出会えたことが奇跡だろうとなんだろうと ただありがとう

ラッド 「ふたりごと」
だって君は世界初の肉眼で確認できる愛
地上で唯一出会える神様
・・・
この心臓に君がいるんだよ 全身に向け脈を打つんだよ
今日も生きて 今日も生きて そして今のままでいてと

ラッド 「有心論」

以上のように、


ラッドは、好きな相手を文字通り「神」に仕立て上げて、
そこからどういう信仰をするのかというところに歌詞の特徴があります。

(特にラッドの最初期はその傾向が強かったです。現在についてはまた別の機会に)


両者の特徴は宗教性にある


さて、両者の比較を考えたとき、
ラッドの信仰の仕方はさながら、
キリスト教のカトリックのように感じました。


地上で唯一出会える神様、とまではいきませんが、
カトリックでは、ローマ教皇をトップとする教義を教える者たちがいます。


基本的には、信者たちは街の神父のありがたいお説教を聞いて、
その教義に沿って生きるのです。

ラッドは、まさに「君」という教義に沿って生きる、
私は対象に依存しています。



一方で、バンプはプロテスタント的だと言えます。

プロテスタントは、
1517年

ルターがカトリックに対して
改革を迫ったことから生じた宗派です。

プロテスタントは抗議者、という意味ですね。

その改革は大きな戦争を引き起こしながらも、
宗派として確立していきました。

その大きな特徴は、神父を信じるのではなく、
聖書を自分できちんと読み込んで信仰しようというものでした。

これは、結局、自分の中の「神」と話し合う、
つまり自問自答を繰り返すことになります。

世界に対しての意味は自分で見出すしかないのです。

バンプの言う通り、傷にも意味があるのかもしれません。
その意味を見出すための勇気を、心の中の神からもらうのです。


宗教の時代から自律した個人の時代へ


自分で世界の意味を見出す

こんな難しいことを、なぜプロテスタントはしようと思ったのでしょうか


実は、初期のプロテスタントはそんなこと考えていませんでした。

たとえば、

プロテスタントのカルヴァン派という一派は、

予定説というものを唱えました。

その説とは、


神に救済されている人はあらかじめ決まっており、

現世でどれだけ善行を積んだかということは関係ない

という説です



そういう意味では、自分では本来人生の意味を見出すことはできません。

なぜなら、神の考えることは神にしかわからないからです。


しかしながら、信者は、
「いや、勤勉に働いて、それでいい結果がでれば、
それは神から救済されるべき選ばれた人間の証拠になる
と考え、


勤勉革命ともいうべき働き方へと変わっていきました。

この発想から、

信仰しているにもかかわらず
自分で考えて、
行動するという近代人としての発想が生じてきたのです。


恋愛は宗教的

バンプとラッドは、どちらもカルト的な人気がありますが、
その救済方法は、宗派による違いともいえるものでした。

近代人は宗教から逃れ、脱魔術化した社会を生きているため、
救済がなくなり精神病になりやすいと言われていますが、

その救済の一つとなっている音楽に、
宗教性が潜んでいるというのは面白い発見でしょう。


身もふたもないことを言えば、
もともと、恋愛は近代において救済として使われることも多いので、
どのラブソングも宗教性を帯びているといえば帯びているのですが、
今回はご愛嬌ということで。

近代人の恋愛に対する執着心や、求めていたものについては、この本がわかりやすくてお勧めです。いつか書評でも書こうかな。


補論

補論として、他の歌詞を一部載せておきます。





ランプ

「僕は君自身だよ 自分が信じられないのかい?」
・・・
落としたモノ 失くした類 探す道を歩ける勇気

バンプ 「ランプ」
愛されたくてほえて 愛されることにおびえて
逃げ込んだ檻 その瞬間から引きずり出してやる
汚れたって受け止めろ 世界は自分のもんだ
かまわないからその姿で生きるべきなんだよ
それもすべて気が狂うほど まともな日常
望んだんだ 選んだんだ「仕事ではない」わかっていた

バンプ 「ギルド」

ゆめならどこかに落としてきた
希望とはるかな距離を置いた
・・・
うなだれた僕の目が捉えたのは水たまりの中の小さな芽新しい目
生きていく意味とまた出会えた 自分の価値が今生まれた
・・・
僕の中でゆれるなら 折れることなく揺れる ゆるぎない信念だろう

バンプ 「ハルジオン」


ご自分だけがヒーロー
世界の真ん中でわるまで出ずっぱり
ステージの上 どうしよう 空っぽの振りもできない
・・・
さあ目を開けて 君は強い人
その目が見たから すべては生まれた
選んだ色で塗った 世界に囲まれて
選べない傷の意味はどこだろう
怖いのはその価値を知っているから

バンプ 「ハローワールド」

ここから先は

0字

¥ 1,000

サポートしていただければ、書籍代・調査費・学会渡航費などに活用させていただきます!ごくたまに飼い猫に「ちゅーる」をあげたりもします。