精密採点Aiについて(表現技法編)

∀εです。本記事では精密採点Aiで必要となる知識のひとつである表現技法、その中でも特に「裏技法」などと呼ばれるものについて解説していきます。
本記事は「精密採点Aiについて(ボナカン編)」の付録としてのものになるため、裏技法に関する解説にとどまり、周辺的な解説は殆どしないことをご理解ください(当該記事は現在非公開です。相当する内容は以下のリンクからお読みください)。

また、本記事は2024/2/4現在未完成であり、適宜図の追加や加筆・修正が行われます。


0. 裏技法とは

裏技法とは、精密採点Aiで「表現力」として採点される表現技法のうちしゃくり、こぶし、フォール以外のもの、すなわちアイコンが表示されないものを指します。以下の8種類をはじめ、裏技法は大量に存在することが確認されています:

・V字アクセント
・逆V字アクセント
・L字アクセント
・フライダウン
・ハンマリング
・プリング
・スローダウン
・ヒーカップ

このうちアクセント3種にフライダウンを加えた4技法を「先頭族」、残り4技法からヒーカップを除いたものを「中央族」と呼ぶこととします。これは、検知された際にピンク線がバーのどこから出るかで命名されています。ヒーカップはバーの末端から線が出ますが、これ以外に末端からピンク線が出る技法は確認されていないので「末端族」とは言いません。ヒーカップ以外にもバーの末端からピンク線が出る技法が存在することが明らかになりましたが、諸事情により解説はしないこととします。

では、各技法の解説に移ります。概略、歌唱軌跡の一例、検知条件、検知させるためのコツの順に説明していきます。


1. V字アクセント


V字アクセントは、音程バーの始まりの部分で音程を一瞬、少しだけ下げる技法です。
歌唱軌跡は図のようになります。

図がショボいという文句は受け付けない

特許開示によると、検知される条件として
・ピッチが下降から上昇に転じる部分が存在すること
・上昇後ノーツの音程に近似していること
・ノート内で検出されたピッチの最低音とノーツの正解音の差が所定値以内であること
の3つがあります。ピッチ変動がかなり小さくても検出される(逆に大げさだと検知されないことも多い)ので、特に何も意識しなくても検出されることがあります。また特開の別の部分によると、ノーツが始まってからピッチの下降を開始させた方が検知されやすくなるようです。
そのうえで、技法を入れる際は「小さめのしゃくりをバーの先頭に対して一瞬遅く入れる」ことをイメージするとよいと思います。また、発声方法にもよりますが、母音を少し大きめに発声すると検知されやすいようです。


2.逆V字アクセント


逆V字アクセントは、音程バーの始まりの部分で音程を一瞬、少しだけ上げる技法です。
歌唱軌跡は図のようになります。

特許開示によると、検知される条件として
・ノーツ長が一定時間以上であること
・上昇区間が存在すること
・(短い)水平区間が存在すること
・上昇区間と下降区間の時間長が、ノーツの時間に対して一定割合以下である
の4つがあります。V字アクセントと異なり、こちらはノーツが始まるタイミングより少し前から上昇区間が始まっても、上昇区間がノーツと重なる部分があれば問題なく検知されると考えられます。ノーツが始まってからの方が無難と思われますが…
そのうえで、技法を入れる際は「小さめのこぶしをバーの先頭に合わせて入れる」ことをイメージするとよいと思います。


3.L字アクセント


L字アクセントは、音程バーの先頭で正解音より高い音から発声し、正解音まで急激に下げる技法です。歌唱軌跡は図のようになります。

特許開示によると、検知される条件として
・下降区間が存在すること
・(短い)水平区間が存在すること
の2つがあります。このほかに、下降区間のあと上昇区間が少し存在してもいいようです。
検知させるためには必ずしもノートの開始タイミングで発声を切る必要はなく、連続的にピッチを上昇させて、そこから落としても問題ないと考えられます。そのため連続バーでこの技法を使う場合はヒーカップと併発することが多いです。L字アクセントを入れる際、正解音からどのくらい上のピッチから入ればよいかということは正確にはわかりません。しかし判定されてしまえばL字だろうが逆V字だろうが加点は入るので、超上級者になるまではあまり気にしなくて良いとも思っています。
技法を入れる際は「バーの先頭で一瞬喉を裏返す」「バーの先頭で大きめのこぶしを入れる」などの意識を持つとよいです。フレーズの最初のバーで練習してみるとよいと思います。


4.フライダウン


フライダウンは、正解音より少し高めの音で発声をはじめ、徐々に正解音に下げていくという技法です。歌唱軌跡は次のようになります。

前のバーの音程から繋げなくとも問題ない

特許開示によると、検知される条件として
・ピッチが徐々に、一定以上下降する区間が存在すること
・(短い)水平区間が存在すること
の2つがあります。ノーツが始まってから下降を開始させると検知されやすいと思います。逆にノーツが始まる前に下降を開始してしまうと検知されず、安定性を下げるだけになってしまいます。また、「滑らかに」下げることを意識しましょう。


5.ハンマリング


ハンマリングは、正解音より低い音を発声し少し伸ばしたのち、正解音まで一気に音を上げる技法です。歌唱軌跡は次のようになります。

特許開示によると、検知される条件として
・2つの水平区間が存在すること
・上昇区間が存在すること
の2つがあります。1つ目の水平区間の始まりと2つ目の水平区間の終りはノーツ上にあってもなくても問題ありませんが、ノーツが終わる前に発声をやめてしまうとピンク線が飛ばなくなるようです。この場合でも、特許によれば検知自体はされています(表現力の加点につながっているかはわかりません)。
しゃくりとは異なり、正解音より低い音を「伸ばしてから」正解音に移ります。低い部分の音が徐々に上がったりしてしまうと検知されません。実際は低い部分の音はそこまで伸ばさなくても検知されますが、練習するときは少しばかり伸ばすことを意識してみましょう。
また、これはあくまで体感にすぎませんが、「正解音より低い音」は正解音との差が小さい方が検知されやすいです。ただ差が小さすぎても検知されませんので、半音程度のずれを意識してみてください。


6.プリング


プリングは音を伸ばしたのち、少し低い音に移る技法です。「正解音より高い音→正解音」「正解音→正解音より低い音」のどちらでも検知されます。歌唱軌跡は下のようになります。

どちらでも技法として検知される

特許開示によると、検知される条件として
・2つの水平区間が存在すること
・下降区間が存在すること
の2つがあります。ここまででお分かりいただけたと思いますが、プリングはハンマリングの音の推移が逆になったバージョンと考えることができます。したがって詳細はハンマリングとほぼ同じですので、ここでは割愛します。

これらの特許開示を具体的に読むとわかりますが、実はハンマリングとプリングは推移前、推移後のピッチがいずれも正解音でなかった場合も検知され、その後、音程正確率が正解音を入力した時のものに修正されます。


7.スローダウン


スローダウンは正解音より少し高い音でノーツに入り、連続的に音を下げ続ける技法です。歌唱軌跡は次のようになります。

正直ありえない

特許開示によると、検知される条件として
・発声開始から終了まで緩やかにピッチが下がり続けていること
・発声開始時と終了時のピッチ差が一定以下であること
・発声開始時のピッチと正解音の差が一定以下であること
の3つがあります。発声終了時のピッチは、正解音より低くなっている必要があります。
「正解音の少し上の音から緩やかに下げ続ける」ことを意識しましょう。最初のうちは長めのバーで練習するとよいと思います。結構短いバーでも検知されるので、習得して損はないでしょう。あまり実用的な技法ではありませんが、できると表現埋めがちょっと楽になるかもしれません。いや、なりません。多分。


8.ヒーカップ


ヒーカップは発声の終りの部分で音程を急激に上げる技法です。歌唱軌跡は次のようになります。

特許開示によると、検知される条件として
・短時間で急激にピッチが上昇する区間が存在する
・上昇区間の直前に水平区間が存在する
の2つがあります。厳密にはもう少し条件がありますが、おおむねこの2つが柱となっています。プリングと併発しますが、ハンマリングとは併発しません(内部では判定されているのかもしれませんが、ピンク線は全くと言っていいほど飛びません)。
技法を入れる際はバーの終りで声を裏返すことを意識するとよいです。いろいろなボーカリストの方がこっそり使っていますので、普段から曲を聴くときも意識してみるとイメージがつかみやすくなる…かもしれません。


9.裏技法にまつわる仕様(?)

【その1】
次の裏技法には、検知された場合に音程が正しかったことにする仕様があります:
・L字アクセント
・フライダウン
・ハンマリング
・プリング
・スローダウン

特許開示の言い分だと安定性なども回復するような雰囲気を感じますし、感触として実際そうなっていると思います。

【その2】
次の条件を満たすページにおいて、まれに同じ箇所から2回ピンク線/青線が飛ぶ現象が発生します:
・フレーズ終り
・音程バーが少ない
・次のフレーズまでの時間が短い

おそらく描画のバグであり、2回分技法がカウントされるようなことはないと思います。


10.実は


フライダウンは「先頭族」であるという記述をしましたが、実際のところ本当に先頭から線が出ているかどうかは疑わしいです。
先頭族であった場合、アクセントの誤検知と見分けがつきませんし、
中央族であった場合、プリングの誤検知と見分けがつきません。
また、「走り気味に発声を開始したバーで表現技法が検知された場合、1つ前の音程バーからピンク線が出る」という仕様とも相まって、特定が非常に困難になっています。
(2024/2/4追記)
リバースエンジニアリングによると、フライダウンは先頭族である可能性が高いようです。
フライダウンと似た歌唱軌跡で中央からピンク線が出た場合、おそらくフライダウン、プリングとは別の技法が検知されています。これについては都合により説明をしないこととします。


以上で表現技法についての解説はおしまいです。お疲れさまでした。

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