2-1一望無垠な山の上(スミス・ティファニー千笑)

「再放送やってるよ!」
朝起きて届いていたメッセージの数々に、少し遅れて背筋が凍る。
結局奮発して泊まったホテルの余韻が、もう消えそう。

SNSでは早速、「ティファニーちゃん今頃アラサーか」「その後はモデルやって今は裏方じゃなかったっけ」「渋谷で多分見たことある、あんまり元芸能人って感じではなかった」と、ある事無い事私の個人情報らしき数々が書き込まれていた。

再放送の前には必ず事務所から連絡が来るから、お母さんはおそらく知っていた、聞いてたはず。なんで私の許可が下りたことになっているの?なんで言ってくれなかったの?と電話したいけど……家を出てきてから3日間は連絡を無視してしまっていたから、筋違いか。私の次の次の代のお兄さんが事故か何かを起こして、急遽差し替えの再放映になったらしい。…いや、でもさ………。私に直接許諾を取ったわけでもないのに、放送は始まってしまったし…。

19の時「あの子は今」みたいな番組に取材された時も、ネットがプチ炎上みたいになった。
「系統は変わったけどまぁまぁイケる」「遊んでそう」「子役上がりだけど(だからか)、礼儀はちゃんとしててワロタ」「ヘアメイクか〜、案外普通」
私の何を知ってそんな好き勝手を語れるんだろう、書き込めるんだろうと当時は思ったけど、私だって昔のアニメの再放送に「懐かしい〜!でも今見ると○○君(初恋のアニメキャラクター)あんまりカッコよくなかった笑」とか投稿したこともある訳だし、それはそれで作者に失礼だったのかも。きっと似たような感じかな。
「芸能人なんて、国民のオモチャだ」と話した有名人がいた。私は今、おもちゃになることを甘んじて受け入れないといけない状態にいる。

レギュラー卒業後、各地を回ってイベントをしていた時に、北海道はイベントで回らないことを知って理由を聞くと、「ここでは週に一度しか放送されていない」と聞かされて、悲しいような、少し嬉しいような気持ちになったことをようやく思い出した。ここでの私は、ほとんどの人にとってただの顔が派手な旅行客。
テレビの画面で愛想を振りまいて料理を作っていた頃の「ティファニー・千笑」を期待して話しかけてくる人は、ほぼいないと考えていい。笑えてくるよね、あの頃に経験したあれこれなんてとうに忘れてたはずなのに、誰かに話しかけられると身体はまだどこかビクビクしてしまうんだから。

あーあ、またムンスでゆっくりできる日が遠くなったかも。
……まぁいいや。今日も朝はうま牛で。北海道限定でホッケ牛定食なんてのがあるのね……。……思いつきだけど、昼からは登山してみようかな!!ちゃんとした靴とかもレンタルしてるみたいだし。

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