ゲームモデルに基づいたPDCAサイクル~最終章~
みなさんこんにちは。わっきーかもしれません_(:3」z)_
今回は、昨年度から継続的に取り組み発信してきました、「ゲームモデルに基づいたPDCAサイクル」のとりあえずの最終章をお届けしたいと思います。線路は続くよどこまでも、です。
【要点】
■ゲームモデルがもたらしたもの
■ゲームモデル型チーム作りで感じた課題
■振り返りからの展望へ
こんな感じでいってみましょう_(:3」z)_
<はじめに>
粉河高校サッカー部では、監督が好奇心旺盛すぎて、1年間を振り返っただけでも実に様々な取り組みを積み重ねてきました。今なお整理し切れていないものもありますが、しっかり整理しながら成果に繋ぐことができたものも多いです。とりわけ「ゲームモデル」は我がチームに非常に大きなプラスをもたらしてくれました。正確には、ゲームモデルそのものだけでなく「ゲームモデルを巡る様々な取り組み」も含めてですね。ではここから、その取り組みの日々を振り返り、「これから」へと繋いでみようと思います。
①ゲームモデルがもたらしたもの
拙著『プレー経験ゼロでも出来る実践的ゲームモデルの作り方』でも整理しましたように、ゲームモデルとはチームにとっての「IDカード」であり「土台」であり「目的地」であり「取説」であり「物差し」だという考え自体は今も変わっておりません。いわゆる「自分たちのサッカー」というものに実体を与え、立ち返るべき場所を示し、向かうべき導(しるべ)となり、戦う基準を整え、振り返りの指標となりました。その意味で、自分たちが歩んできた道のりをかなり具体的に振り返ることが今出来ているように思います。
選手たちの成長に目を向けてみても、ゲームモデルを作成し試行錯誤を重ねる過程を経るほどに「言語化」のレベルが上がっていきました。それゆえに、個人としても組織としても「具体的」な取り組みを行いやすい印象を常に持っていました。この部分はチームが上手くいっていない時にこそ重要なポイントとなりました。自分たちは今どういう状況にあり、そこから脱するにはどのようなことをしなければならないか、という事を言語化して共有し、皆で乗り越えることができたと思います。もちろんチームが上手くいっている時にも、その理由を共有出来たことは大きな意味を持っていました。このように、常に自分たちの「現在地」を知るための指標としてゲームモデルが果たしてくれた役割は大きかったと思います。
②取り組みの中で感じた課題
詳細はまた別記事でもお伝えしようと思いますが、ゲームモデルとは「理想の設計図」と位置付けています。これは「理想」ですので、実行を寸分違うこと無く出来るとすれば、それはまさに「理想的」な戦い方になるはずです。しかし。現実にはそう上手くいく訳でもありません。段階として、「ゲームモデルがある場合」と「ゲームモデルがない場合」を比べたとき、これは間違いなく某豚まんのCM(関西人にしか分からないか・・)のごとくの差がありました。この辺りについては皆さんも同意される部分かなと思います。
問題は次の段階でした。ゲームモデルはあるし、選手たちにも落とし込めているはずが、実際には「なんじゃこりゃー!?」のようなゲームをしてしまうことがあったわけです。要因としては色々なことが考えられるのかなと思います。「ゲームモデルの落とし込みが結局不足している」であるとか「相手との関係性の中で最適な選択肢を選べていない」であるとか、「ゲームモデルそのものが破綻している」であるとか。これを「実行の段階におけるエラー」と位置付けたとして、このエラーを乗り越えることが取り組みの日々での大きなテーマとなっていきました。
試合において問題が積み重なった後、その解決のためにまず選手たちとたくさん対話をしました。そこで聞こえてきたのが「こちらが言ってることは分かるけれど、どう実行すればいいのかが分からない」という声でした。ゲームモデルとしては、「自分たちのプレースタイル」の位置付けをはじめ、相手との駆け引きの中で、局面の中で、「どのようにプレーするのか」「そのプレーの目的」などを整理してきたつもりでした。しかし、多くの選手たちの中では情報が「オーバーフロー」を起こしてしまい、今まで出来ていたことさえも出来なくなる状況が散見されつつありました。
言うなれば、ゲームモデルという「理想」からの視点に偏りすぎた結果、サッカー本来の原則を見失ってしまっていた、とも言えるでしょう。その結果、あり得ないくらいの失点を重ねる試合もありました。それは、もしかしたら私自身が「ゲームモデルを活用したチーム作り」を急ぎすぎていた結果なのかもしれません。そこで、一度考え方をリセットするように整理し、もう一度自分たちの現在地をきちんと把握することに努めました。ただ、その尺度は自分たちが掲げているゲームモデルでした。あくまでもゲームモデルで描く「理想」への「方向性」を損なうこと無く、サッカーの原則を土台として「現在地からの次の一歩」を丁寧に探る作業を積み重ねました。
おりしも、大谷川くんから指導実践の打診を受けたこともあり、自分自身の指導において苦手と感じていた守備の整備について協力を請いました。トータルで3週間弱の間、共にチームを見ていただきつつ、日々の練習だけでなくリーグ戦や練習試合にも帯同していただき、一つずつ丁寧に整理をしていきました。ゲームモデル型のチーム作りとして設定していた1つの区切りである選手権大会を目前にひかえ、チームとしての完成度は格段に上がってきたことを実感していました。選手たちも一つ一つのことが整理されて行く中で、迷い無く戦うことができはじめ、それは成長の手応えとして共有されていることが分かりました。
③そして1つの集大成として
和歌山県における選手権大会予選は10月の最終週に始まります。粉河高校は1・2回戦の会場校でもあるため、選手たちと共に準備や運営もこなしつつ、自分たちの試合も行うという忙しい日程となります。私たちは今年度は2回戦からの出場となったため、初日を運営だけで過ごし翌日に備えました。アップ開始前にショートミーティングを行い、前日に分析した相手チームの情報を共有しつつ、戦い方のポイントの整理を簡単に行いました。この時に、いつも選手たちの様子を観察しながら「この内容に納得できているかどうか」を見ています。あくまでも「提案」という形を取りつつ、ポイントの整理、そしていかにして戦うかというストーリーを共有してアップに入りました。
こちらとしては初戦ということもあり、やはり緊張した様子ではありましたが、いよいよ出番が訪れました。そしてキックオフ。立ち上がりからプラン通りの展開に持ち込み、ハーフコートゲームとしました。被シュートもゼロに押さえ込み、相手を猛然と攻め立てますがシュートが決まらない。前半の半ばにさしかかった頃から、選手たちがお互いに攻撃的な言葉を投げかけているのが聞こえてきました。それに合わせるかのように無謀な突破やタテパスが出始め、リズムが狂い始めているのが分かりました。一度前進の速度を落として落ち着くように声をかけましたが、なかなかそうはならず・・このまま前半を終わってしまうと思った矢先、念願の先制点を奪いました。
これで息を吹き返した選手たちは、ハーフタイムには落ち着いて話が出来るようになり、こちらの分析ポイント、自分たちがピッチ内で感じてきたことを出し合いながら整理し、後半のプランを決定しました。1つ余裕が出来たことで本来のリズムが作れるようになり、後半は一気に3得点を挙げ相手を突き放し、完勝で終えることが出来ました。
しかし、私自身としては前半の状況を「初戦で緊張もあったし仕方ない」で片付けて良いのかは疑問のままでした。
翌週、会場を人工芝のグランドに変え、3回戦が行われました。天気も含めてコンディションは非常に良く、試合にも理想的な入り方が出来たように思いました。しかし、いざ試合が始まってみると2回戦の繰り返しのごとく攻め続けながら得点が奪えない状況となりました。そのような中、相手スローインからの対応ミスの連続を相手が見事に決めきり、手痛い先制点を奪われてしまいます。相手のこちらに対する対策も読み取れている、ゴール前にも迫りシュートを打てている、でも負けているというその状況に、選手たちが焦りを募らせていきました。
メンタリティに関することは後日別記事でまとめますが、この試合はまさにその落とし穴にはまって抜け出せなかったように振り返っています。ハーフタイムでも状況の解説とやるべきことの整理、ポイントの伝達共有は出来ました。しかし、後半に入って最初のプレーからそのプランとは異なる判断、実行が続いていきます。ひたすら攻め込みながら決めきれず、焦りだけが積み重なる中とうとうホイッスルが鳴り響きました。崩れ落ちる選手たちを見つめながら頭の中には1つの疑問がこびりついていました。「なぜこのような試合になってしまうのだろう・・・」
その答えも出ないままに、選手権大会は終わりを迎えましたが、我々にはまだ大きな試合が残されていました。県リーグ1部2部の入れ替え戦です。敗戦からおよそ20日後にひかえたその試合は、3年生も全て出場をすることとなっていました。ですので、ゲームモデルに基づいたチーム作りの集大成はそのエクストラステージまで持ち越しとなりました。
完勝でした。決めきれなかった得点こそ複数ありましたが、それを差し引いても圧倒的でした。選手たちのサッカー人生はこれからも続きますが、その1つの区切りの時を、「勝利」「笑顔」で迎えられるのは幸せな時間でした。私自身としても、間違っていなかったのかな、と思えた瞬間でした。およそ1年という時間の中で、ゲームモデルというものを持ち込んでのチーム作りにしっかりと付いてきてくれた選手たちには深い感謝しかないです。そしてその感謝を、選手それぞれの、チームとしての成長に換えて手渡すことが出来たのであれば、それもまた感謝です。最後のミーティングで「ほら、君たちはちゃんと強かったね」と伝えながら涙腺を締めるのが大変でした_(:3」z)_
<終わりに>
そんなに長い付き合いでもないのに、随分と濃密な関係をゲームモデルとは築き上げてきたように思います(笑)。本まで書かせていただいたり、色々な方からお声かけいただいたりと、多くの変化が共にあったなと思います。そして、ここまで歩いてきて来し方を振り返って思うのは、やはりゲームモデルは大切だなということです。ただ、少し述べましたように、その「実行」にあたってはまだまだ手探りなところがたくさんあります。そこはまだまだこれからの取り組みかなと思います。とは言え、先日チームでも取り組んだ「メンタル」との関連性については近日中に記事にしたいと思います。
長々とお付き合いいただきありがとうございました。
線路は続くよどこまでも・・・_(:3」z)_