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EURO2024ドイツ対スペイン 凄まじい強度と勝負の分かれ目

開催国ドイツ対スペインの試合。下馬評通りの素晴らしい試合で、凄い試合を見たなという感じでした。以前にチャンピオンズリーグは違う競技という日本代表選手の話が話題になりましたが、それを感じさせるレベルの凄まじい強度。詳細に振り返ります

まずは基本フォーメーションから。両チーム守備時は4-2-3-1で攻撃時に可変します

青がドイツ、赤がスペイン。両方とも4-2-3-1

似た戦術を取った両チーム

両チームの戦術には共通点が多く見られました。ただ、細かな違いがあり、そこから大きな違いが生まれ、それが勝負の分かれ目になった印象です。まず大事な共通点に言及します

相手のDFラインへのハイプレス

両チームともDFラインには必ず前からプレスをかけてボール出しを制限。これはJリーグでも見られる世界的なトレンド

違ったのはGKへのプレス。ドイツは基本的にGKにはプレスを行いませんでしたが、スペインはGKにもプレスを行っていました。GKにもプレスがかかったドイツは玉出しに苦労する場面もありましたが、上手くプレスを外してカウンターに繋げます。逆にGKにプレスがかからなかったスペインはDFラインでのパス回しが楽に。その分、前線と中盤がかなりキツめにマークされ、なかなかボールを前に進めません。ドイツのここのプレスの強度は凄まじかった

3バック化してハイプレスを回避し、SBを押し出し5レーンを埋める

両チームとも攻撃時は3バック化し、その分SBの選手が前に上がって両WGとCFと共に5レーンを埋める布陣(3-2-5)を取りました。ドイツはクロース選手が、スペインはロドリ選手がDFラインに降りて3バック化。そして3バックと2ボランチ中心にパス交換を行い、ハイプレスを回避します。且つ前線に5枚選手を置いて相手の4バックに対して数的優位を作ります

違ったのはポジショニング。スペインのSBは内側に入ったり外をオーバーラップしたりして、マークの的を絞らせません。また、右SBのカルバハル選手が上がらずにロドリ選手がボランチの位置に戻り、代わりにファビアンルイス選手が前線まで上がって5枚の前線を形成する場合もありました

赤のスペインは流動的に5レーンを埋める

ドイツは両サイドバックが基本的に大外。代わりに両WGは内に入りがちでした。3-2-5のボランチのどちら1枚、WG1枚、SB1枚が近い位置でトライアングルを作り、パスをポンポン繋いでいるのが印象的でした

青のドイツはWGが内に入りSBが外を上がる

前に向かう強度が凄まじい

また、両チームとも前に向かう強度が凄まじかったです。とにかくどんどん前にパスを出す。ボール奪取後、ダイレクトで縦パスを入れることも多い。パススピードがとても速く、しかも受け手の足を止めないようなパスを出す。ボールを失った/奪取した時の切り替えも速いし、カウンタープレスの強度も凄い

結果、一人一人がボールを持つ時間が短かった気がします。競合であればあるほど、一人一人がボールを持つ時間が短くなっていく気がしました

ボールを運べるCBとライン間でプレスを回避する選手の存在

両チームとも強くて速くてボールを運べる選手がCBを務めていました。3バック化でワイドに開いた両CBが、ドリブルでボールを前に運んで相手を引き付けた上でパスを入れる形

且つ、そのパスをライン間で上手く受ける選手が多くいました。スペインであれば、ダニオルモ選手、ファビアンルイス選手、ヤマル選手、ドイツであればムシアラ選手、ヴィルツ選手、ギュンドアン選手…ハヴァーツ選手もライン間でボールを貰うことがいくつかありました

両チーム、ハイプレスを回避してのカウンター合戦となりましたが、そうなったのもライン間で上手くボールを受ける選手が多かったことがあると思います

勝敗の分かれ目

上記で細かな違いを述べましたが、そこから大きな違いが生まれます。そしてそれが勝敗を分けた印象です

サイド突破をWGがするスペインとSBがするドイツ

両チームの大きな違いの一つがサイド突破の担い手。スペインは主に突破力のある両WGがサイド突破の役割を担いました。特に鋭い縦パスや大きなサイドチェンジのボールがWGに入り、数的優位がある場合にチャンスが生まれていました。得点シーンもそう

ドイツはSBがサイド突破することが多かったです。両WGのムシアラ選手、ヴィルツ選手は内に絞ってライン間でパスを受け、そこからオーバーラップしてきたSBの選手に展開しサイドを突破するパターンが見られました。そしてSBからのクロスや中央への折り返しで多くのチャンスを生み出します

守備が脆弱になってしまったドイツ

上記の結果、ドイツの方が守備が脆弱になってしまいました。これが敗退の一因だったと思います

ドイツはSBがサイドの深い位置まで行くことが多く、守備時に戻り切れずに数的不利になりがちに。特に後ろからするすると上がってくる選手を捕まえづらくなっていました

ドイツの守備。RSBが戻れ切れていない

1つの失点シーンはまさにそう。右サイドのキミッヒ選手が戻り切れておらず、クロース選手も慣れないCBの位置に居て、後ろからするすると上がってきたオルモ選手を捕まえ切れず

スペインは逆でした。WGがサイド突破の役割を担った分、カウンター時にSBが戻れてカウンターを防ぎやすくなっていました。攻守のバランスの良さでスペインが上回ったことが、スペイン勝利の一因だったと思います(決定力の差もありましたが)

日本代表に足りないこと

個人的にはこの試合を見て日本代表の現状に危機感を覚えました。世界の強豪はとにかくプレーの強度が高い。日本代表がW杯で優勝したいならプレーの強度を上げないと厳しいと感じました。プレスを激しくすることもそうですが、攻守の切り替えやその際のパススピードをもっともっと速くすることが必要そうです。強豪国との差は大きそうと感じさせられた試合でした

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