2002年6月2日

2002年ワールドカップでは、茨城会場の運営責任者として、関わらせてもらいました。

大会の10年前の1992年6月は、ちょうど古河電工を退社して、鹿島アントラーズのクラブスタッフになった頃です。

これから始まる"プロサッカーリーグ"に向けて、「日本でプロサッカーが成功するかな…」なんて期待半分、不安半分な状況でした。

まさか10年後に、日本でワールドカップが開催されて、それも中の人として関わるなんて…アントラーズ的な言い方をさせていただくと『99.9999%』考えてもおりませんでした。(笑)

その当時は、「94年のアメリカ大会に、日本代表は出場できるのかな…」というのが、ワールドカップに対する意識でした。それぐらいサポーター側の立ち位置でした。

2002年ワールドカップから、今年で20年が経過しました。

日本代表選手の中にも、この大会を見ていない選手も、出てきているんですよね。

中の人として携わったワールドカップの裏話を、時間も経過したことですし、懐かしんでいただく意味でも、駄文ではありますが、書き綴らせていただきます。

まずは、ナイジェリア代表 vs アルゼンチン代表が、県立カシマサッカースタジアムで対戦した2002年6月2日の思い出を書いていきます。

https://www.fifa.com/tournaments/mens/worldcup/2002korea-japan/match-center/43950007

試合の前日には、スタジアムを使った公式練習と、両チームの関係者が揃って、FIFAの会場責任者が進行役となった、ミーティングをおこないます。

この試合では、先にスタジアムを使用して公式練習をするのは、ナイジェリア代表でした。

彼らは、公式練習前から、想像通りいろいろな事をやってきました。(笑)

話は、大会の2年前に遡ります。

私は、組織委員会の研修で、2000年のシドニー五輪に参加しました。いろいろな出場国が入れ替わり会場地にやって来るので、かなりワールドカップに近い環境での研修でした。

シドニー五輪には、ナイジェリア代表は、男女共に出場しましたが、現地ではかなり想定外な出来事を引き起こして、『こりゃ日本の尺度は通用しない』と実感させられました。

Jリーグでも、それなりに鍛えられましたが、この研修で海外チームへの免疫ができました。

2001年に開催されたコンフェデレーションズカップで、アフリカ王者としてカメルーン代表が、カシマにやって来て、シドニー五輪と似たような事がありましたが、本当に余裕で応対できました。「経験は大切だ!」と改めて思いました。

話は、2002年に戻って、試合の数日前に、ナイジェリア代表から試合に向けたスケジュールが送られてきました。

そのスケジュールを見ると、チームがホテルに入った日の夜に「歓迎パーティー」が入っていました。

『在日ナイジェリア大使館が、主催するパーティーなのかな?』と思って、チームに確認したら、「あなた達が我々を歓迎して、主催してくれるんじゃないの?」とすっとぼけた回答…さすがです。(笑)

そんな歓迎パーティーを、全ての試合前ににやっていたら、予算がいくらあっても足りません!

次は、公式練習に向けて、ホテルをまもなく出発する頃に、スタジアムに連絡が入りました。

「練習用のボールが無い…」

練習用のボールは、来日した際にFIFAから大会を通じて使用するようにと、1チーム40球が提供されていました。

『そう来たか…(笑)』

伝えられた内容を、FIFAの会場責任者に早速報告しました。

その報告を聞いたFIFAの会場責任者は、開口一番に、私にこう言いました。

「そんなのほっとけ!」

毅然としています。そしてはっきりしています。

『既に練習用のボールは、FIFAから提供されており、それを使う事がルールになっている』とチームに伝えました。

連絡を入れた10分後ぐらいに、ナイジェリア代表のお世話をしてくれている成田市サッカー協会の方から連絡がありました。

「ボールが無くては、練習にならないだろうから、協会で用意している練習球を貸してあげてもいいですか?」

そんな優しい連絡をいただき、その内容をFIFAの会場責任者に伝えました。

「本当に日本人は優しい。貸し出すのは問題ないが、そのまま持っていかれないように注意してあげてくれ。」

成田市サッカー協会の方に、FIFAの会場責任者からのメッセージを伝えて、『我々も注意してボールを見張ります』と伝えて、ナイジェリア代表は、無事ボールを使って公式練習をすることが出来ました。(試合当日も、このボールを使いました)

さて、対戦相手のアルゼンチン代表。

こちらも、なかなかやっかいでした。

チームへ事前に公式練習に向けたスケジュールを求めても、さっぱり返事が来ない。

アルゼンチン代表は、Jヴィレッジに宿泊していて、彼らは水戸に移動して、宿泊する予定になっていました。

チームの移動には、警察に対応してもらう為、準備もあるから早く情報が欲しいと、福島県警と茨城県警から言ってきます。

結局、アルゼンチン代表からは、公式練習当日になっても、スケジュールの情報は届きませんでした。

そんな流動的な状態でも、急に「これから行く」と言われても、何事もなかったかのように対応しなければいけないのが、こういう国際大会なんです。

アルゼンチン代表は、公式練習はおこなわずに、ミーティングに出席するチーム関係者だけが、カシマへやって来ました。

アルゼンチン代表は、ぶっつけ本番で、あの試合に臨んでいたんです。

試合当日、注目の両チームの対戦なので、沢山の観客がスタジアムに向かって来ました。

そんな雰囲気が盛り上がる中で、無線に困った事がスタジアム外に発生したので、現場に来て欲しいと連絡が入りました。

『何が起こったんだ?』

まだ両チームも、審判員も到着していなかったので、速攻で現場に向かいました。

現場に到着したら、1台のマイクロバスが停車していました。

スタジアムには、チームバス以外には、バスの類は、近づけないことになっています。そのバスの運転手は、「駐車証を持ってるのに、何故入れないんだ」と言ってきました。

バスの中を見ると、両チームのユニフォームを着たサポーターが、仲良く盛り上がっていました。(笑)

どこに向けた駐車証をすぐに調べたところ、VIP用に発行した物で、自分は行けないから、駐車証だけ勝手にあげてしまったようです。

サポーターがチケットを持っているか確認したら、チケットは持っていたので、他のスタッフを無線で呼んで、サポーターをその場でバスから降ろして、スタッフに入場ゲートまで誘導させるのと、バスを近くの違う駐車場に駐車させて、試合後はそこからバスに乗るように指示しました。

この大会で、試合前にスタジアムの外でサポーターと交わったのは、これが最初で最後でした。

別に騒ぎを起こそうとして来場している訳ではありませんし、チケットも持っていますし、そこは寛大な気持ちというか、お客様ですから、しっかりと対応しなければいけません。

両チーム、審判員の対応以外にも、試合運営ですと、エスコートキッズ(選手と一緒に入場する子供達)、フラッグベアラー(フェアプレー旗や両国国旗を持つ子供達)、ボールパーソンの受け入れやリハーサルも、開門前には終える為に、試合当日のスタジアム入りは、かなり早いです。

そして試合が終わっても、そこからが長いのです。

https://www.youtube.com/watch?v=D9cCefvcVQQ

この辺りは、次のドイツ代表 vs アイルランド代表で触れたいと思います。

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