2002年6月5日

6月2日にカシマで開催する第1戦を終えて、余韻に浸ることなく、すぐに6月5日に開催される第2戦の準備に臨みました。

https://www.fifa.com/tournaments/mens/worldcup/2002korea-japan/match-center/43950017

第1戦は、14時30分キックオフの昼間の試合でしたが、第2戦は一日の最後となる20時30分キックオフ。カシマは、交通の便が良いところとは決していえないので、試合終了後に観客を積み残して最終電車が出発しないことを願うばかりでした。

第2戦の対戦カードは、ドイツ代表 vs アイルランド代表の欧州同士の対戦となりました。

ドイツは、ご存知の通り西ドイツ時代も含めて3回の優勝(1954年、1974年、1990年)を経験しているサッカー強豪国。この大会でも、GKオリバー・カーンを中心に、ストライカーのミロスラフ・クローゼも居て、前評判の高いチーム。第1戦のサウジアラビア代表戦では、そのクローゼのハットトリックを含めて、何と8-0で勝利。第2戦も勝利して、早々にノックアウトラウンド進出を決めたいところ。

対戦相手のアイルランドは、イングランドでプレーする選手が多く、タフな選手が多い国。ワールドカップには、ドイツが優勝した1990年イタリア大会に初出場を果たし、1994年アメリカ大会では、グループリーグでイタリアを破るなど、侮れないチーム。2002年では、ストライカーにロビー・キーンが居て、クローゼとのストライカー争いが注目されていました。

2001年12月に、組み合わせ抽選会が韓国で開催されて、その足でベースキャンプ地の選定と試合会場の下見に、出場国が来日しました。

この試合では、ドイツはカシマを訪問しましたが、アイルランドは訪問せずでした。

ちなみにベースキャンプ地は、ドイツが宮崎市、アイルランドは千葉市を選定しました。

ドイツ・サッカー協会の関係者より、スタジアムや宿泊予定のホテルなどを、下見したいとの連絡が入り、成田空港まで出迎えに行きました。

成田市の宿泊予定のホテルに立ち寄り、その後にカシマスタジアムに案内しました。

試合に向けた準備に関して、ドイツからのリクエストを聞いた時に、ひとつビックリした事がありました。

それは、前日の公式練習、そして試合当日に試合運営側で用意する飲み物は、冷やさないで室温のままで用意してもらいたいとのリクエストでした。

『え?』

その理由をドイツ・サッカー協会の方に伺うと、ドイツでは冷やして飲むことをしてないので、急に冷たい物を飲むと、体調を崩すからということでした。

ついでの話ですが、この日の対戦相手のアイルランドは、試合運営で用意する物以外に、自分たちでガッツリと冷やした飲み物を用意して飲んでいました。(笑)

試合前日の公式練習は、第1戦と違って、両チーム共におこないました。

ドイツは、当日に宮崎市をチャーター機で出発して、成田市のホテルにチェックインを済ませて、スタジアムへやって来ました。

アイルランドは、千葉市のベースキャンプ地より、東関東自動車道を使って、スタジアムへ移動しました。

公式練習については、ニュースなどでも伝えられているので、ご存じの方も多いと思いますが、冒頭の15分間だけは公開して、時間になると取材メディアを控室に誘導して、非公開に切り替えられます。

我々の試合運営部隊は、広報部隊と連携して、取材メディアの誘導や不正な取材をおこなうメディアが居ないか、スタジアム内に分かれて確認作業をおこないます。

公式練習も無事に終了して、着用ユニフォームや試合進行を確認するミーティングも終了して、両チーム共にスタジアムを後にしました。

この日も、他会場では試合がおこなわれいますが、見ている余裕など全くありません。もちろん自らの会場での試合も、無事に試合がおこなわれる為に、試合中もあれこれしているので、ピッチを見ている事はありません。

試合当日、夜の試合ですが、ファン・サポーターが、街にやってくる前には、スタジアム入りして、街中の様子も情報収集します。

この試合で、忘れもしない情報は、昼過ぎぐらいに街中情報で、酒屋などで販売されていたビールが完売しました。(笑)

ワールドカップでは、国対国の争いでもあるので、対戦する両国間の関係には、随分と気を遣います。FIFAのセキュリティ担当スタッフも派遣されていて、試合前にセキュリティ対策の確認をおこないます。

この試合に関しては、それほどの心配をしないでも良いということでした。

スタンドは、両国からも多くのサポーターが来場していましたが、変なピリビリした緊張感はなく、欧州の雰囲気を感じるチャントなどが歌われていて、試合前から良い雰囲気だったのを覚えています。

試合自体は、ドイツのクローゼが前半に先制ゴールを決めて、その後もチャンスを作りますが、アイルランドの粘り強さでしのぎ、後半アディショナルタイムにロビー・キーンが決めて、劇的なドローで試合終了。

https://www.youtube.com/watch?v=XsLzoWizARc

アイルランドのサポーターは、まさに狂喜乱舞でしたし、ドイツのサポーターは静かになりました。(笑)

試合が終わると、試合運営部隊と広報部隊は大忙しになります。

広報部隊は、監督会見や選手インタビューの進行があります。選手インタビューは、ピッチ上で実施するものと、チームバスに乗車する前に、自由取材でおこなうものがあります。

試合運営部隊は、大会のメディカル部門と協力して、両チームの選手達から抽選された選手を対象にドーピングコントロールがおこなわれます。

1994年のアメリカ大会では、マラドーナがこの検査で禁止薬物が発見されて、大会を追放された事例がありました。

対象選手は、試合出場していないベンチの選手達も含まれます。

試合終了数分前には、メディカル部門の関係者と共に対象選手を、検査室へ直接誘導するために待機します。

対象選手は、更衣室に戻ることはできません。

検査室では、メディカル部門が用意している飲み物だけ、飲むことが許されています。飲み物は、全て瓶詰めされたもので、注射針などで薬品などが注入される事が無いようにしています。(ペットボトルや缶などでは、注射針が刺さるためNG)

着替え等は、両チームの許可を受けたドクターだけが入室を許可されているので、彼らが持って入室します。

検査用の採尿が終わらないと退出できず、それも決められた量が一気に採尿できないと、継ぎ足しは許されません。

ベンチの選手は、割とすぐに終わりますが、90分間(ノックアウトラウンドになると延長戦やPK戦を終えた後)走り回った後の選手だと、なかなか終わらないです。

ドイツは、対象選手とチームドクター、そして数人のスタッフを残して、スタジアムを後にしました。

アイルランドは、対象選手が終わるまで、チームバスでワイワイと騒ぎながら、「規則だから仕方ないじゃん」とお構い無しで待っていました。なんかアットホームな雰囲気でした。

アイルランドも、日付が変わらない前には、スタジアムを後にしました。

カシマでの試合開催も、あと1試合になりました。

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