筑波大蹴球部vs町田ゼルビア
※過激なことは書きません。所感を書き連ねるだけです
筑波大サイドからのバイアスがかかった文章だということをご理解いただけたらと思います。
試合概要
本試合は第104回天皇杯の2回戦。ホームチームがJ1の首位を走る町田ゼルビア、アウェーチームが茨城県代表の筑波大学蹴球部。ゼルビアのホームスタジアム町田GIONスタジアムで18:30キックのレギュレーションで開催された。
結果は延長引き分け、規定によるPK戦(1-1【PK;4-2】)で筑波大が勝利。勝った筑波大は3回戦に進出し、7月10日に三協フロンティアスタジアムでJ1柏レイソルと対戦が決定。
試合の所感
ボールを回させられていた筑波大と、はじき返し続けた町田というのが全体を通しての印象。ほぼ同じ数のシュートと枠内シュート、支配率もほぼ同じでした。インテンシティの高さが両チームに見られたが、結果的にそれの行き過ぎにより出てしまったケガ人が、後々クローズアップされる試合となったことが非常に残念。ケガ人を出してしまったことは筑波サイドの人間として申し開きの余地はなく、謝罪のみだと感じている。
<町田について>
シュートの質は明らかに町田のほうが上だったと思う。延長で見られたミッチェル=デューク選手のコーナーキックからのフリーのヘディングシュートや、エリキ選手のPKほか、流れの中でもクロスバーを越えてしまったミートした力強いシュートが散見された。分析サイトにてxGを見つけることが出来なかったため両チームの得点の予想については、なんとなくの評価でしかないが、たぶん筑波のゴール期待値はゼルビアのそれと比較すると数分の一だったのではないかと推察する。
加えてセカンドの回収が桁違い。アクシデントではあるものの仙頭選手が出てきて以降は、はじき返したあるいは、はじき返されたボールはことごとく町田が回収していた。これはとんでもないセンスと能力。筑波のみならずどんなチーム相手でもやり込める町田のストロングポイントだと思う。
<筑波について>
筑波のことを褒めてみる。信じられないほど落ち着いてボールを回していた。藤尾選手と平河選手という追えるFWが町田に居なかったことは間違いないが、それでもあれだけ落ち着き払って、Jのプロチーム相手にパスをつなぐのは大学生、ひいてはアマチュア離れしている。特に縦につけるパスと、組み立てなおすパスの使い分けで、町田のハイプレスをいとも容易く交わしていく。もちろん町田はそれでも二度追い、三度追いを仕掛けてくるが、それでもなおパスをつなぎ目立ったミスは後半の1度のみだったはず。素晴らしかった。
個人にフォーカスしてみると、PK戦で5人目のキッカーとなった磐田への加入が内定している角がサブとして出てきて大きな違いを作っていたことが印象的。ゼルビアのドリブルの名手バスケス=バイロン選手と比較しても遜色なく、サイドをえぐってのクロスや、切り替えしてのセンタリングを幾度となく上げており、ジョーカーとしての役割を存分に発揮した。
<総括>
ひとつだけ。
ゼルビアのやり方で改善するべきだと考える点は、相手を信じた競り合いだと思う。特に安井選手のケガの時にそう感じた。全力プレーはもちろん歓迎だし、ゼルビアのフットボールを魅了させている大きな要素だと思う。だけど、結果的に安井選手が得点直後に退いたのはこれが大きいと思う。この得点とケガのシーンとなったゼルビアの左CKを振り返る。
まず、筑波大の守備。ゴールエリアのライン上にストーンを2枚。ゴールエリア内の町田の選手2人にDF3人がつき、ペナルティーエリア内の町田の5人の選手にはマンマークで5人がつく。つまり、GK含むすべての選手がペナ内で守備を行った。
対してゼルビアの攻撃。ペナ内の選手がCKのキック前からゴールエリアの選手がCKスポットのほうに、それ以外の選手がペナルティーマークを開けるように動く。ニアポスト付近でフリックし逸らしたボールをペナルティーアーク付近から走りこんだ安井選手がシュート。非常にデザインされたものだった。ただ、思ったよりもフリックが下手で、安井選手が想像したシュートエリアよりもCKのファー側に流れてしまったと伺える。
この結果、ストーンとしてボールを待っていた筑波の選手と安井選手が、反対向きのベクトルでボールにチャレンジすることとなり、右脛骨骨幹部の骨折となってしまう。本当に気の毒なことだと思うし、安井選手は今シーズンはあまりリーグ戦で出場機会が得られておらず、折角回ってきた出番なのに本当に残念だと思っている。
ただ、気がかりなのはこの瞬間の安井選手の足の引かなさである。筑波大の選手はシュートコースの限定とまた抜き阻止の意図も込め、インパクトの直前に細かなステップで減速していることが伺える。他方安井選手は全力でアプローチしたため、その結果筑波大諏訪間選手の寄せたサイドでない方のサイドに安井選手のシュートは刺さった。見事にゴールは決められた。しかしこれでこの試合と数か月を棒に振ってしまう。果たしてそれはイチ選手の行為としてどのように考えられるべきものなのか。僕は再考の余地があると思う。
これはチャンミンギュ選手の骨折のシーンも同じ。ミンギュ選手は前半4分に筑波大内野選手と競り合った際に、潜り込む形で突っ込みすぎた結果内野選手に覆いかぶさられる形となり骨が折れたように見える。こちらもまた気の毒で、ミンギュ選手も同様に今シーズンはリーグ戦やカップ戦でなかなか試合に出られない状況が続く中で得られた、貴重な出番だっただけに本当に気の毒なことだと思うし、僕は彼の一刻も早い復帰を願っている。
しかし厳しい言い方をすると、いずれも相手選手の行動に期待を持ったプレーに見受けられてしまうのではないだろうか。避けてくれるだろう、足を引いてくれるだろう、減速してくれるだろうという要求を相手に求めながらのプレーではないだろうか。自業自得とは言わない。ただ、相手にそのような期待を寄せながら試合をしているのであれば起こるべくして起こった負傷だと言わざるを得ないとも思う。相手の選手を非難する前に、自分たちのチームの意識を変えることがこれを未然に防ぐことになる。それが結果的にゴールや勝利に近づくと考えられるのではないだろうか。
かつて日本代表で点取り屋の背番号である9番を背負った選手は自伝で、「競り合いでは結果的にダイビングヘッドで頭から突っ込んだほうが、安全。なぜなら相手選手は怯み、同時に自分が突っ込まなかったほうにチャンスも生まれるから。」と語っている。そしてそれと同時に「自分はケガを覚悟で飛び込んでいる。しかし怪我はその試合の準備段階から起こるものだから、その対策には余念がない。」とも語っている。
僕は彼を泥臭さの代表のようなFWだから非常に尊敬している。自分自身の才能を的確に分析し、その強みを最大限生かす形がこれだったそうだ。
このFWと比べて、果たしてゼルビアの選手はどうなのだろうか。ペティナイフでマグロの解体ショーをやっている選手はいないのか。そこについては色々と議論されてしかるべきであるし、プロならばそんなことも踏まえた上でプレーが求められてしかるべきではないだろうか。それは相手選手のプレーに誤った期待をかけ、間違ったバイアスのもと試合をすることではないと僕は思う。まだまだ発展途上のJクラブである以上、そういうほころびが見えてくることは否めないと思う。飽くなき勝つ姿勢は見ていて清々しいが、それを他チームとの関係性の中で見出すことにはより厳しい感覚が求められると想像する。
いずれにしても名前を挙げた選手だけでなく、4選手がケガをしたことは異常。一刻も早い復帰と、さらなるスケールアップした姿を祈念している。
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