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Jubilo Diary~それでもチームは一歩ずつ前に~【J2 第7節 対徳島ヴォルティス】


今回はJ2 第7節 徳島ヴォルティス戦を振り返ります。
sakashuさんがすでにマッチレビューを書かれているので詳細はこちらをご覧ください。


僕が今回まとめるのは以下2点についての考察です。

・失点の許容できる部分と許容できない部分
・大森選手のフリーロールとその意味

ではさっそく。



試合情報


試合前
磐田 5位 勝ち点10 3勝1分2敗 7得点 5失点
徳島 4位 勝ち点10 3勝1分2敗 14得点 7失点

 

結果  磐田 0 - 2 徳島
得点者 7'   清武 功暉(徳島)
    22' 岩尾 憲 (徳島)


スタメン

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磐田は前節のターンオーバーを経て現時点でのベストメンバーで臨んだ。


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一方の徳島も前節から多少の変更はあるものの、大きな変更はなくこれまでと同じ3-4-2-1。


ここから本題へ。
まずは失点について。



ジュビロの失点
~どこまで許容できるのか~


守備の局面では何を許容して何を許容していないのかを見極めることが必要だと思う。そんな観点から失点シーンを振り返ってみる。

ただその前に、徳島の攻め方と磐田の守り方を整理する。


徳島のビルドアップと磐田の守り方

徳島のビルドアップの特徴はひし形を作ることにある。作り方はいくつかあるのだけれど、この試合はここ最近の試合と少し形が異なった(下図)。
*後半は少し立ち位置を変えたような気がする。

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左ボランチの㉓鈴木選手が一列前に上がり、それに合わせて左シャドーの㉔西谷選手も一列上がることでひし形を形成。この形にした明確な理由は不明だが、磐田の守り方とセットで考えると少し分かるような気がする。

この日の磐田はひし形の一番手前(徳島側から見て)を2トップが監視していた。それにより縦パスを制限する狙いがあったのだろう。

その他ひし形の頂点に立つ選手(㉓、㉔、㊺)に対しては、中盤のラインで対応していた(下図)。

下図:磐田の守り方

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徳島側からすると、⑧アンカーで2トップを牽制したい思惑があったのではないだろうか。

思い返すと第4節の対山口戦においても、アンカーの選手が磐田2トップの間に位置取りをしていた。
その時はアンカーへの対応が不十分で、簡単に縦パスを通された記憶がある。

徳島はそれを踏まえ、2トップを牽制しつつあわよくば縦パスを通し、⑧岩尾選手を介した前進を考えていたのではないかと推察する。



話を戻す。
磐田は縦パスを制限していたため、徳島はサイドへと展開する流れになった。

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両脇のCBにボールが渡ると、FWの1枚(図ではルキアン)が中央のCB(図では⑤)へのパスコースを切りながらサイドへ誘導する。
もう一人のFW(図では航基)はアンカーの選手(図では⑧)を引き続きマークしていた。


これにより徳島はやり直しが難しくなり、前進をせざるを得なくなった。

一方で、ボールホルダーに対してのアプローチはゆるくなっているので、徳島の両脇CBは持ち運ぶことが可能となった。



失点シーン


ここで本題の失点シーンを振り返る。


1失点目、2失点目共にセットプレーから奪われたが、そのきっかけは徳島の右サイドからの前進だった。

磐田はアンカーのケアにより縦パスは許さなかったが、CBの前進を許してしまったことが間接的に失点へと繋がっている。

さて今回は、右サイドの前進を徳島に許したことが許容できるかを考えてみたい。


ここ最近の磐田を振り返ると、前から奪いに行くが剥がされたり、パスコースの制限をかけようとしても制限しきれず、奪う位置が不明瞭だったりする試合が多い印象がある。

また徳島は縦パスの出し入れを何度も繰り返しながら、積極的に攻撃のやり直しを行うチームである。



そう考えると、徳島にやり直しを許さずにサイドへと誘導し奪おうという意図が磐田にあったのではないかと推察する。


つまり、失点のきっかけとなったCBによる前進は、許容したくはないが許容しなければならなかったと個人的に考えている。皆さんはどうお考えになるだろうか。


ただし、失点は当然のことながら許容できない。

1失点目は清武選手がフリーで飛び込んできたことによるものだが、現地観戦していたフォロワーさん曰く、CK前に上原選手がルキアンを呼んでいたようである(マークにつくように?)。


2失点目は磐田の選手が動いてできたスペースに、後ろから入ってきた⑥内田選手がペナルティーエリア内へ侵入してPKを誘発した。

内田選手はもともと⑪ルキアンが対応していたが、フリーな状態で(一応マークの受け渡し指示は出しているが、対応する選手がいなかった)ペナルティーエリアへの侵入を許してしまった(下図 gif)。

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動かされて空いたスペースに後ろから飛び込んでくるという形はどちらも共通している。今後も狙ってくるチームがあるだろうから、修正が求められる。


許容したと思われる展開が失点に繋がってしまったのはとても悔しい。しかし、こういう意図のある守備はどんどんチャレンジしてほしいと思う。



給水後の変更



2点を先行された磐田は、前半の給水タイム後から守備のやり方を変更した。

上述した⑧アンカーの選手を2トップが監視するやり方から、下図のように中盤の選手が監視するやり方に変更した。それにより2トップが徳島の最終ラインに対して奪いに行けるようになった。

得点を奪うためにリスクをかけるようになったのだ。

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これにより徳島はロングボールが増え、セカンドボールを回収できた磐田は押し込む時間が増えた。

しかしながら、徳島のブロックを前に相手ゴールを脅かすことができなかった。




大森選手のフリーロール
~相手のブロックを崩すために~


磐田が攻めあぐねた要因について、少し具体的に考えてみる。

徳島の守備ブロックは4-4-2である。磐田と噛み合う形だ。磐田はいつも通り、サイドを起点とした攻めを試みるがサイドで数的優位をつくれない(下図)。

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数的優位を作れない原因の一つに、磐田の配置バランスの良さがあるのではないかと最近思う。

配置のバランスが良いことは、被カウンターのリスクを軽減するというメリットがある。

その一方で、相手にとってはスライドさえ間に合わせればゾーンで守りやすいというデメリットもあるのではないか。

横の揺さぶりは磐田の狙う攻撃の形であるが、幅を広げるにしても相手を一度圧縮させてスペースを作り出すような工夫が必要である。



縦パス


そこで重要なのがブロック間への縦パスだ。

ただし闇雲に縦パスを出しても相手の餌食になるだけなので、大事なのは誰がどこで縦パスを受けるのかだと思う。

1番シンプルなのは2トップが受ける形であるが、⑨航基と⑪ルキアンはともに狭い局面を得意としていない。また、相手の最終ラインを下げておくという意味で、FWが下がって受けるのは今の磐田にとってあまり得策ではないように思う。


この試合は⑧大森選手の立ち位置が興味深かった。大森選手は左サイドに留まることなく、頻繁に中央、そして右サイドにまで顔を出していた。


下図は前半の平均ポジショニングである(ハーフタイム中にDAZNで表示されるアレ)

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ご覧の通り、右サイドの⑭松本選手と比べて⑧大森選手が中央に寄っていたことが分かる。


都合の良い解釈になるかもしれないが、これは相手のブロック間で縦パスを受けようという意図があったのではないだろうか。

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大森選手であれば狭い局面も苦にせずプレーができ、パスのみならずシュートも可能だろう。そしてまた、CBを2トップが抑えているためサイドよりは浮きやすく、FWが近いので連携も取りやすい。

sakashuさんも取り上げていたが、徳島のライン間で⑧大森選手がボールを引き出し攻撃の起点になっているシーンが見られた。

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しかし簡単に縦パスを通させてくれるわけがなく、押し込んでから縦パスが入るシーンはほとんどなかった。その理由は縦パスを出せる選手がいないからだと思う。

⑦上原選手や㉓山本選手も縦パスを出せるとは思うがリスクを負うプレーは多くない。

そこで㉞針谷選手の出番である。
僕は㉞針谷選手の縦パスのセンスはチーム1だと思っている。

実際に㉞針谷選手投入後は縦パスが増え、ブロックの内側でパスを受ける回数が増加したように思う。チャンスになりかけた場面の多くはブロックの内側に出し入れができた時であった。

㉞針谷選手は守備面に不安こそあるが、今季の重要なオプションとなっている。スタメンを奪うためには守備面の強化が必要だと思うが、今後の成長はとても楽しみである。



大森選手のフリーロールは個人判断かタスクか


最後に大森選手のフリーロール(左サイドンに留まらず幅広く顔を出す)が意図的だったのかについて推察してみる。

個人的結論から言うとタスクだったのではないかと考えている。
その理由は2つある。

・中央に顔を出したのが1度や2度ではないこと
・大森選手が中央に流れるのと併せて、⑪ルキアン選手が左サイドにスイッチしているように見えること

2つ目に関しては毎回が当てはまることではないが、頻繁にスイッチしていた。個人判断にしては動きがスムーズだったように思う。

それに推進力のあるルキアンをサイドに出して、縦パスを引き出せる大森選手が中央に入るのは理にかなっている。

答えは分からないが、今後も見られるようであれば新しいチャレンジだと思う。そういえば、前節北九州戦の⑯中野選手の得点も中央で受けた大森選手のスルーパスからだったね。


終わりに
~発展途上のチーム~


課題を突き付けられては改善の繰り返し。チームはまだまだ発展途上だ。

㉞針谷選手に期待するといっても、今すぐスタメンとして活躍できるほど甘くはないだろうし、フベロ監督がいかに優秀だとしてもアっと驚くような魔法をかけてくれるわけでもない。

それでもチームは一歩一歩前進している。

敗戦を嘆き絶望するのではなく、その成長を見守っていきたい。それがサポーターの醍醐味の1つだと思うから。