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【PickUpMatch】#014.90分間至極のバトル。相馬体制鹿島、変貌はいかにして生まれたか。

 DAZNが標榜する「ライバルウィーク」
 今節はそんな注目試合からオリジナル10対決をピックアップ。
 立ち上がりからバチバチやり合った2チームの勝敗を分けたのはなにか。相馬体制に見られるチームの変化とともにレビューしてみたい。

Topic①:好調2チームの好バトル

 5-3のスコアが物語っているように、攻守が目まぐるしく入れ替わる文字通り目の離せない一戦だった。
 相馬監督の試合前の言葉を借りれば「この2チームはスタイルこそ違えど、前へという意識という意味では同じ」と言ってたが、まさにそれをそのまま現したようなゲームだった。
 前半こそ1-1で折り返したのだが、前半終了時鹿島サポーターの皆さんが大きな拍手をしていたのが印象に残った。

 象徴的だったのは、前半33分のプレー。互いに攻から守への速さがあり、中盤での攻防が目を見張った。
 Fマリノスも中盤の寄せのスピードが速く、前田大然も自陣方向に向かってスプリントができ、プレスバックもできる。
 選手と選手が局地局地で激しくぶつかったが、どれも正当なチャージで観ていて白熱した。特にこのゲーム、主審を務めた山本雄大主審は国際審判だったらしく、うまくゲームをコントロールしていたように思う。ゲームの流れを出来るだけ止めない、でも危険なプレーにはきちっと対応する。見事だったと思う。

 試合は、Fマリノスのハイラインの背後に試合を通し、抜け出し続けた土居聖真と荒木遼太郎の存在。中盤に君臨してボールを奪取した三竿健斗とレオシルバ。左サイドバックで起用された永戸勝也も正確なキックでクロスを上げ続けた。
 鹿島アントラーズの選手たちがやるべきこと、やらなくてはならないことが整理され、「鹿島らしさ」を取り戻していたことが大量得点につながる結果に結びついた。

Topic②:変化したのは、「切り替え」と「ショートカウンター」

 ザーゴ監督から相馬監督に変わり手をつけたのはタイトルに記載の2つの要素だろう。
 鹿島アントラーズというクラブの優秀な選手たちは、チームとしての方向性や決まりごとが定まれば、タスクを遂行し見事に結果に繋げるだけの力がある。

 練習からかなり激しくトレーニングしてると見受けられる攻守の切り替えのスピードを軸としたプレッシング。
 さらにはそのプレスによって奪ったボールをスピーディーに前線に運びラストパスからゴールハントしてしまう技術の高さ。
 短期間で鹿島の長年築いた強みを取り戻した相馬監督は素晴らしい。ここまでの戦績もそうだし、まず選手たちが活き活きとプレーしている。それがなによりだ。

 ザーゴ監督は、鹿島アントラーズの攻撃にビルドアップを整備しようとしていたと僕には映った。
 センターバックの犬飼と町田がボールに触り、両サイドバックに高い位置を取らせる。長年の課題だったボールを保持しながら、チーム全体で前進するというスタイルを新生「鹿島らしさ」にしようと思っていたのではないか。

※第8節の柏戦で、攻撃停滞の要因を書いてるので参考までに。

 鹿島アントラーズという勝利を宿命づけられたクラブの難しさである。
 柏レイソルに勝ったものの、常勝からは程遠い内容であり、なにか選手たちに迷いがあるような戦いであった。
 迷いは次第に不信感に変わる。そして、これははやく確実にチーム全体に広がるのだ。勝てないとなおさらそのスピードは高まる。
 そして、フロントは監督交代を決断したのだ。

Topic③:「鹿島らしさ」はどこへ向かうのか

 そもそも、直近数年の鹿島アントラーズの課題は、「鹿島らしさ」を言語化することにある。(と僕は思っている)
 日本サッカー界をリードする存在として、自分たちのサッカーを言語化できないようでは、再現性が著しく下がる。勝っているときはまだいいが、勝てない時に言語化できていないと修正点がどうしても「気持ち・メンタル」の話に終始することになり、改善されない。

 ザーゴ監督の招聘は、そういう意味でも期待が強かったはずだ。でもうまく行かなかった。
 さて、フロントはどう考えるか、だ。今は相馬監督が立て直しを図り、監督交代後負けなしと強い鹿島アントラーズを取り戻しつつあるように見える。

 世間は言う。「やっぱり鹿島は強いね」と。
 でも、他を圧倒して勝つ試合がこれからどのくらいの数アントラーズはできるだろうか。相手によっては、大量失点で崩壊する可能性もあると僕は思う。
 問題は現場の選手や監督ではない。クラブの方向性を決めるフロントが、鹿島アントラーズの未来をどう考えるのか、過去の成功体験を捨てられるのかがとても大切だと心から思う。

 それにしてもこのゲームは凄かった。
 僕もテレビ画面に向かって拍手してしまいました。

 それでは。

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