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【解説】新競技規則2024-25 -ハンドがまたややこしくなります-

みなさん、こんにちは。まっつんです。
前回3月3日に「新競技規則はこうなりそう?」という記事を投稿しました。その後、IFABから新競技規則2024-25がリリースされたので、この記事では詳細を解説していきます。
今回の改正は変更点こそ多くないものの、インパクトはかなり大きく、個人的な印象としては、2016-17で導入された「DOGSO+PK(+ボールチャレンジ)が退場から警告にグレードダウン」以来の大改正です。ハンドの反則にもこのグレードダウンが適用される事になり、本記事のサブタイトルにあるとおりハンドがまたややこしくなった、と言えるでしょう。

それでは本題に入ります。

改正トピック

主な改正事項は以下の3つです。

  • 第3条:脳震盪交代ルールの枠

  • 第12条:ハンドの反則における懲戒罰軽減

  • 第14条:ペナルティーキックにおける反則の明確化

第3条:脳震盪交代ルールの枠

変更内容:脳震盪交代枠を使うと、相手チームに追加交代枠が付与される

Jリーグでも既に導入されているお馴染みの脳震盪交代ルール。交代枠を5枚使い切っても脳震盪(の疑い)がある場合は、特別枠として1人交代可能です。それ自体は変わらないのですが、今回の改正で脳震盪交代枠を使った場合は、相手チームに脳震盪か否かに関わらず自由に使える追加交代枠が1つ付与される事になりました。同様に、相手チームが脳震盪交代枠を使った場合は、こちらのチームに自由に使える追加交代枠が付与されます。

審判員の権限

併せて、脳震盪交代に対する審判員の関わり方も明記されました。多くの審判員は医学的知識を持たないでしょうから、当然といえば当然の内容となっています。

  • 通常の交代と脳震盪交代のどちらに該当するかを決めるのはチームであり、審判員はこのプロセス及び決定に関与しない

  • 脳震盪交代が不適切に行われた懸念がある場合は、関係各所に報告する

また、脳震盪交代ルールは2023-24までは試験的扱いでしたが、今回の改正で恒久ルールとなりました。

第12条:ハンドの反則における懲戒罰軽減

変更内容:ハンドの種類によって懲戒罰(警告/退場)が軽減される

ハンドの反則をおさらいすると、ボールが腕や手に当たっただけでは反則とはなりません。以下の2つのパターンのうち、いずれかに該当した(と主審が判断)場合に反則となります。

  1. 意図的にボールに触れる

  2. 不自然に身体を大きくしてボールに触れる

PKが与えられる+ボールにチャレンジしている場合に懲戒罰が軽減されるルールが、今回の改正でハンドの反則にも適用される事になりました。

  • DOGSO+PK で反則が「不自然に身体を大きくしたハンド」→ 退場からグレードダウンで 警告

  • DOGSO+PKで反則が「意図的にボールに触れたハンド」→ 退場のまま

  • SPA+PKで反則が「不自然に身体を大きくしたハンド」→ 警告からグレードダウンでノーカード

  • SPA+PKで反則が「意図的にボールに触れたハンド」→ 警告のまま

  • ペナルティーエリア外のハンドであれば、ハンドの種類に関わらず軽減されない

事例

事例をYouTubeの映像で見ていきます。2010年ワールドカップ南アフリカ大会で起きたスアレスのハンドと2018年ロシア大会の日本戦で起きたハンド。軽減対象かどうかを考えながら見てみましょう。
# 「動画を再生できません」と表示されますが「YouTubeで見る」から閲覧可能です

軽減対象かどうか分かりましたか?
スアレスは「意図的にボールに触れたハンド」なので軽減対象にはならず、退場のまま。2つ目のカルロス・サンチェスは「不自然に身体を大きくしたハンド」なので、軽減されて警告となります。

得点阻止とDOGSO

前回の記事では「得点阻止の扱いはどうなる?」と書きましたが、得点阻止とDOGSOは分けて考えるのではなく、2つは同様に扱われる事が分かりました。DOGSOであっても得点阻止でもあっても、反則がペナルティーエリア内であり、「不自然に身体を大きくしたハンド」であれば警告にグレードダウン、「意図的にボールに触れたハンド」であれば退場となります。

第14条:ペナルティーキックにおける反則の明確化

変更内容:侵入=即反則ではなくなり、結果に対して直接的に影響を与えたかが争点となる

PKにおける侵入の違反は、競技規則に書かれている文言とピッチ上の審判団の運用とVAR有りの場合の運用が同一でなかった事もあり、度々混乱が生まれていました。今回の改正で、競技規則の文言が実際の運用に則す形で変更されています。

攻撃側競技者の侵入が反則となるパターン

  • その侵入がゴールキーパーに対して、明らかにインパクトを与えた

  • 侵入した競技者がボールをプレーした、または得点・得点のチャンスを生み出した

守備側競技者の侵入が反則となるパターン

  • その侵入がキッカーに対して、明らかにインパクトを与えた

  • 侵入した競技者がボールをプレーした、または得点・得点を生み出そうとする攻撃を妨げた

侵入=即 反則ではなくなり、結果に対して直接的に影響(=インパクト)を与えたかが争点となります。以下、侵入のパターンを網羅した一覧表です。

その他

その他の改正内容は以下のとおりです。

  • 第1条:GLTで得点を認めた際の主審への伝達方法として、時計の振動及び視覚的シグナルに加えて、イヤーピースやヘッドセットを介した音情報による通知を追加

  • 第3条:各チームはアームバンド(キャプテンマーク)を身に着けたキャプテンがピッチ上にいなければならない、という一文を追加

  • 第4条:すね当ての大きさに関して、適切なサイズの必要がある旨の文言を追加

  • 第14条:ペナルティーキックの際のボールを置く位置を明確化
    ボールの一部がペナルティーマークの中心に触れている、または (上から見た時に)かかっていなければならない

第14条のボールの位置の内容がやや分かりづらいですね。これまで競技規則には「ペナルティーマーク上で静止していなければならない」という記述しかなかった事から、実際の試合でキッカーがボールをペナルティーマークのぎりぎりゴール側に置いた時に「不正じゃないの?」という指摘が度々起きていました。

今回の改正で、上から見た時にペナルティーマークの中心にボールがかかっていればOK、となったので今後混乱は無くなるでしょう。コーナーキックにおけるボールの位置と同じ基準になったと考えると分かりやすいです。

あとがき

という事で、ここまで2024-25競技規則改正について解説してきました。冒頭でも述べましたが、ハンドの懲戒罰変更は大改正です。サッカーの競技規則は毎年何かしら改正されるのでタイムリーに追いかけるのが大変ですが、しっかり理解してサッカーを楽しんでいきましょう!


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