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誰かがぼくを遠くへ誘ってくれる

熊野で暮らし始めて2週間が経った。
居候している場所は熊野地方のあちこちから人が集まる場所で、こちらの人とお話する機会が結構ある。
そのなかで、
「どうして梅バイトしようと思ったんですか」
みたいな質問をされることがあって。
答えは簡単で誘ってくれた人がいたから。

最近「自分の評価を他者に依存すること」の危険性や問題点を説く言説をよく見る。
一般的にはそのとおりだなあと思う一方で、ぼく自身は徹頭徹尾、他者からの評価に従って生きている。

舞台照明家という仕事は、クリエイターでも生産者でもない。
自分からことを起こすことはできない。
誰かが作ってくれた演劇やら音楽やらイベントやらがあって初めて存在価値が生まれる。
誰かが仕事を頼んでくれるからぼくは舞台照明家でいられる。
そして誰からも顧みられなくなったときに、自分の意志とは関わりなくぼくは大好きな舞台の仕事から離れざるを得ない。
これは若い頃からずっと覚悟してきたこと。

起業しようとか自分で仕事を作ろうとか努力していた時期もあったけれどどうもしっくり来なかったのは、そんな他人からの評価で仕事が途切れずなんとか生き延びてきた、そんな生き方が好きだったからなのかもしれない。
最近になっていっそう、そんなふうに思うようになった。
だから会社を立ち上げたときに社名を「ひとにまかせて」という名前にした。
自分が自分の思いでできること、自分のやりたいだけでたどり着けるところなんて大したことはない。
自分に興味を持ってくれる誰かこそが、ぼくの限界を超えたどこかへの道を開いてくれる、そう思っているから。

もちろん、自分の「好き」や「やりたい」をおろそかにするつもりもない。
自分の強みや武器を過小評価するつもりもない。
ぼくの持っているものと、誰かがぼくに感じてくれる価値、それがうまく重なり合う。
ぼくにとっての理想はそこにあってSNSはそのために有効なツールだと思っている。
今回、SNSを通して繋がりが維持されていた遠い人からの提案でぼくが誰かの役に立ち、そのことがぼくの役にも立つ。
そして紀南、熊野という地と新しい繋がりが生まれて。

これからもずっと、こんなふうに暮らしていけたらなあとは思う。
場所や特定のコミュニティーやライフスタイルに縛られることなく。
いまの自分にこだわりすぎることもなく。


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