GLP昭島 調査計画書の問題点 ー評価書案の提出が近づいたのを踏まえー

またまた長い文章になりましたので、目次より関心のある部分についてご覧ください。


【はじめに】

8/18に行われたGLPによる昭島プロジェクトに関する説明会で示されたGLPの工程表では、そろそろ評価書案の提出が近づいています。
アセスに関わった者としていうと、この準備書案というのが実際のところ、開発行為に関して市民が意見を発し、開発行為の是非を問うことができる最後の機会となります。また、評価書案時点での住民の関心の盛り上がりによっては、続くアセス手続きの審議会の委員の姿勢も変わってきます。
そう言った意味で、評価書案の提出は住民にとっても重要な意味を持ちます。また、評価書案の縦覧(公開することをこう言います)と住民意見の提出期間は、住民にとっては短い期間となりますので、あらかじめ準備しておくのは大切なことです。本来ならば制度上、住民に負担を強いる制度ではいけないのですが、このあたりが事業者寄りの制度と言われる所以です。

【今できること】

上記を踏まえて今住民側は何ができるかということを考えると、住民の関心の高さと広がりを進めるとともに、調査計画書を再度見直し、その問題点を整理することです。評価書案が提出された際、調査計画書に対する意見が反映されているか? 調査計画書から評価書案になる過程で具体的になった内容は納得のいくものか? を考える上で、調査計画書について再確認しておくのは重要なことです。
幸いなことに、調査計画書は縦覧期間が過ぎた今も東京都環境局のサイトで閲覧することが可能です。通常、縦覧期間の過ぎたアセス図書はネットで公開が続くことはありません(いつでも閲覧できるほうが当たり前ですが)が、この点はGLPの数少ない良心と言えると思います。PCでしか見られないのはどうかと思いますが。

【調査計画書の問題点】

ということで、調査計画書の問題点を見直してみたいと思います。
なお、この内容は以前調査計画書が提出された際、Twitterにて投稿したもののまとめです。あくまで私の意見であることをご承知おきください。
もちろん情報の共有目的ですので、コピペ自由です。好きに使っていただいてかまいません。また何かご意見等ありましたら、X(Twitter)アカウント @foolontheweb までご連絡ください。

【表紙について】

調査計画書の副題が「GLP昭島プロジェクト」となっていますが、対象事業が何であるのか明確でなく、アセス図書の題名として不適当であると考えます。通常のアセスであれば、「GLP昭島物流倉庫及びデータセンター建設計画」が適当です。評価書案以降は題名の再考を求めます。

【事業の目的について】

計画書のP.2 事業の目的の内容が、ほぼ「事業実施における環境配慮事項」となっています。本来であれば、「物流倉庫=都内物流への貢献 データセンター=我が国のIT化、DXへの貢献」となるはずです。事業自体、事業個別の目的がなく、住民が事業の目的や内容を把握することができません。

【土地利用計画、施設配置計画について】

計画書P.8 計画地内に道路を新設する計画になっていますが、「標準幅員16.5m」という記載しかなく、道路構造について住民が理解することができません。また、両側4車線の道路であれば「道路の新設」というアセス対象事業に該当するはずですが、そうならない根拠となるデータが示されておらず、住民が事業の妥当性について判断することができません。

【施工計画について】

計画書P.12 「解体工事」の文中、「ゴルフ場東側の既存建築物については、他事業の実施に伴い本事業の実施に先立って解体される」旨の記載がありますが、なぜこれが一体事業として扱われないのか、根拠が示されていません。

【施工計画について】

計画書p.13 「工事用車両・建設機械について」
工事用車両の走行ルートが示されていますが、当地の道路網は極めて輻輳しており、大型の工事用車両が右左折を繰り返さないと域外に出られない現状です。交通計画については、さらに詳細な説明を求めます。

【事業計画の策定に至った経過】

計画書p.22 「事業の計画に至った経緯」について、前述の「事業の目的」でも同様の記載がありましたが、事業があたかも「昭島市都市計画マスタープラン」の一環となるような記載になっています。通常のアセスであれば、あくまで私企業の営利事業として、マスタープランの理念に配慮して事業を行うことを記載する部分です。記載内容がアセス図書の趣旨に反していますので、評価書案での修正を求めます。

【公共公益施設等の分布状況について】

計画書p.41 「公共公益施設等の分布状況」について、代官山に隣接した箇所には、地域包括支援センター『ハピネス昭和の森』と認定こども園『イコロ昭和の森』があります。これらは騒音規制法に基づく「特に静穏を要する区域」の対象施設になっていると考えられますが、これら施設に対する配慮と環境を悪化させないことへの担保について記載してください。

【公害苦情の状況について】

計画書P.71 「公害苦情の状況」について、計画書には令和2年分の公害苦情について、騒音は0件となっていますが、令和3年度版『昭島市の環境』(昭島市環境部)では5件となっています。調査資料に齟齬がありますので再確認と修正を行ってください。なお、地域概況に関するデータの引用は、関係市町村発行のデータがあればそれを優先、または国・都とのデータと併記するのが適当です。

【水質汚濁について】

計画書P.73 「水質汚濁」について、河川水質の記載項目がBODのみとなっていますが、工事による土砂の流入等、浮遊物質(SS)への影響が懸念されますので記載項目に追加していただくとともに、水質の記載項目について再度検討してください。

【生物・生態系について】

計画書p.89 「生物・生態系」について、都市の緑であるゴルフコースを廃止し、東京都の優れた水環境である玉川上水に隣接する事業であるにも関わらず、生物生態系の記載が現存植生図と巨樹巨木データベースからの引用だけでは調査が杜撰であると言わざるを得ません。調査項目を再考し、さらに詳細な記載をしてください。

【自然との触れ合い活動の場について】

計画書p.98 「自然との触れ合い活動の場」について、『昭和の森ゴルフ場』は一般客の利用も可能なパブリックコースとして利用されており、「自然との触れ合い活動の場」として機能しているものと考えられます。『昭和の森ゴルフ場』を調査対象とし、ゴルフコースの利用状況等について記載してください。

【産業廃棄物について】

計画書P.101 「産業廃棄物」について、東京都の排出実績しか記載されていませんが、昭島市の状況についても記載してください。

【環境影響評価の項目について】

※ 計画書P.103〜 およびP.111〜 「観葉影響評価の項目」および「調査等の概要」の各論については、専門的な項目であるため、ここでは記載を省きます。関心のある方は、ツイートのツリーをご覧ください。

【計画書全般について】

対象事業の関係市町村は昭島市および立川市となっていますが、立川市に関する記載が明らかに不十分です。これでは地域の概況を十分に把握しているとは言い難く、再度の調査を求めます。また、調査資料が東京都発行までのものが多く、昭島市および立川市の状況を詳細に把握できているとは言い難い状態です。昭島市および立川市が発行している図書・データを検索し、十分な調査と記載をお願いします。

【計画書全般について】

事業計画に記載されていない事項が、調査・予測事項では記載されているなど、事業計画で想定している施設配置計画の記載が不十分で、住民が事業概要を把握できません。少なくともアセス手続きの同一文書内で矛盾が生じることのないよう、慎重に文書作成作業を行ってください。

【おわりに】

調査計画書の再確認作業について、調査計画書の記載が不十分であるなど、改善・修正を求めたい部分は以上です。
長くなってしまいましたが、皆さんの関心がある部分だけでも結構ですので、参考にしていただければ幸いです。

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