故郷の呼ぶ声/ジット・プミサク

たそがれた空に
夜のとばりが
黒い緞帳のように
暗くのしかかる
郷里から引き離されて
うちひしがれたこころにも似て
沈痛の闇がひろがる

土地と自由 人権と尊厳
勝ちとるために闘い
家から遠く引き裂かれて
見捨てられた森のように
葬り去られた

かつて翼ひろげた鳥のように
風に乗って
自由に 陽気に
大空を飛びまわっていた
最愛のかの地は
幾百の宮殿にもまさる

かつての夢
美しい夢は
いつもこころを満たして離れない

その希望は揺らいだことがない
必ずとりもどすのだ
という信念があるから

遠い空から
はるかかなたから
かすかに響く声
故郷よ
故郷が嘆く声がする
故郷がわたしを呼ぶ声が

(荘司和子 訳、八巻美恵『ジット・プミサク・中屋幸吉 詩編』サウダージ・ブックス、2012年)

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