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【調査】上海におけるコロナウイルス影響下での外食産業の状況推移とIT活用

お疲れ様です、株式会社トレタ社長室の調査チームです。

新型コロナウイルス感染症に関する影響は広く世界中に広がっていますが、では飲食店に限った時、各国でどのような影響が発生しているか、またその状況に対して、リカバリーのためどのようなIT技術を駆使しているのかは、あまり伝わってきていません。今回は、世界でもっとも最初に感染爆発が発生した中国にある大都市、上海にて、今年の初頭から今月半ば程度までの大きな動きをまとめてみました。日本の数ヶ月後を考える際の一助になれば。

上海在住の藤田康介医師による時間軸のまとめ

まずは上海の状況について、上海在住の医師・藤田康介氏によるツイートを引用させていただきつつ、簡単にまとめます。

まずは1月23日に武漢が封鎖されます。翌日1月24日には上海で重大突発公共衛生事件1級対応措置を発令。映画館娯楽施設閉鎖が閉鎖されたほか、高速道路の入り口での検問・検温に加え、地下鉄各駅、スーパーや果物屋、野菜市場などの入り口でも検温管理がスタートします。

おおよそ1ヶ月後の2月20日あたりから、少しずつ仕事や生活が動き出します。ここ注意しておきたいのは、中国の1ヶ月超におよぶ都市封鎖は徹底的に行動制限を実施したもので、日本の自粛中心の状況とは大きく違うということです。

この頃から、飲食店では「無接触型」とよばれる、店外からオーダー&ピックアップできるタイプのスタイルが誕生します。詳しくは次項にて。

3月上旬からは、仕事がかなり復活してきます。またA級観光地と呼ばれる最上位に位置する観光地の一部が再開されはじめます。

一方で、この頃から個人の移動情報を厳重に管理するようになります。「随申码(スイシェンマー)」と呼ばれるアプリは、個人の移動情報を記録しており、自分が立ち寄った場所や感染に関わる状況に応じて、自分の安全性に対応したステータスが表示されます。また様々な施設での入場券を兼ねていて、このアプリを呈示しないと立ち入り許可がもらえないという運用になっていました。こちらも詳しくは次項にて。

さらに3月中旬になると、公共施設などが動き出します。

翌週からは遊園地なども再開されます。ただし幼稚園や学校などはまだ休園のまま。

さらに緩和は進んでいきます。上海そのものの規制も2級に緩和。ただしこの頃から中国外での流行が顕著になってきたため、海外からの入国者は全て2週間の隔離になっているようです。

同じく藤田医師が、2級になった際の上海の方針を共有してくれていました。

だいぶ徹底かつ明確化されていますね。

一方で、この頃になると飲食店への人の流れがだいぶ戻ってきているようです。以下は3月30日(月)に公開された記事ですが、ハイティーに70分並んでいるとの内容が書かれています。

下記の記事からは「リベンジ消費」という言葉が発生し、規制期間中にできなかった消費をしようという消費者行動がわかります。自治体からは商品券の配布もあったようですね。ただし、様々な活動や行動は、前述のとおりアプリで自分が安全ということを証明できること前提となります。

翌週には、ついに武漢の封鎖も解除されました。学校の再開も見えてきました。

以上のとおり、藤田医師のツイートを基にザッと時系列を追ってみました。藤田医師、貴重な情報をありがとうございました。

感染状況と出来事の照らし合わせ

Worldometerのグラフに出来事を載せてみました。

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今回は、WorldometerのグラフにFOODIT運営事務局で注釈を足してみました。元グラフは以下よりご覧下さい。

個人の行動を記録するアプリ「随申码(スイシェンマー)」

上海の状況をまとめる際に、最も重要なのが「随申码(スイシェンマー)」というアプリの存在です。これはWechatやAliPayといった、中国の国民であればほぼ全ての人が利用しているようなアプリのミニプログラムとして提供されているもので、自身や社会の行動ログを元に、自身がいまどれくらいのリスクをもった状態なのかが公開できるようになっています。なお、上海以外の地方ではまた同等のアプリが存在するようです。

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画像引用元「上海发布」 

随申码では、各人のステータスに応じて上記のとおり3色のQRコードが表示されます。赤は感染中、感染の疑いがある状態。黄色は14日間の隔離が必要とされている状態で、緑は医学的に大丈夫とされている状態となります。

上海では、このQRコードを提示しないと様々な施設に入れない、働くことができない、といった規制を実施することで、混乱を最小限に抑える施策をすすめています。もちろんそのためにはたくさんの個人情報を渡さなければならないのですが、国民性および生活を維持するため、中国の社会では受け入れられているようですね。

たとえば飲食店では、以下のように従業員の安全性をアピールします。

当然ながら、長距離の移動者に対してもこのシステムでのチェックは実施されます。

テレ東の現地レポートも、現地の空気感を知るのには良さそうです。

ITを活用した「無接触」型のテイクアウトやデリバリーシステム

そもそも上海を含む中国では、高級店であっても持ち帰りサービスを提供するのが一般的でした。また、市民の間でデリバリーやECを使うことが一般化しており、飲食店がテイクアウトやデリバリー中心の仕組みに移行した際も、店舗側・住民側が共に状況を受け入れやすかったという土壌があるようです。

その上で、厳しい行動制限の中でも営業を続けるため、無接触型のテイクアウトやデリバリーシステムが早々に開発され、活用されていました。

非接触レストランの仕組みはこうだ。業者が注文専用のQRコードをレストランの外やロビーに掲示し、消費者が携帯電話でそれをスキャンして料理を注文すると、後ろの厨房で料理の情報と受注番号を生成する。料理ができあがると、従業員が決まった受け取り場所まで運び、消費者は番号を確認してから自分の買った料理を受け取る
消費者がアプリケーションやミニプログラムでオンライン注文する際、メッセージ・備考機能で「非接触配達」プランを選び、料理を置く場所を指定し、消費者と配達員が直接接触するのを避けられるというものだ


このように、上海では状況に対してITの仕組みを導入することで、問題を解決したり、その時々のベストを尽くせるような工夫が実施されていたようです。

もちろん日本でこのような前例をそのまま真似するわけにはいきませんが、既にピークを超えた1つの事例として、参考にできる部分は多分にあるように思えます。


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