鈴木と佐久間と宮藤、野上と松永
老いはある日突然やってくる
「わかるわぁ」
先日、鈴木おさむ氏が引退するニュースを読んだ時に思わず呟いた。というのも数年前、私も彼とある意味同じ理由で仕事を辞めたからだった。
当時の私は40代半ばで後輩たちは皆20代。彼らを率いて熱い想いでパワフルに仕事をこなす、私の心情的にも社内外の評価的にも小さな会社の顔役とも言える立場にいた。
そんなある日の午後、暖かな日差しが降り注ぐ工房で後輩に業務上のミスを指摘していた時、なんだか突然に気がついてしまったのだ。
・・・すごい歳離れてんなぁって。
その上、とにかく仕事の全てが私の言葉で動いていて...後輩のやりたいことはまた別にあるだろうに、私が許可しないと進まないこの状況...想いを私は汲み取れているのだろうか。彼らは果たして思ってることを私にちゃんと言えてるんだろうか?
言えたとして取捨選択する私の理屈は、本当に正しいだろうか?
私の正義は彼らの正義を潰してる可能性はないと、どうして信じられるのか?と。
鈴木おさむ氏は「僕も老害になっていた」と言っていた。
今週のANN0で佐久間さんは「ある時突然に今までのやり方が古くなる時ってあるんだよね、突然にね」と言っていて、心の底からしっくりきた。
まぁ実際に仕事を辞めた理由は他にもあるけれどとにかくこれが一番大きかったし、何の前触れもなくスポットライトって外れるんだなぁと思った記憶がある。
ただ不惑とはよく言ったもんで、それが寂しいかと言うと意外とそんなことはなく。程なくして新しい生き方への一歩を踏み出したし、そこからまた年月を経て、あの時の私だったら驚くだろうほど、誠にいいかげんで幸せな毎日を送っている。
不適切にもほどがある
このドラマ、クドカンより少し歳下の私は、己がタイムスリップしたかと思うほどの昭和の匂いにクラクラするが、面白い。ただあまりに覚えがありすぎて怖いw
まぁドラマの内容はさておいて、主題歌の「二度寝」が今回の本題。
最初のうちは、この部分が印象に残った
ドラマの内容でもあるし令和の世のことでもあるだろうが、Creepyファンとしては『教祖誕生』を思い出した。あの時は歪んだ正義を振りかざす側の心情を描いたが、今はRさん自身の立ち位置が変わり年齢も重ねているから、振りかざされる側として書いているのが印象的だった。
このリリックを読んだ時「あぁそうなんだよな。子供の頃にはいつでもいけたあの淡く優しい正義の世界は、大人になった今はそれが現実じゃなくて想像だと知っているから、もう行く事ができない場所なんだよな」と思った。
もう戻れないということを知っている、そういう諦めにも似た感情に、先に書いた己が初めて”老い”というものを感じたあの瞬間を私は思い出した。
どんな場所でも、どんな人にも等しく時間は流れて決して戻ることはできないという事実。
時の流れや老いを残酷だと取る人もいるだろうが、当の本人としては自分がもう過去の人だという意識は持ちながらも芯は失わず、できたら良い感じで年を重ねていきたいと願う。それにこの先の未来も結構面白そうじゃないか、と思う。
そんな個人的な心情を私はこの歌詞に重ねた。
もちろんRさんはまだまだ若いからそんな訳ないんだけど、人の何倍もいろんな経験をしてきた彼が30を超えて父となり、我が子が生きるこの先の未来に想いを馳せ、その世界での自分の姿を想像してこう言っていると仮定すると、やっぱり好きだな流石だなと感じた。
そうじゃなくても、日本語ラップやバトルの歴史を語る上でRー指定の名や功績・実績はしばしば句読点のように使われるわけで、言葉の通りまさに歴史上に名を残す人なんだから意識してないわけないし。
一方で、昔から変わってないけどやっぱり自分の目で見たいんだね とも思った。どんな結果でも良いという言葉にRさんの自信も窺えるし、良い歳の重ね方をしてるんだなぁと思った。
ついでに、負けず嫌いなのも相変わらずで最高。
歳取って諦めて白旗あげちゃうのって意外と簡単なんだけど、今のところ戦う気でいそうなので良いぞいいぞもっとやれ。
二度寝
今週のオデコネでKOPERUさんも言ってらしたけど、私もこの曲と二度寝という言葉がどうしてもどうやっても繋がらなかった。ずーっとぼんやり考え続けてたけど、やっぱり最後の最後に突然現れる二度寝という文字が不思議でならなかった。
まぁフックで寝れないって言ってるから繋がってるとも言えるし、今までRさんにとっての夜は世界の全てであり、日の光から逃げられる場所であり安らぎでロスタイムだった訳だけど、迎えにきた朝は相変わらず急かしてくるがのんびり二度寝できるくらいには優しくはなったんだ!良かったね! なんて思ってはみるものの、やっぱりしっくりこない。
で、ついさっき。KOPERUさんの言葉をぼんやり思い出しながらなんとなーくドラマを見てたら…あれ?とちょっと思いついた。
そして自分としてはとってもスッキリしたので、これを書き始めた次第。
二度寝の意味
Creepy Nutsとしての活動を初めて10年が経ち、若かりし頃の自分達ならきっと信じられず鼻で笑うだろう程に売れ、がむしゃらに休みなく駆け抜けてきた第一楽章ともいうべき期間に終止符を打ち、己の生業以外を全て手放すと決めた。
そしてRさんはやりきれずにいたCreepy以外の大切な人との仕事を次々とこなし、家庭を持ち、子を育て、同時に梅田サイファーのツレとの歴史を大きく動かし始めた。
松永さんはこれまでDJだけ仕事だけをストイックにしてきたが、その間に経験できなかったこと、目的を達するために切り捨ててきた事に1つ1つ向き合い、興味を少しでも持てたことには積極的にトライして健康的に人生を楽しむことを始めた。
なんて素晴らしいんだ!
金持ちになりたくてやってる訳じゃない。という彼らの言葉に偽りはないんだなと改めて思えたし、いっちょ上がったことも喜ばしいし、己の手にも負えないくらい大きな存在になった活動を止める勇気と、ある意味堅実とも言えるその身勝手さが、私が好きになった時の2人から変わっていなくてそれがとっても嬉しかった。
話を戻すと。
その、一旦お休みしてた状況を”二度寝”って言葉で例えてたんだな と思った。
ということはつまり、これからまた本格的にCreepy Nutsの第二楽章を始めるという宣言という事でよろしいか?
間違ってても答え合わせができないので、そうだと勝手に受け止めた!
私の妄想が合っていると仮定すると、だからKOPERUさんは二度寝の意味を語らなかったのかなとも感じたし、だとしたら好きだなぁと思った。
そして松永さんはリリックの意味を120%理解した上でトラックで二度寝を表現し、それがこんなに明るいのも本当にすごいし、何より今の彼がそういう思考であることが心から嬉しいしやっぱり天才!!
ダブルミーニング
二度寝で調べてたら、関連でこの四字熟語が出てきた。
かなり強引なんだが私はこれで最後のバースを勝手に納得してしまった。こじつけだとは当然思ってるんだけど。
松永さんが去年作った曲だと言ってたが正確にいつ作ったか知らないけれど、インライでトラック公開してた時はまだだった訳だから完成が割とギリギリだったと想像すると、昨年は結構ビーフも和解もあったし炎上してた人もいたし、少し前にはUCだってメジャーデビュー前後のゴタゴタがあった。
それらをぜーんぶひっくるめて“互い違いであると認め 笑えてイビキかいて二度寝”と言ってるのかなぁって。
時の流れを俯瞰で見たら全てはちっぽけというか、結局なるようにしかならないし足掻いても仕方ない。それに今の自分なら変なことにはならないって自信もあるし、ふふって笑えちゃう感じわかるなぁって。
ま、これはこじつけ。しらんけど の気持ちでお読み流しください。
なんにせよ。
周りの状況に振り回されることなく、笑えてイビキかきながらまた眠れるほどの落ち着きが今のRさんにあるのなら、それは確実に年を重ねたからだろうし、いいおっちゃん?ジジイになりそうでこれからが益々楽しみだなとワクワクしている。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?