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推しを持つとはこういうものか

私は現在フリーランスで細々と稼いでいるが、2021年春頃にちょっと思うところがあり仕事量を極端に減らした。理由については割愛するが、これまで“ワーカホリック”という言葉を体現するかのような生き方をしてきたので、どうにも呑む・寝る・仕事する以外の時間の使い方がわからぬ。さてどうしたものかと考えはするものの、有り余る自由時間を前になすすべもなく、過去のドラマを一気見したりYoutubeをぼんやりと眺め布団に転がる毎日。

ただ見るといっても能動的に何かを調べるほど興味があるものもなく、お勧めされたものをひたすらに見ることになる訳だが、画面にはcrossfaithのMVがやたらと表示される。まぁそりゃそうか。ライブに毎度通うほど好きなんだからな...と独りごちる。

そこからは過去のライブやフェス映像・インタビュー記事・関連wikiに至るまで完読。似たアーティストのも手を伸ばしまくった後。さて...ここからはどうしましょうかねというタイミングで、1つ全く見覚えのないアーティストの動画が紛れていることに気がついた。

それがこれ。CreepyNuts「ぬえの鳴く夜は」
これまで、HipHopは好きじゃないとはっきり言って憚らないくらいには興味がなかったが、実は彼らのステージだけは1度見たことがある。それはいつだったかのサマソニで時間潰しに向かったビーチステージ。そこで2−3曲目ぐらいにやってたのが確かこの曲だったはずと、不意に記憶が蘇る。

その時は、中盤で他のステージを見るべく別行動していた夫が合流し「腹がへった」というので離れてしまったが、なぜそんなことを覚えているのかというと、音がロックかつ重めであり割と好みだったからである。ふむ…改めて聞いてもやっぱり結構いい。ならば物は試しだ他のも聞いてみるか。と開いたのが「阿婆擦れ」

10代の頃、妹が米米クラブが好きで私もよく聞いていたが、同じ匂いを感じる。あれ?意外にいけるのか?と次は「よふかしのうた」そして「数え唄」「助演男優賞」と数珠繋ぎに聴き、最後に「ガチンコ ザ ホルモン2 俺ならこう歌う選手権!!」でとどめを刺された。

振り返ってみると、このタイミングで「天変地異が起きた。この私がなんとHiphopにはまった」と妹に連絡をしている。ここまで約2日間の出来事。

閑話休題。

話は変わるが、私がこれまで好きになったアーティストはなぜか髭が生えているか髪が長いかその両方、ついでにゴリラ関連のあだ名を持つ者が多い。
Her name in blood IKEPY、Crossfaith Koie、マキシマム ザ ホルモン、ゴスペラーズ 村上てつや……

加えてこれは父の影響を多大に受けていると思うが、圧倒的なスキルを持つ現場叩き上げの職人気質な人間が好きだ。だからアーティストでも多くの経験を積み、どんな会場でもぶち上げられるようなライブ巧者かつ歌がうまい方に心惹かれてきた。

他方で、私は文章を読むのも割合好きだが、繊細で緻密な内容や会話劇を得意としていたり、はたまた拗らせ毒気が多いが、その実芯は結構強いという作者が好みである。
歌人 穂村弘、脚本家 野木亜希子、坂元裕二、ハライチ 岩井勇気、小説家 小川糸…etc

そしてここで話を戻そう。CreepyNutsである。

上にあげたような私の好み3要素をガッチャンコして、細かいことはざっくり省き乱暴にひとまとめにしたフィールドの、その丁度どまん中。
そこに、少し猫背で怪訝な顔をしたR-指定が立っていたのである。

これには我ながら心底驚いたが、もう認めざるを得ない。となれば暇は武器に変わり、有り余る時間のほぼ全てをR-指定に費やす日々が始まった。

まずはリリックを読みまくった。そして、そこに隠されている韻や言葉遊びというものを知り、次にサンプリング、文脈と呼ばれる独特の文化を知り、フリースタイルバトルに辿り着いた。
付け加えると、バトルというのは持つことを許された武器が己の言葉とスキルのみの世界であり、その言葉の刃は知識や経験・スキルなどによって磨かれ研ぎ澄まされるものだということを知った。そして、私はここまできて気がついてしまった。

Hiphopは自分のことを歌う。
ということは、私が今ディグりまくっている彼のラップは全てが彼の人生そのものであり、ゆえに私は今彼の生き様を追体験していると言っても過言ではなく、ましてやそれを好ましく感じているということは、私は彼の生き様そのものに惚れ、人生に魅せられてしまった とは言えないだろうかと。

だとすれば、それはもう人間の芯の部分に惚れたということであり、何かそれこそまた天変地異でも起きない限り嫌いになるなんて事は、今後一生おきなくないかと。

だから私は覚悟を決めた。

生来、私は他人や周りの出来事にあまり興味がない。ゆえに何かや誰かに熱狂することもほとんどなく、好きなアーティストや俳優はいても、推すという感覚はこれまで生きてきて1度も持ったことがない。それで40数年もやらせてもろて、特段不便も感じていなかったにもかかわらず、不惑も超えてのこの境地。人生何があるかわかんないもんだね面白い。

そこから約1年半 ー

R-指定に端を発した天変地異はその後もぐんぐん広がり続け、今ではどれだけ時間があっても足りなくなるくらい様々なことに興味が出て、なんとも忙しい毎日を送っている。推しを持つとはこういうことであったか。

余談
なぜ私のyoutubeにCreepyNutsが出てきたかというと、おそらくcrossfaithがラッパーをfeat.で迎えた楽曲を結構作っているからじゃないかと思うがどうだろう。となれば、crossfaith経由の入口から入ったのは、日本広しといえど私くらいのもんじゃないかと実は密かに思っている。

さらに余談だが、今年(2022年)に入り刃牙の特番でMCにR-指定/トークゲストがcrossfaithという完全に私のために作られたとしか思えない企画の放送があり、それはもう狂い死ぬかと思うくらいぶち上がったのは、また別の話。

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