常に「面白い」ゲームは、「楽しい」ゲームなのか?

「面白い」と「気持ちいい」、「楽しい」の話。Twitterから再録しています。

面白いってなんだ? というテーマは、みんな考えていることだと思います。でも「面白い」を追いかけすぎると、ゲームが息苦しくなっちゃうのではないか、という話です。

スマホゲーは面白い?

ゲーム制作初心者あるある、「とにかくゲームを難しくしてしまう現象」ってあるじゃないですか。拙作でもね。
これはチュートリアルデザインの問題もあるんだけど、もう一つ、緩急の問題でもあると思いまして。

一方で世のスマホゲームでよく見るものとして、「高レア出過ぎてバランス崩壊俺つえー現象」もある。
RPGであれば、ステータスのやり取りと行動選択の意志決定があって、それが面白さなのにバランス崩壊したらダメじゃん? と思う人は多いと思うんですよ。

で、思うわけです。「俺つえーって“面白い”の?」 いや、面白くない。だって無心でできるし、何も考えなくて良いし、やっぱり絶妙に調整されたゲームバランスを意志決定で乗り切るのが“面白い”でしょ、と。
じゃあなぜそんなゲームが流行るのか?

俺つえーは「気持ちいい」であり
「面白い」ではない

ここで某学会でかじった話ですが、ゲームを遊んでいるとき、人間には三種類の脳の状態が観測されたという。それがBoredom(退屈)とTired(疲れ)、そしてFlow(フロー状態)の三つ。文献は見つからなかった申し訳ない

フロー状態についてはこちら

具体的にどういう話かというと、「ゲームの難しさ」が「簡単すぎると退屈」、「難しすぎると疲れる」。その中間において、ある範囲でのみ「フロー状態」という極度の集中状態が観測された、っていう話です。

正しくはBoredomだった

先ほど「絶妙に調整されたゲームバランスを意志決定で乗り切るのが“面白い”」と述べたけど、これは言い換えると「問題」に直面しているときにこそ面白いという感情が発生する、ということで。つまり“面白い”ってのは“難しい”なんですよ。問題に直面しているわけだからね。さて、これを「Tired寄りのFlow」としましょう。

そうすると、"気持ちいい"である俺つえープレイは、「Boredom寄りのFlow」であると思うわけです。
これは日本語のニュアンスの話なんですが、気持ちいいはとにかくポジティブなワードで。一方面白い、っていうのは、困難に直面したときに「面白ぇじゃねえか……!!」って使い方もするんですよね。

「面白い」は「困難の解決」で、より難しいタスクで起こる感情。「気持ちいい」は「テンポの良いフィードバック」で、より簡単なタスクで起こる感情。「面白くはないけど、気持ちいい」遊びの極地と言えば、ハンドスピナーでしょう。一方「気持ちよくないけど、面白い」遊びと言えば、(初心者にとっての)ルービックキューブでしょうか。

それでは、具体的なゲームタイトルを例に、ゲームにおける「面白い」と「気持ちいい」のあり方を見ていきましょう。

『プリンセスコネクトR』が持つ"楽しさの緩急"

キャラクター育成・戦略ゲーム『プリコネ』についてはこちらの記事をどうぞ。

プリコネには多くのデイリータスクがあります。プリコネの各コンテンツに共通しているのは、「プレイ回数に上限がある」こと。簡単に言えばスタミナ制です。

その多くは「ポチポチゲー」で、各画面に遷移してポチポチと無心でタスクをこなしていくと、毎日一定量の育成リソースがもらえるわけです。

タスクの一つ「探索」は、一日数回のみプレイ可能な大量リソース獲得クエスト。クリアしたクエストをまるごとスキップできる「スキチケ」の導入により、ほんとにポチポチするだけでがっぽがっぽ

一方でそんな毎日のタスクの中に、ダンジョンやイベントの「高難易度ボス戦」が数回ほど含まれています。

期間限定ダンジョン「ルナの塔」。全70階層のダンジョンを、毎日限られたキャラ数で行けるだけ登っていきます。後半は毎戦毎戦頭を使って編成を練る、プリコネの「面白さ」の真骨頂

毎日ポチポチゲーだけではいつか飽きてしまうし、何をするにも頭をつかうのでは疲れてモチベが下がってしまう。

毎日のプレイの中に、ポチポチするだけで稼げる気持ちのいい時間と、より多くの見返りのためにより難しいタスクに挑戦する面白い時間が含まれている。
この二つの緩急が、「楽しいゲーム」の秘訣なんじゃないかな、というのが今回の話でした。

ソシャゲだけじゃなんなので例によって『ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド』の例をぶら下げておくと、物見の塔から周りを見渡して色々な建物を見つけたり、歩いてるだけでキノコやらいろんなアイテムが手に入るのは気持ちいい要素、ダンジョンを攻略したりボスと戦うのは面白い要素、という感じ。

ちなみに魔物の拠点を襲撃するのは、ちょうど気持ちいいと面白いの中間だと思う。RPGでは「面白い→気持ちいい」にだんだんと遷移させていくことでバランスを取っている例も多いですね。コマンドRPGならパラメーター上昇、アクションRPGならプレイヤースキル向上で。

短編ならいざ知らず、中・長編で「ずっと面白い」ゲームは、決して「楽しい」ゲームとは違うんじゃないかな、という話でした。もちろん需要が違うだけで、気持ちいい寄り・面白い寄りの需要もそれぞれあると思います。

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