いわきFC vs 町田ゼルビア (23シーズン第6節)
3連勝を目指すいわきFCと、5連勝を目指す首位の町田との一戦。
町田は、いわきFC戦までの4連勝中、全試合で前半に先制点を奪取している。いわきFCは、前半を0失点に抑えて先制点を奪い、試合を優位に進めたい。
試合結果
町田のGK ポープ、CB カルロス・グティエレス、池田の牙城を崩せず。首位を走るチームらしい、勝ち点1から3に持っていく勝負強さを見せつけられた。
いわきFC 0 - 1 町田ゼルビア
いわきFC: なし
町田ゼルビア: 黒川 (85分)
得点の匂い
いわきFCは、前節に負傷した山口に代えて永井が先発入り。町田は、オーストラリア代表活動で不在のミッチェル・デュークに代えて藤尾でスタートした。
ミッチェル・デュークが出場した前節の町田は、ロングボールを左サイドに供給して攻撃の起点を作っていた。CFのミッチェル・デュークとエリキが左サイドに集結して、ミッチェル・デュークがロングボールに競り勝ち、エリキ、平河がボールを回収してゴール前に手数をかけずに迫っていた。
今節、ミッチェル・デュークは不在。エリキはそれでも左サイドに流れてボールを引き出そうとするが、家泉、遠藤、そして江川がチャレンジ&カバーで自由にさせない。力強く、スピードのあるエリキに対して、組織でしっかりと守り、エリキから得点の匂いをさせなかった。
いわきFCからも、なかなか得点の匂いがしない試合だった。
いわきFCの攻撃の前には、町田のGK ポープ、CB カルロス・グティエレス、池田が立ちはだかった。有田や谷村は、今シーズンのこれまでの試合の中で、最もポストプレーの成功率が低かったように思う。
カルロス・グティエレスには、抜群のポジショニングと読みで幾度もインターセプトをされた。これぞ、助っ人外国人という存在感だった。
ポープには、これまでのいわきFCであれば、シュートまで持ち込めているようなシーンでも、速い出足でブロックやキャッチをされた。
当然、町田の中央のディフェンスが固いのは、織り込み済み。
中央が固いのであれば、CBを中央から外に誘き出そう、という気の利いた動きをしていたのは永井だった。5分、永井は、右サイドのポケットに走りこんでボールを受ける。中央で谷村のマークについていたカルロス・グティエレスは、谷村のマークを捨てて永井につく。カルロス・グティエレス不在のゴール前に山下が走りこんで、2対1の数的優位を生み出すのに成功している。
永井は、8分にも同じように、カルロス・グティエレスを引き連れてポケットに侵入しているので、村主監督がトレーニングで落とし込んでいることの1つではないかと思う。
そして、加瀬と嵯峨は、中央が固いのであれば、サイドのコンビネーションで、ペナルティエリアに侵入しよう、と奮闘していた。お互いに、何をしたいのか、何をしてほしいのか、共通理解が深まってきているのだろう、動き出しとコンビネーションで、サイドからペナルティエリアへの侵入シーンを作れていた。
次節以降も、強力なディフェンダーと対峙していくだろう。選手個人が成長を続けて、そしてチームの引き出しを増やし、いわきFCの得点が増えていく過程を見せてくれるに違いない。成長を見逃すことなく、追いかけていきたい。
エリキと交代出場=得点の法則
85分、町田はエリキに代えて、黒川を投入した。観戦している自分には「あのエリキをよく完封してくれた!」という安堵の気持ちが生まれていた。
しかし、その2分後に、その交代で投入された黒川に決勝ゴールを決められた。
第3節から今節までの全4戦で、エリキと交代で出場した選手(前節までの3試合は荒木)が得点を決めている。第4節は交代から5分後に、前節は交代から3分後に、そして今節は交代から2分後に。
黒川は、江川と遠藤の間にポジションを取り、遠藤の背中をとっていた。
江川は足を痛めていた。帰陣の時も足を引きずっていたので、足の状態はかなり悪かったと思う。江川の足の状態が良ければ、黒川とヘディングを競りにいけていたのではないか、高木和の声掛けはどうだったのだろう、黒川がフリーであることを、遠藤がもう少し早く認知できたのではないか、声援や雨で声が届かなかったのかもしれない。
首位を走るチームと、少なくとも勝ち点1を分け合うにふさわしい試合をしていただけに、悔しい敗戦となった。
選手の獲得
ブラジルのグローボ社によると、町田が支払ったエリキの移籍金は200万ドル(1ドル=130円で換算すると2億6000万円)だった。
さて、Jリーグの各クラブの決算は、Jリーグのホームページで開示されている。確認できる最新の21年度決算によると、J2のクラブ平均のチーム人件費は、J1の平均値に対して28%、J3の平均値に対して340%だった。あくまでこれは平均値の比較で、同じJ2のチームの間でも、収益や費用の大小さまざまなクラブがある。大倉社長は、今シーズン開幕前に以下のように話をしている。
いわきFCは今年、戦いの舞台をJ3からJ2に移した。平均340%大きな人件費をもつJ2のチームを相手に戦っている。
毎試合、興奮と感動をさせてもらっていることに感謝しかない。
いわきFCの選手獲得については、村主監督が前節のマッチレビューでこのように話をしている。
昨シーズンはJ3リーグで優勝し、今シーズンもJ2リーグで熱い戦いを見せてくれている。強化部、そして現場のコーチングスタッフの貢献は大きい。
そして、いわきFCのフィロソフィーと戦力を考えると、最適解であろう、縦に強い攻撃とハイプレスの戦術を選択している村主監督はお見事。
22年のJ3リーグ開幕前のインタビューになるが、村主監督は、注目しているチームを次のように答えている。
村主監督があげていたRBライプツィヒ、レッドブル・ザルツブルグの両クラブでスポーツディレクターを務めていたのがラングニックだった(現在はオーストリア代表監督)。ラングニックの選手獲得の方針は、いわきFCのそれに近いものを感じる。
また、記事の中には、いわきFCの試合をこういう視点で見ていこう、と考えさせてくれる示唆が多く含まれている。とても勉強になりました。
あとがき
我がチームの選手が痛んで苦しそうにしていると、同じように苦しい気持ちになる。試合に負けると、しばらく何も手につかず、インターネットやツイッターでサッカーの話題が目に入ると、そっと別の情報に切り替えたくなる。試合に勝った時は、いろいろな関連情報に触れて、自分の喜びの気持ちを増幅させる。
今の気持ちを一番盛り上げてくれる記事はこちら。心も男前の柿谷選手のコメントです。
試合の勝敗で一喜一憂する気持ちの振れ幅が、サッカークラブを応援することの醍醐味の1つだと思う。代表チームとは異なり、毎週、地元のチームの結果に一喜一憂できる。改めて、Jリーグの理念、またいわき市にいわきFCを設立してくれたことに感謝をしたい。
さて、次節はアウェイで岡山との対戦。岡山はこれまでの7失点のうち、セットプレーまたはクロスからの失点は5。いわきFCはこれまで6得点のうち、セットプレーまたはクロスからの得点は5。
いわきFCの得点と、選手の笑顔が見れることを楽しみに、応援します。
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