見出し画像

データで考察する23シーズンのいわきFC (第14節まで)

初のJ2リーグを戦ってる23シーズンは14節まで終了した。全42節のうち、ちょうど3分の1を戦って、3勝2分9敗、全22チーム中、22位に位置している。
本稿では、今期のこれまでの戦い、そして今後の期待を、データで考察する。主なデータは、Football LABから引用している。情報の豊富さや速報性、独自性や創造性など、大好きなサイトです。

23シーズンの目標設定

JFL時代の21シーズン、「勝ち点70、70得点30失点」という目標が、メディアを通して共有されていた。(結果は、勝ち点71、65得点28失点で昇格を勝ち取った)

優勝や昇格などのゴール設定に加えて、そのために必要な数値目標が共有されていると、サポーターには(少なくともぼくには)、チームがうまくいっているのか否か理解が進む。21シーズンの例であれば、全32試合だったので、数値目標を達成するためには、2得点以上で1失点(未満)以下の試合は良し、3得点しても2失点すれば、勝ったけれどチームは満足していないな、といった具合に。

J3で戦った22シーズン、J2で戦っている23シーズンの、サッカー面での目標は公にはなっていないと思う。(ぼくが見逃していたら、こっそり教えてくださいね)
23シーズンの目標について、選手個人の発言は見聞きしたが、クラブの目標はどのような設定がされているのだろうか。観客動員数など、経営(あるいは運営)面の数値目標は、メディアやチーム広報を通してサポータも目にする機会はあるが、ぼくはサポーターとして、経営よりもサッカーのほうに関心を寄せている。(ビジネスパーソンとしては、Jクラブの決算情報を眺めたりして、経営にも関心は持っています)
サッカー面の目標も、当然、チーム内では設定されているはずだ。その一部やヒントでも、21シーズンのように公開されたら良いなと思う。

目標設定について、元日本代表監督の岡田武史氏は、インタビューで以下のように話す。

「大事なことはチーム全員の意識を一つの方向に向けることです。そのためにまずは目標を設定します。例えば,優勝を目指すと話すだけでは,ダメなんです。いかにして,それを選手自身の目標にさせるかです」 選手に対しては,対戦相手をAランク,Bランク,Cランクに分けて,それぞれのランクに対して,勝率何割で勝ち点がいくつ,トータルの勝ち点をこれだけとれば優勝すると,具体的な数字をあげて話す。

引用元:月刊人事マネジメント (http://www.busi-pub.com/pdfsp/0710sp.pdf)

引用した記事とは別に、だいぶ前になるが、岡田氏の講演を聞く機会があった。ぼくの記憶が正しければ、横浜FM時代は、シーズン前に分析して設定した勝ち点、得点、失点に対して、実際の結果に大きな差異が生じなかった、とお話をされていた。

23シーズンのここまでの評価

前項で述べたように、いわきFCのクラブとしての、23シーズンのサッカー面の目標を、ぼくは確認できていない。
従って、目標に対しての進捗率ではなく、J3優勝をした22シーズンとの比較から、これまでの戦いを考察する。

得点が減り、失点が増えた

結果や順位に直接影響している数値になる。得点だけが減ったのではなく、失点だけが増えたのではなく、得点が減り、そして失点が増えている。

22シーズン平均得点(J3リーグ): 2.1
23シーズン平均得点(J2リーグ、第13節まで): 0.8

22シーズン平均失点(J3リーグ): 0.7
23シーズン平均失点(J2リーグ、第13節まで): 1.4

第14節までに、0-1で敗れた試合が5試合。スコア的には惨敗ではなく惜敗。
今シーズンこれまでの平均得点は0.8なので、J3リーグ時代の2.1とまではいかなくても、1以上に持ち上げることで、勝ち点を伸ばしていきたいところ。

得点に関するデータ

まず、Football LABが集計しているAGIをシーズン比較する。(Football LABからデータを引用)

22シーズン AGI: 64.8
23シーズン 第13節まで AGI: 63.6

「AGI」は「KAGI」とは逆に、
- 攻撃時間のうち、相手ゴールに近い位置でボールを持っていた時間の割合が高い
- 攻撃が始まってから、敵陣のペナルティエリアまで到達するのにかかった時間が短い
場合に高い評価となるように指標化しています。

引用元:Football LAB「KAGI,AGIとは」

攻撃で相手ゴールに迫るまでの時間、またその頻度(時間)は、22シーズンと大きな差は見られない。相手ゴールまで、ボールを運べている
(そもそも、この60以上という数値がどういうレベルなのかというと、22シーズンはJ3リーグで断トツの1位、今シーズンは第13節終了時点で、秋田に次ぐ2位。いわきFCらしさ、を表す指標の1つ。)

ボールを相手ゴールまで運んでからの、ペナルティエリア侵入回数、シュート数、枠内シュート数は、22シーズンと比較すると、それぞれ数値を落としている。

ペナルティエリア侵入回数(試合平均)
 22シーズン: 14.8 (1位)
 23シーズン 第13節まで: 12.5 (6位)

シュート数
 22シーズン: 18.8 (1位)
 23シーズン 第13節まで: 13.1 (5位)

枠内シュート数
 22シーズン: 5.6 (1位)
 23シーズン 第13節まで: 3.3 (12位)

そして、次に比較をしたいのが、ゴール期待値と実際のゴール数。

22シーズン ゴール期待値: 1.984
22シーズン 平均ゴール数: 2.03 (期待値に対して +0.046)

23シーズン 第13節まで ゴール期待値: 1.309
23シーズン 第13節まで 平均ゴール数: 0.77 (期待値に対して -0.539)

(22シーズンのトップ5、23シーズンの第13節終了時点のトップ5は、いずれのチームも、平均ゴール数がゴール期待値を上回っている)

データスタジアムが保有する過去複数年のプレーデータをAIに学習させ、2019年度以降の全シュートに対して期待値を算出しました。AIは過去のシュートに関する情報とシュート結果の関係性を学ぶことで、未知のシュートデータに対してシュート結果の予測ができるようになります。

引用元:Football LAB「ゴール期待値とは」

ここまでの数値の印象はいかがだろうか。J3リーグからJ2リーグに昇格をして、より強い個、高度な守備戦術のチームと戦っているので、J3リーグの時より数値は落としているが、AIが算出するゴール期待値は1.3以上ある。これはJ2リーグで6位の数値。
ぼくは、十分に戦えているが、あとちょっとのところで勝ち点を落としている印象です。

失点に関するデータ

まず、Football LABが集計しているKAGIをシーズン比較する。(Football LABからデータを引用)

22シーズン KAGI: 65.4
23シーズン 第13節まで KAGI: 51.9

「守備の際にどれだけ相手を前進させなかったか、相手を自陣ゴールに近づけなかったか」という観点から、チームの新守備指標「Keep Away from Goal Index」、略して「KAGI」を集計して公開します。具体的には、
- 相手の攻撃時間のうち、自陣ゴールから遠い位置でボールを持っていた時間の割合が高い
- 相手の攻撃が始まってから、自陣のペナルティエリアまで到達するのにかかった時間が長い
場合に高い評価となるように指標化しています。

引用元:Football LAB「KAGI,AGIとは」

22シーズンの65.4から、23シーズンの51.9への変化は、誤差の範囲ではなく、意味のある差であろう。22シーズンは圧倒的1位だったが、23シーズンは第13節時点で5位の数値。昨シーズンと比較すると、より速く、多く、自陣に迫られている
これは、これまで対戦したチームが披露してきた、いわきFC対策の結果ではないかと思う。いわきFCは、相手陣の攻撃は、ボールサイドに人を集める。相手は、ボール奪取に成功すると、ボールと逆サイドに早くボールを展開して、一気にいわきFCのディフェンシブサードまで前進する。23シーズンは、第13節までに18失点をしている。3分の1の6失点はクロスからの失点だった。22シーズンは、1年間でクロスからは7失点。

そしてもう1つ、被ゴール成功率を比較する。被ゴール数÷被シュート数により算出されている。

22シーズン 被ゴール成功率: 7.9%
23シーズン 第13節まで 被ゴール成功率: 12.7%

J2チームのストライカーの質がJ3時代のそれとは違うことも要因ではあると思うが、シュートコースを制限する立ち位置を取れていないことが多いのではないかと思う。

15節からの期待

本稿は、第14節の清水戦、1-9で敗戦の前に書き始めた。清水のボールスピード、そして雨のコンディションでボールを止める技術の前では、現状のいわきFCのプレスやストーミングは無効化された。フィットネスだけで戦うのは厳しいのが現実。清水とのリターンマッチまでの、いわきFCのチームとしての、そして個人の成長を追いかけましょう、現場の選手やコーチングスタッフは、下を向かず、サポーターのために戦い続けてくれるはずです。

守備では1対1の勝率を上げてほしい!

清水戦の解説だった西部さんは、いわきFCの自陣での守備について、守備ブロックをもう少し組んでも良いのではないか、MF陣が最終ラインに吸収される頻度が多いので、最終ラインでボールを弾き返しても、セカンドボールを清水に回収されている、と指摘をしていた。ツエーゲン金沢戦のレビューのあとがきで、ぼくは以下のような印象を記した。

群馬のクロスボールの対応に注意したいところ。ゴールラインに並行ではなくマイナス方向にクロスを入れて、そこに後方から走りこんでシュートを決めたシーンをハイライトで見た。いわきFCは、速攻を受けて帰陣するとき、ボランチの山下と宮本もDFラインまで下がって吸収されることが多く(家泉や遠藤がSBのカバーで中央を空けていることもあって)、マイナス方向にクロスを上げられると、全員で身体を投げ出してシュートブロック!というシーンが何度かあった。クロスはフリーで上げさせない、ゴール前だけではなく、後ろから走りこむ選手のケアも忘れずに。

サイドでの1対1で破られることが多いと、CBは持ち場を離れてサポートに行く、そのCBが1対1で止めきれないと、ボランチがゴール前のスペースを埋めなくてはならない。4-4の守備ブロックが崩れている。この間、有田や谷村は、本当に、献身的に勤勉にプレスバックしてスペースを埋めようとしてくれている。もう少し、有田や谷村には、敵陣やゴール前で使うパワーを溜めさせてあげたい。フィールドにいる全選手が、1対1の勝率を上げられるようにトレーニングを重ねてくれていると思う。1対1で止めた、ボールを奪いきった時は、大きな声援を送って選手を称えていきたいです。

GKからのビルドアップを(時々で良いので)見たい!

清水戦で特に印象に残ったことの1つは、ゴールキックを含むGKからの攻撃。相手陣にロングボールを放り込むが、ボールの競り合い、そしてこぼれ球の奪取の局面で、勝率が低かった。対戦相手のスキルやフィットネスよって、あるいは天候によっては、十分にありうることで、気持ちだけでカバーできない部分もあると思う。
時々は、GKからのビルドアップ的なものも見てみたい。例えば、山下がサリーをしてボールを受けて、嵯峨に配球。嵯峨がサイドから、有田や谷村にロングボールを配給する。対戦相手は、GKから直線的なロングボールの対応は、いわきFC戦の前にトレーニングしているように思うので、ロングボールの距離や、角度(GKからなのかサイドからなのか)で変化をつける。

もっとゴールを見たい!

数値の上では、J3時代ほどではないが、相手ゴール前に運び、シュートも打てている。いかにしてゴールをゲットするか。

まず、岩渕、有馬の復帰が待たれる。岩渕と有馬のゴールゲットを見たい!22シーズン、いわきFCの得点トップ3は、有田(17得点)、岩渕(10得点)、有馬(8得点)だった。岩渕自身は、J2リーグで暴れたくて、うずうずしていると思う。岩渕は22シーズン、チームでシュートを一番多く打っている(83本)。岩渕の積極性がチームに勢いをもたらしてくれるはず。

永井、加瀬のゴールゲットを見たい!薄眼で見ると、永井に見えてくる動画を共有します。ボールを左にちょっと動かして、DFにサイドステップをさせて足を開かせる。そして、股下を狙ってシュート。GKの反応が遅れてゴール!永井、加瀬に限らず、ほかの選手も含めて、マン振りしてシュートブロックにあうことが多い印象なので、こういうテクニカルなゴールも見てみたいな、と思います。


山下キャプテンの直接フリーキックゴールを見たい!
キックのフォームから髪型まで、中村俊輔さんにとても似ていると、ずーっと思っています。特に、前髪が長いときのキャプテン!

最後に

AFC決勝の浦和のコレオは圧巻でしたね。清水戦は悔しい結果でしたが、こんな時には、選手との連帯する想いを伝えられるような演出をして、選手を後押しできるると良いですね。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?