Sea

空想の中を泳いでいた。車窓から差し込む細い光を浴びながら自分の中へ潜って安らかに浮いていた。何か心地よい夢を見ていて、ただ身を委ねていた。1秒前まではそこにあったはずなのに、目が醒めると全部忘れていて、残っているのはあの感覚だけで、やっぱり夢だったのかーってぼんやり思う。空想と現実が入り混じって、境目が分からなくなる。バスの怪物みたいなエンジン音が心の深くを走る。ずっと雨だったらいいと思う。雨で霞んだ雷の音が響く都市だけを見ていたい。光に煌めく都市なんか私の知ってる都会じゃないし、銀色の細い針を見ていると落ち着く。同じ温度で、同じ音で、雨と自分が融合していくような錯覚に陥る。梅雨生まれでよかった。好きな季節ではないけど、誰にでも同じ優しさだと思う。やっぱり私達は繋がっている。あの海の向こうにたくさん人がいてまた都市があって、高層ビルが立ち並んでいたり寂れた村があったりする。こんなの全然離れてなんかない。何をしてても寂しく感じるのは、なんか、いつか全部なくなるって分かってるから。だけど光に照らされる塵はきらきら輝いていてうつくしい。浄水場とか発電所とかに吸い込まれそうになる。こんなにインターネットに接続してると、私の友達はあの電波塔なんじゃないかなって思えてきて、けどそれはそれですごくいい。
「全ては自ら発光している。」
退廃した街でその先には光がある。魚みたいに鱗を光らせながら泳いでる。

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