新聞配達
履歴書、職務経歴書何十枚と書いてきた。
本当に面倒臭い作業で、毎回これで最後と思いな
がら応募し、面接までいかせてもらえたらあり
がたいと心底思う。
自分の気持ちがぶれたままなのが、続かない最大
の要因である。
お金を頂いて働くことに、なにを今更ぶれている
のか。
会社の人達にも随分迷惑な話である。
辞めた中には、またいつでも戻ってきてと言って
頂けたところがある。
一つは2週間で辞めた事務と新聞屋さん。
新聞屋さんは唯一8ヶ月続いた。
お給料は少ないが、辞めるのは迷った。
何故辞めたかというと、体が毎日疲れていた。
寝不足からの疲労。
自転車での配達で、坂道があり膝にきた。
雨も嵐も休めずに、休みは不定休。
始めて2週間くらいの時、夜中3:00前に店に向かっ
いると真っ暗な住宅街に30前後くらいの男性がい
た。
たまにそれくらいの時間に人に会うこともあるが
、大概お互いチラッと見る程度。
でもこの人は違った。
自転車で通り過ぎようとした自分に向かって走っ
てきた。全速力で。
びっくりした自分に向かって、
「何だあ、何見とんじゃ、こ◯すぞ、おら━」等
今まで普通に生きてきて言われたことの無い暴言
を叫びながら、追いかけてきた。
夜中の住宅街で大声が響き渡る。
早くこの場から、この人から
逃げなければと必死に自転車を漕ぎ、あと一歩の
ところで捕まるという瞬間、下り坂に突入し難を
逃れた。
後ろにはまだ口汚い絶叫が響き渡っていた。
誰か住宅街の人が通報してと祈る思いで振り返る
ことも出来ずに、坂を下り続けた。
警察にはその後通報はしなかった。
出来なかった。自分の身におきたことが暫く信じ
られず、恐怖で何も出来なかった。
1週間近くしてから店長に言った。店長が警察にこ
の辺りのパトロールを強化するよう伝えると言っ
ていた。
アラフィフの女だから暴言を吐かれたのだろう
か。
あの場で声は全く出せなかった。
その後も新聞配達は続け、ト━タル8ヶ月。
夜中の移動は毎日恐怖だったけど、
配り終えた後は本当に清々しかった。
だから続けられたし、続けたかった。
心の傲慢さから、結果辞めるという選択をした。
辞める先に何かあるのではないか。
辞めたら辞めた自分が残っただけだった。
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