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[靴を作る仕事の話]サンプルができるまで

フットバンクスインターナショナルの仕事は、ブランドやアパレル会社といったお客さまから靴づくりのご依頼をいただき、その内容に応じた靴を企画〜製作することです。

靴の依頼方法は、お客さまによってさまざまです。
いちからデザインし絵型を書いてくれるお客さまもいれば、参考にしたいイメージだけの場合もあります。

靴の製作は「製法」も重要なため、お客さまと細かな仕様を確認しながら進行していきます。デザインだけでなく、上代や生産足数も確認した上で、生産に適した国や工場を選びご提案します。

今回のお客さまは、大手のアパレル会社です。参考イメージをご持参の上、特殊なスニーカーを作りたいというご依頼でした。

10年前は個性的な靴が多く、細部までデザインにこだわるデザイナーが多くいました。しかしここ数年はデザインの独創性より、素材感や仕様、履きやすさなど総合的な完成度が重要なポイントになっています。

依頼内容を把握し、設計する

参考イメージはありますが、当然そっくり同じに作るわけではありません。どのようにオリジナル性を持たせるかが重要です。

お客さまのご要望は
・アウトソールには、※Vibramを使いたい。
・脱ぎ履きがしやすいように、ファスナーを付けたい。
この2点です。

※Vibramとは、ソール専門のメーカーです。
こちらの記事で詳しく紹介しています。

通常、靴は大きく分けると
・アッパー(足を覆う部分)
・アウトソール(地面と直接触れる接地部分)
この2つのパーツで構成されています。

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しかし今回製作する靴は「アッパー」「ミッドソール」「アウトソール」と3つのパーツで作ることになりました。

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ミッドソールが入ることで、制作過程の難しさは倍増します。
アッパーとアウトソールを貼り合わせるだけではなく、アッパーとミドルソールを貼り合わせた後、さらにアウトソールを貼るからです。

それぞれ異なる素材のため、使う糊も素材に適したものを選ばなければなりません。またそれぞれの貼り合わせにズレが発生しないよう、設計も重要になります。

素材や仕様を決めていく

1つ目のオーダーは「アウトソールにはVibramを使いたい」です。
まずは使用したいVibram底を選んでもらいます。

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選んだ底はこの2つ。最終的には1つに絞ります。

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底だけ見ても決め難いので、お客さまが仕上がりをイメージしやすいように完成の合成写真を作ります。

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2つ目の「脱ぎ履きしやすいようにファスナーを内側に付けたい」というオーダーは、アウトソールにボリュームがあるので、コンバットブーツのようなフロントファスナーをご提案しました。

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ファスナー部分は合成写真ではなくサンプルを手縫いで制作し、実際に脱ぎ履きの確認もしてもらいます。

ボリュームがあるアウトソールには、ファスナーを品良く隠すように縫い付けるより、露骨に見せる仕様の方がアウトソールとのバランスがとれ、雰囲気が良くなります。

こうしてアウトソールも細かな仕様も決定しました。
素材は、簡易的な防水も兼ね備えたいとの事で、ナイロン系を採用します。

次は指示書の作成です。

誰が見ても作れるような、的確な指示書を作る

完成イメージはPhotoshop、ファスナー見本は手作業、そして指示書はIllustratorとExcelを使用して作成します。

今回の靴は設計が重要なため、工場に理解してもらうため指示書も細かく、多くなります。

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お客さまのご依頼はハイカットタイプのスニーカーでしたが、追加でローカットタイプも製作したいとのオーダーがありました。

そこで実際に完成イメージに近い靴にマスキングを貼り、その上に「ローカットの場合はこう」と分かるよう線を入れます。

併せてイメージ画像も作ります。

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手作業だけでなく、PCでの作業も必要

指示書ができたら、実際に生産してもらう工場に送り、サンプルを作ってもらいます。

発注から数週間で1st サンプルと呼ばれる試作品が届き、その後も修正や改良のやりとりを繰り返します。こうしてやっと、最終サンプルが到着します。それがこれです!

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コロナの影響もあり、作業を円滑にするために手作業・PC作業、どちらも必須です。
海外生産がほとんどなので、15年前はサンプルを担ぎ現地に赴いて商談し、その場で指示したものですが、今はPCを使いリモートでの指示に変わりました。

デザインや売り方だけでなく、モノづくりに携わる全てのことが時代と共に変わってきています。

しかし、昔ながらのサンプル制作も、個人的には好きな仕事です。それはまた別の機会にご紹介します。

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