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日野浩志郎(作曲),池田昇太郎(詩・構成)「歌と逆に。歌に。」@クリエイティブセンター大阪

8/17、「歌と逆に。歌に。」@クリエイティブセンター大阪へ。

リズムの持つ可能性を拡張変位させている日野くんが「言葉」に対してどう取り組んでいるのか、見逃せなかった。
予定が合わず一度しか観られなかったが。

最初は詩の朗読とそのバックグラウンドとしての音楽というよくあるタイプのもので目新しいものはないかもしれないと思っていたが、中盤よりその浅はかな考えがひっくり返った。

テーマとなっている小野十三郎という詩人は、不勉強で全く知らなかった。
今回は著作権の関係で小野の詩の使用は制限されていたそうで、小野の世界にインスパイアされた池田昇太郎さんの詩が朗読される。

街としての「大阪」が浮かび上がるような詩で、詩にも登場する葦や(多分川岸に群生する)植物を実際に配置した舞台のビジュアル(それをうまく浮かび上がらせる照明も良かった)とともに「都市」というよりも「街」である大阪のイメージが流れるように耳に入ってきた。

お笑いが大阪の文化と思われて久しい。確かにお笑いもそうかもしれないがそれだけではない豊穣で上品な文化が大阪からどんどん失われているようだ。
今の大阪のお笑いがムラ社会の媚と諂いでしかないのと同様、多くの都市文化が媚と諂いの上に立つ多くのムラ社会の集まりでしかなくなった。

そうではない有機的なつながりの「街」であった大阪のイメージを想起させる詩だったと思う。

その詩が、(多分)日野くんの作曲により、一つの単語のそれぞれの音節の間隔を微妙に空けて、しかも男女2人の完璧なユニゾンで発音される時、その単純な単語が様々なイメージを持って耳に入ってきた。

日野くんの追求するリズムの可能性の拡張と今回の池田さんの言葉との共演はひとまず成功だったのではないか。この試みはこれからも続くようなので次はもっと思いもかけないアプローチで言葉も拡張変位させてほしい。

西川文章くんによる音響も素晴らしかった。特に中川くんのチェロは今まで聴いた中では一番美しかった。

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