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なぜ「デス・ストランディング」は面白いのか? 考察してみた

はじめに

「DEATH STRANDING」をクリアしました。

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正直、ここまで「早くクリアしたい!」と思い、楽しめるゲームとは思いませんでした。
しかし、クリア後は1本の映画を見終わった様な、清々しくもこの物語が完結してしまった寂しさを感じていました。
つまり、それだけのめり込んで楽しめたということです。
僕もご多分に漏れず、デスストに魅了されたプレイヤーの1人となりました。

ただ正直、TGS2019でデモプレイを見た時は、「これは面白いゲームなのか・・・」という第一印象でした。

しかし、いざプレイしてみると本当に面白かった。本当に・・・。
と同時に、「なんで地味な配達ゲームなのにこれほど面白いと言えるのだろうか・・・」とモヤモヤした気持ちもありました。
この気持ちをはっきりさせるために、面白かった理由を考察してみます。

3つの観点からの考察

デスストは「お使いゲー」「配達ゲー」と言われています。
過去のRPGやオープンワールドゲームなどでは「お使いはめんどくさい」と口を揃えて言われています。
(その印象が刷り込まれているためか、僕も最初は「これは面白いのか・・・?」という感想を抱いたわけです。)
ではなぜ配達が苦ではなく、むしろ面白かったのか?
ゲームの要素ごとに見ていきます。


①ストーリーデザイン

まずはストーリーデザインについて。
デスストのストーリーは、本当に「配達したい!」と思わせるようにデザインされたストーリーになっています。

超ざっくりに言うと、デスストは「アメリカを救うために配達する」というストーリーです。

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アメリカの東海岸から西海岸に向かって荷物を運んで、都市と都市を繋ぐ役目を主人公が負っています。
だから、プレイヤーが配達する目的は、「アメリカを救うため」
そのため、1回1回の配達がアメリカを救うために超重要で、依頼主からめっちゃ感謝されます。
これは荷物を運んだプレイヤーも嬉しいわけです。
「荷物を運んだだけなのにこんなに感謝されるのか」と思わずニヤけてしまいます。
だから、「西海岸までちゃんと荷物を運んでアメリカを救いたい」という気持ちが湧いてくるわけですね。
この様に、ゲームプレイの目的がとてつもなく大きな目的と紐付いていると、プレイモチベーションを維持することができます。
これは他のゲームで言えば、「マリオがピーチを救うためにジャンプする」「リンクがガノンドロフを倒すために謎解きする」です。

さらに、配達をすればするほど、ストーリーの序盤で見せられたフラグがどんどん回収されていきます。
「アメリカを救う」という大きな目的を達成する道程でフラグが回収されていくので、これはやめられずに「もっと、もっとゲームを進めて先を知りたい」となるわけです。
だから、配達した時の喜びはゲーム的な成功・達成とは別に「フラグが回収されてストーリーが進展する」というところにもあり、イコール「配達していて面白い!楽しい!」に繋がっていきます。

②ゲームデザイン

もう1つはゲームデザインです。
1回の配達の中に様々なジレンマが組み込まれていることが、面白さを作り出していると思います。

まず、この動画を見てみてください。

この動画の冒頭で語られているように、
・依頼された荷物をどこに持つか
・持っていく装備はどうするか
・荷物の重さ
・左右のバランス
・背中に積み上げる順番

と、配達を開始する前段階でさえ、これだけのジレンマが存在します。

主人公が持てる荷物の数には限界があります。

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そのため、希望通りの荷物が全て持てる訳ではありません。
「敵に備えて武器を多めに持っていくべきか、険しいルートに備えて梯子を持っておくべきか・・・」と考えつつも、
依頼された荷物も運ばなくてはなりませんから、確実に荷物の取捨選択を迫られます。
そうして悩んだ上で、最終的に配達に成功すると、とても嬉しいわけです。
「(自分で重くしているにも関わらず)重い荷物を運べた!」という達成感と同時に、
「備えておいた武器(及び梯子など)を上手く活用できた!持っておいて良かった!」という感情が沸き起こり、1回の配達にとてつもない達成感が感じられます。

また、道中にもたくさんのジレンマがあります。
まずは「ルートの選択」です。
「安全ぽいこのルートを通るべきか、道なき道を行ってショートカットしてみるべきか・・・」とジレンマが起こります。

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そして、「装備(道具)の選択」
険しい道に対して、「今梯子を使うべきか、ここは使うのを控えておくべきか・・・」

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敵に対して、「この武器を今使うべきか、温存しておくべきか・・・」というジレンマです。

さらに、「落とし物の扱いの選択」があります。

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配達をしていると、主人公の行く道行く道に様々な落とし物が落ちています。(ストランド・システムによるもの)
これらの落とし物は、拾って依頼主に届ければ配達人としての評価が上がるし、また素材であればリサイクルすることで武器作成の素材に変換できます。
この落とし物に対して、「今拾うべきか、無視して行くべきか・・・」というジレンマが発生します。
この様に、ただ単純に配達するのではなく、道中様々な選択を迫られるため、飽きずに依頼主まで届けることができるのです。

1つの配達の中にこれだけのジレンマが含まれているため、その選択を考えることが楽しいし、思い通りになれば嬉しい。
これらのジレンマについてはランダム要素もないため、失敗しても理不尽感は薄く、イライラもしないです。
「荷物の重さ、持てる数という概念をとてもリアルにした」と評されていますが、まさにこのジレンマを生むために、リアルにしたのだと考えます。

③フィードバック

「デスストの配達は楽しい!」と思える要素として、フィードバックという要素も大きいと思います。
デスストのフィードバックには、次のものがあります。

▼道中
他プレイヤーからのいいね通知
BBからのいいね通知

▼配達後
・いいいね評価
・S~Cの総合評価

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・チャート評価(配達人グレード)

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まず、自分が行った配達に対して、これだけたくさんの種類のフィードバックが返ってくるので単純に嬉しいです。
さらに注目すべきは、これらのフィードバックはそれぞれ評価の単位が違います。
・道中の「いいね通知」は、「○○さんがあなたの○○にいいねしました」と、1つ1つの単位でいいねが届きます。
・配達後の「いいね」は1~100単位の「いいね」で評価されます。
・S~C評価は4段階という大きな分け方での評価です。
・チャート評価は1~10単位のポイントが蓄積されて評価が上がっていきます。

この様に、様々な単位でのフィードバックをもらうことで、それぞれの評価軸で「もっと良い評価を得たい」と、配達に精が出ます。
さらにチャート評価は蓄積型のフィードバックで、配達すればするほど評価が上がっていくので、次の配達へのモチベーションにつながります。
このようにして、様々な単位でのフィードバック蓄積型のフィードバックをしてあげることで、プレイモチベーションを上げていると思います。

これらのフィードバックシステムを見て、僕は音ゲーの評価制度と似ているなと感じました。
「パーフェクト」の数、コンボの数、スコア、総合評価、プロデューサーランク、とこんな感じで、様々な単位でのフィードバックがあります。

様々な単位での評価は「1段階評価だと、良いプレイもあったけどB評価か~」となるところが、
「このプレイが良かったからここの評価は良い!でも全体的には良くなかったからB評価だった」と、評価時に細かいプレイを拾ってくれるのが、
「良いプレイができなかったとしても報われた」と感じさせてくれるため、プレイモチベーションが落ちにくいのかな、と思いました。


以上、ストーリーデザイン、ゲームデザイン、フィードバックの3つの観点からデスストの面白さを考察してみました。
(ストーリー自体の面白さは言わずもがなですが)これらの要素がガッチリ噛み合ったからこそ、ゲーム全体の評価として「神ゲーだ…」となったのだな、と思います。
そしてその全てを総指揮した小島監督凄すぎる…(感動)

ということで、考察は以上にしたいと思います。


おまけ

考察とは別ですが、デスストをプレイしていて個人的に興奮したところを紹介します。

・映画的映像表現
最初、この表現に立ち会った時は「何が起きているんだ?」と戸惑いました。
走っていると曲名が表示され、カメラが引いて音楽が流れ出すのです。

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しかし、主人公が1人で険しい山道を走っている情景と、少し悲しげな音楽がとてもマッチして、感傷的な気分になりながら配達をすることができました。
ゲームプレイをここまで感傷的に表現して、かつ配達の格好良さを最大限にできるのか・・・とひたすら感動していました。

音楽は主に、驚異の少ない長い道を歩いている時に流れます。
特に刺激のない道に対して感情を揺さぶるために音楽を入れていることは分かりましたが、そのタイミング、選曲、カメラワークが最高でした。
ゲームの後半になると、むしろ「音楽流れないかな…」と期待しながら配達したものです。

・自然
単純に自然が綺麗で、それだけで配達していて楽しかったです。
特に、遠くから見る雪山はその壮大さに感動しました。
しかもその山に実際に登れるとなるともうテンション上がりまくりでした。

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