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初心者が陥りがちな独りよがりなシナリオを避けるには?
自分だけが面白いと思うシナリオを書くのは難しいことではない。
たとえばクライマックスシーンで感動のドラマが展開されるとして、その伏線もそこに至る構成が全然されていなくて、ほとんどの人に伝わらなくても、書いている本人の中では成立しているから、本人は感動できたりする。「傑作だ!」といって自分で書きながら泣いてしまうこともあるだろう。
要するにそれは「ただの自己満足」みたいなものなのであるが、初心者は陥りがちであり、経験者だって陥ることがある。
これはシナリオにおける「魔境」である。
あたかも悟ったかのように、すごい傑作を書いている気分になって書いていてノリノリだが、他人が読むと全然よくわからない。
恐ろしいがよくあることなのだ。
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特に初心者の場合、自分が書きたい断片的なエピソードを羅列しているだけで、それらが一貫した構成やログライン、効果的なエピソードの配置になっていない場合が多い印象を受ける。
プロットがキャラクターを動かしてしまっていたり、物語上起こしたい出来事を起こすために偶然やご都合主義を連発してしまったりする。
これを避けるためにはどうしたらよいのか?
この問題を解決するためのアプローチをいくつか提案したい。
この問題を解決するためのアプローチ
1. ログラインの作成
まず、シナリオの基礎となるログラインを明確にする。ログラインはシナリオ全体の核となる部分であり、これを元にしてエピソードを構成する。ログラインには主人公の主要な物語上の貫通動機とそれに対する障害、そして何に最大に葛藤するかを入れ込むと経験上上手くいく気がする。
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ログラインの例: 「正義感の強い青年が、腐敗したマフィアの支配する都市で自らの目的を達成するために戦い、強力な力を得られる悪の道への誘惑に葛藤しながら、最終的には自分自身の内なる葛藤を乗り越え正義を成し遂げる」
2. 三幕構成の採用
シナリオを三幕構成に沿って整理する。この構造はシナリオの流れを明確にし、観客にわかりやすい物語を提供する。
- 三幕構成の概要:
- 第一幕: 設定 (キャラクター紹介、状況設定、テーマ提示)
- 第二幕: 対立 (葛藤の深化、サブプロットの展開、ミッドポイント)
- 第三幕: 解決 (クライマックス、解決、エピローグ)
これは別に三幕構成じゃなくても「起承転結」でも「序破急」でもいいだろう。大事なのは効果的に構成することだ。気の赴くままに書いて面白くなるのは天才だけだと思う。
3. エピソードの配置
表現したい、描きたい各エピソードを三幕構成の中でどこに配置するかを考える。エピソードがシナリオ全体のテーマやキャラクターアークにどう関与するかを意識する。
4. フィードバックの活用
他人からのフィードバックを積極的に求める。外部の視点から見ることで、エピソードの一貫性や構成の問題に気づくことができる。最近だとAIも役に立つが、まだ不完全なのでできれば経験者の助言を求めるのが良いだろう。感情論ではなく論理的客観的に判断し、なおかつ、こちらのやりたいことや表現したいことを傾聴してくれる人が良い。こちらのやりたいことを傾聴せずに「こうするべきです!」という人だとこっちも混乱してしまうことがあるのでちょい注意。
5. リビジョンと編集
シナリオは一度書き上げて終わりではなく、何度も見直し、編集を行うことが必要。エピソードの配置や内容を修正することで、全体の一貫性を高める。
私の場合、紙に印刷したりして読み直すと違った視点から読めることがある。最近だとPDFにしてGOODNOTEなどでメモりながら読んだりする。
時間をおいて読むことも新しい視点から読めるきっかけになる。
具体例のアプローチ
以下に、上記の方法を取り入れた具体的なシナリオ構成例を示す。
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ログライン
「若い桃太郎が、鬼ヶ島に住む邪悪な鬼を倒して村を守るために旅立ち、仲間と共に冒険を通じて、己の幼さや自分勝手さゆえに対立や衝突で葛藤しながら成長していき、友情や勇気を学び、仲間と共に最終的に鬼を打ち倒す。」
三幕構成
第一幕: 設定
キャラクター紹介: 桃太郎が桃から生まれた不思議な子供であること。村の人々に育てられ、愛されている。
状況設定: 鬼ヶ島の鬼が村を襲い、村人たちが困っていることが描かれる。桃太郎は自分に力があることを自覚しているが鬼ヶ島に向かうことに恐れやためらいも持っている。
きっかけ: 村を守るために、桃太郎が鬼ヶ島に行って鬼を倒す決意をする。そのために何か決意を決める出来事が起こる。
第二幕: 対立
仲間集め: 桃太郎が旅の途中で出会う動物たち(犬、猿、キジ)と仲間になる。それぞれの能力や個性が明らかになる。個性的が仲間達で会話や掛け合いが面白くなってくる。
冒険と試練: 旅の中で様々な困難や試練に直面し、仲間との絆が深まる。特に桃太郎の未熟さや幼さ、傲慢さといったものがきっかけで仲間と対立したり喧嘩したりするが、仲間のおかげで桃太郎は成長していく。また、鬼の手下との戦いや、自然の厳しさなどが描かれる。
ミッドポイント: 一時的な敗北や挫折を経験し、全てを失いかけるが、仲間の助けや自分の内なる強さを見つけて立ち直る。
第三幕: 解決
最終決戦: 鬼ヶ島に到達し、鬼との最終決戦が繰り広げられる。各キャラクターが自分の役割を果たし、協力して鬼を打ち倒す。
村の平和: 鬼を倒して宝物を持ち帰り、村に平和をもたらす。桃太郎と仲間たちは村人たちから感謝される。
成長と学び: 桃太郎が冒険を通じて得た友情や勇気、自己成長が強調される。物語は桃太郎の成長と共に締めくくられる。
このように、桃太郎の物語を三幕構成に沿って(三幕構成に限らずロジカルに狙った方向性に向かうように)整理することで、一貫した構成と効果的なエピソードの配置が可能となる。
注意点
注意すべきなのは三幕構成やハリウッド流脚本術はあくまでツールであるということ。初心者にまたよくありがちなのが、こういったツールや構成法にふりまわされて、工夫の無いシナリオになってしまったり、振り回されすぎて書けなくなってしまうことだ。
そういった時に大事なのは、矛盾するようだが独りよがりだろうと何だろうと「自分が最初に何を書きたいと思ったのか?」「自分が面白い!」と思ったときの情熱や欲求だと思う。
そこはやっぱり大事なのだ。
それを効果的に表現するためのツールが、ノウハウなのであると思う。
基本や「型」を学ぶことの重要性
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知っているのと知っていないのとでは大違いだ。知った上で「あえて使わない」というのも有りだろう。基本を理解した上でそれをあえて破ることで、より深い創造性や独自性が生まれる。これは多くのクリエイティブな分野で認識されている事実。
絵を描いたり、ピアノを弾いたりする場合は基本を習うのに、シナリオを書く場合は「そんなものはいらない」と自己流で書いてしまいがちだ。
字を書くこと物語を考えることは人間の基本的な能力だからだ。
だがシナリオにも何千年もの歴史の中で確固として変わらない「型」がある。それを学び、学んだ上であえて型を破ることができる。
「守破離(しゅはり)」という奴である。
守破離は、日本の伝統的な学習プロセスで、まず基本を守り、それを破り、最終的に離れて独自のスタイルを確立するというもの。この考え方はシナリオライティングにも適用可能であり、非常に有効なアプローチだ。
例えば、三幕構成やヒーローズジャーニーなど、これらの型を学ぶことで、物語の一貫性や深みを増すことができるはずだ。
だったら学んだら良いと、自分は思う。
基礎を学ぶことで、自分の作品に深みと一貫性を持たせることができ、また、学んだ上での独自性を追求することができる。
天才にはこんなのは不要かもしれないけど。
といっても、一部の天才は自然とこのプロセスを身につけているのかもしれない。天才であるが故に最初から型を使いこなしてしまう。とはいえ、ほとんどの人にとって基本を学ぶことは非常に有益。
そんな初心者に特にオススメな本
ブレイク・スナイダーの「Save the Cat!: The Last Book on Screenwriting You'll Ever Need」(「SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術」)
とりあえず読んでおいて損はないし、色々な脚本術の本の中でもとてもわかりやすい。
難解ながら必読本
シド・フィールドの「Screenplay: The Foundations of Screenwriting」(「映画を書くためにあなたがしなければならないこと」)
最近の本だとこれもお勧め
初心者にもおすすめ。大変わかりやすい。
小説だけじゃ無く映画やゲームシナリオにも役立つだろう。
三幕構成以外の構成手法が紹介されている
つまったときやアイデアの出し方なども記載されている
他の書籍でも似たようなことは書かれているところは多い。ただそれは「基本」を押さえているからだ。
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