健康診断の受診率向上について〜医療圏及び市町村毎に〜
こんにちは。
いつも記事をご覧いただきありがとうございます。
今回は、健康診断の受診率向上に関する内容を説明していきます。
健康診断の受診者は基本的に、お住まいの医療圏、または市町村に存在する健診機関で受診すると思います。
健診を実施している機関の共通の課題として『受診率向上』が挙げられます。また受診率向上は日本社会の課題でもあります。
本記事を通じ、受診率の現状や、受診率向上に向けた取り組みをお伝えできればと思います。
それではどうぞ!
受診率向上の意義やメリットとは
健康診断の受診率向上に関しては、『国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な方針』として、平成25年より厚生労働省主体で推進されています。その1つに「地域・職域連携の推進等による特定健診・がん検診の受診率向上」が掲げられています。この取り組みもあり、すでに成果を上げている地方自治体も存在します。
また、現在の日本社会は少子高齢化が進んでおり、大きな社会問題となっています。その中でいかに”予防や健康管理への重点化”をおこない、医療費を抑えることができるかが重要な観点になっています。健康な高齢期を送るためには、壮年期からの総合的な健康づくりが重要であるため、市町村が健康増進法に基づき実施している健康教育、健康診断等の健康増進事業の一層の推進が必要になります。その為、多くの方に予防の意識を持って頂き、健康診断への受診率が向上することは大きな意義を成します。
少し視点を変え、受診率向上による健診実施機関へのメリットも存在します。受診率が向上することへのメリットは大きく、それは健診収益性が向上することです。特に人間ドックの相場は3~6万円が一般的であり、この金額は入院単価とそれほど大きく変わりません。(※1 日本人間ドック健診協会:人間ドックの価格調査 参照)また投入する医療資源は入院治療よりも少なく済むため、収益性は高くなります。
また同一法人内にて、2次検診や外来受診が可能な場合は、再受診等が必要な患者様に対して、法人内にて医療サービスの提供が可能になります。これは、患者様とのコミュニケーションをより密に築くことができます。
健康診断の受診者が増えることでのメリットは医療機関においても多いと感じます。
健康診断の受診率
ここで現状の受診率を確認していきましょう。
今回は、特定健診に関する項目で確認していきます。
特定健診の詳しい概要は、以下の記事で説明していますので、気になる方はご覧ください。
以下は被用者保険の特定健診実施率を表記しています。
どの保険者の種類においても、被扶養者の受診率は低い数値になっています。また特に、『協会けんぽ』に属する保険者の受診率が低いことが分かります。
この数値より、特に受診率の低い『被扶養者』の健診受診率向上が重要になりますね。
また、受診率の低い協会けんぽに属している保険者も重要です。協会けんぽは主に、中小企業の従業員とその扶養家族を対象とした健康保険になるので、中小企業への受診勧奨も重要になります。
では『なぜ健診を受けないのか』について考えたいと思います。
以下は健診等を受けなかった理由が記載されています。
上の図より、「心配な時はいつでも医療機関を受診できるから」という理由が多いのが分かります。現状は健康であるので大丈夫という心理が働いていると思います。
奈良支部の事例
協会けんぽの奈良支部の事例も紹介します。
奈良県の生活習慣病予防健診の受診率は全国平均の51%を下回り、43.3%になっています。
その為、特に受診率の低い被保険者の受診率向上対策”生活習慣病予防健診の実施率向上対策”は急務であるとし、取り組んでいます。
データを確認していきましょう。
以下は2次医療圏別の未受診率になります。
どの医療圏も40~50%台を推移しています。
しかし、奈良と南和を比べると10%以上の差を認めており、医療圏毎の違いも確認できます。
二次医療圏では、市部の奈良地区から離れるほど未受診者が多くなっており、南和地区の未受診者が多い結果です。居住地区内の生習病健診実施機関数や受入れ人数、受診手段の選択数等の社会・環境要因の影響を大きく受けていると考えられます。
以下は業態別の未受診率の図になります。
対象者数の多い医療業・福祉業、公務について健診未受診率が高いことが分かります。業態により、生習病健診を受けやすい・受けにくい・継続受診しやすい・しにくい要因があると考えられますね。
以下は事業所規模別の未受診率になります。
規模が小さい事業所の健診未受診率が高いことが分かります。
これは小規模事業所において健診受診が徹底されていない可能性が示唆される結果かと思います。
受診勧奨において実施できること
ここからは受診勧奨において実施できることを確認していきます。
受診勧奨において重要な3大要素が存在します。
それは受診行動に影響を与える3大要素と言われており、以下の内容になります。
それぞれを確認していきます。
『①意識の向上』ですが、疾病や検診の意義に対する理解を深めるサポートが重要になります。例えば、がん検診の理解が乏しい人や、検査の精度を疑っている人にとっては、受診の優先順位は低いです。その為、がんそのものに対する知識やがん検診についての理解を深めることが必要になります。
『②障害の除去』ですが、費用やアクセスなどの受診環境を整えることになります。上記の奈良支部の医療圏での事例にもあったように、中心地から外れると受診率が低下します。検診場所や時間の利便性、も しくは費用の問題から予約を先延ばしにする場合もあります。このような受診行動に対する障害をひとつずつ除去していくことも必要になります。
『③きかっけの提供』ですが、適切なメッセージによる個別の勧奨があります。健診を受けなかった人の理由に1番多いのが、「心配な時はいつでも医療機関を受診できるから」です。このように、「今は自覚症状がないから、必要な時に行こう」と思っている人に対して“今”行くきっかけを与えられるかどうかが非常に重要になります。
ここからは様々な事例を確認できればと思います。
市町村や医療圏での事例
●山梨県甲州市
特定健診受診率の向上に注力し、平成20年度以降連続増加を記録しています。
【主な取り組み】
・アンケート結果の未受診者理由別に応じた受診勧奨(電話やリーフレット)
・医師会との連携により特定健診受診場所の拡大や情報提供事業の展開
・各地区の保健環境委員及び保健環境推進員の育成と活用
●北海道函館市
特定健診受診率の向上に注力し、平成22年度以降連続増加を記録しています。
【主な取り組み】
・限られた予算、少人数体制でも実現可能なターゲット(未受診者)の選定及び「ハガキ」による個別勧奨
・勧奨用ハガキの順次改良
・医師会健診センターとの連携による受診環境の段階的整備、拡大
●石川県金沢市医師会
金沢市医師会は金沢市と連携し、医師全員の目標共有にて、胃がん個別受診3.1%アップに成功しています。
【主な取り組み】
・検診を受託している全医療機関の参加が義務付けられている年度始めの事業説明会で、受診率向上の意義が共有され、目標も設定
・かかりつけ医から直接、受診勧奨を実施
まとめ
今回は、健康診断の受診率向上についてまとめています。医療圏や市町村毎の取り組み等についても記載しています。
受診率を向上する為には、医療機関同士の協力や連携、市町村との連携も重要になります。また健診実施機関の個別での対策も非常に有効になります。
受診率向上は、日本全体においても、健診実施機関や受診者にとってもメリットがある内容です。今後も受診率向上を目指し、様々な取り組みが活発化する流れが継続できればと思います。
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札場
Tel:06-6123-8162
Email:m.fudaba@altura.co.jp
●参考
・特定健診・保健指導の 実施率向上について(厚生労働省)
・健診受診率向上対策:地域等の分析及び健診事業の推進(協会けんぽ奈良支部)
・受診率向上施策ハンドブック(厚生労働省)
・特定健診・がん検診受診率向上に役立つ好事例集(日本公衆衛生協会)
・高齢化社会への対応(経済産業省ヘルスケア産業課)
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