『かくて果実は腐りゆく』
闇夜のような漆黒に、荒々しく打ちつける青。辺りにはそんな波の音と、人間の心臓の音だけが響いている。
その二色の間に、男が一人、仰向けになって空を見上げている。
「灰色の空、なんかの鳥が1匹、飛び去っていく。
もう長いこと、此処にこうして居る、気がする。
イヌに食い千切られた足も、サルに引き裂かれた腹も、キジに潰された目も、どこも既に、痛いという感覚を通り越していた。
人間というのは存外しぶといもので、突如迫ってきたこの"死"とかいうものは、俺の目の前まで来ておいて、今は立ち止