【文語②】言ひ訳をまよひまよひて飲みこみしことをおぼゆる地蔵ならべり

 ふたつめの文語チャレンジは、今野さんの本をちょうど読みはじめた辺りでよんでみた文語短歌です。この記事のために品詞分解していたら、誤りがあるのに気がつきました。せっかくなので、下には当初よんだものをそのまま載せて、間違いついても触れながら書いていきたいと思います。タイトルは修正版です。
 なお、twitterに投稿した時点では現代仮名遣いにしていたのですが、ここでは活用が分かりやすいように旧仮名遣いにします。
 歌は以下になります:

言ひ訳をまよひまよひて飲みくだしことをおぼゆる地蔵ならべり

品詞分解

まよひ:まよふ [動詞、ハ行四段、連用形]
て:接続助詞
飲み:飲む [動詞、マ行四段、連用形] 
くだし:くだす [動詞、サ行四段、連体形?連用形?] ※ここが誤用
おぼゆる:おぼゆ [動詞、ヤ行下二段、連体形]
ならべ:ならぶ [動詞、バ行四段、已然形] 
り:り [助動詞、終止形、四段活用の已然形接続] 完了

 品詞分解については以上です。誤用について発見した部分について、いかに書いておこうと思います。

「くだし」ではなく「くだしし」

 まず、わたしが詠みたかった景を書きますと、「言い訳をするかまよってまよって飲み込んで、だれにも知られなかった言い訳があることをしめす(水子)地蔵がいつのまにか並んでいた」というものです。「のみくだし」のところは過去形のつもりでしたが、品詞分解したら過去形の意味が入っていなかった、というのが誤りになります。
 「し」は過去の助動詞「き」の連体形なので、これで過去をあらわした気持ちになっていたのですが、そうすると「し」につながる「くだす」という動詞は連用形でなくてはなりません。「くだす」の連用形は「くだし」なので「し」がひとつ足りない!つまり、正しくは「飲みくだしし」で、「飲みくだした」の意味になるということですね。あぶないあぶない。
 ただ、残念ながら「飲みくだしし」だと字余りになってしまいます。これの解決方法について、さらに下に書いていこうと思います。なお「飲み+くだす」という表現が文語的に違和感がないかという点はやや不安ですがここではゆるしてください。
 ちなみにもうひとつ、こちらは結果的には間違っていなかったのですが、過去の助動詞「し」の接続は要注意らしく、サ行変格活用動詞の場合のみ例外がある(「しし」ではなく「せし」になる)ということが、今野本に書かれているので、これも心に留めておきたいと思いました。

「飲みこむ」の活用は?

 「飲みくだしし」だと字余りになってしまう件、「飲みくだす」を「飲みこむ」にすることで一字減らせるな、と思いました。ただ「のみこむ」もweblio古語辞典では見つけられませんでした。本来は用例が見つかられない以上諦めるべきなのかもしれませんが、「のみ+こむ」として「こむ」の活用をみてみました。

こむ [二]他動詞 マ行四段活用 意味:詰め込む、押し込む。
こむ [三]他動詞 マ行下二段活用  意味:①中に入れる、閉じ込める。②包み隠す、秘密にする。

どっちでしょう。意味的には用法は[二]が近いですが、意味的には[三]のような気もします。活用を実際に書いてみました。

マ行四段:飲み込まず/飲み込みたり/飲み込む/飲み込む時/飲み込めれど/飲み込め
マ行下二段:飲み込めず/飲み込めたり/飲み込む/飲み込むる時/飲み込めれど/飲み込め

 マ行下二段は、気持ちを込める的な「込める」の活用で、違うかな…。ということで、口語的感覚で判定している時点でグレーではありますが、マ行四段を採用することにします。違和感あるというコメントがあればぜひいただけるとありがたいです。結果としてまず以下が完成形です。

言ひ訳をまよひまよひて飲みこみしことをおぼゆる地蔵ならべり

「ならべり」の部分について

 この記事はここでいったんおしまいです。ただ、結果的に間違いではなかった「ならべり」の部分も、調べてみると実はニアミスがあったりと、いくつか書いておきたいことがあるので、あとで別記事で追記すると思います。先に書いておくと、主に以下についてです。

  1. 完了の助動詞「り」の接続の特殊性について。

  2. 「り」以外の助動詞の可能性について。

 では今日はここまで!間違いがあったら教えてください!楽しいですね。

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