【文語③】ふりつみし詩歌の底の鉱脈にふればはんとぞ文語はじむる

 先日うたの日で文語の日がありました。なんというタイミング。文語の歌を詠めるようになりたいな、とつぶやいてこのかた、見えない手に背中を押してもらっているような気もします。最初はそのなにげないつぶやきにたくさんのイイネをいただいて、「お、おう」となって。そのあとはうたの日。もしかしたら女神がみてくれていたのかもしれません。
 それで何を詠もうかなって思って、普段は題からうまくひねれない(?)のが悩みなのですが、今回ばっかりは素直に文語の「文」でいこうかなって思いました。 

ふりつみし詩歌の底の鉱脈にふればはんとぞ文語はじむる

2022年11月3日うたの日『題『文』を文語で』

品詞分解

ふりすみし:ふりつむ [動詞、マ行四段、連用形] ふりつもる
し:き [助動詞、連体形] 過去
ふればは:ふればふ [動詞、ハ行四段、未然形] 触れにいく
ん:む(ん) [助動詞、終止形] 推量の助動詞だけど意思の方
とぞ:係助詞 (「と」が格助詞、「ぞ」が係助詞かも)
はじむる:はじむ [動詞、マ行下二段、連用形] はじめる

 たぶん文法は間違ってない、と思います…。

 上の句自分でも好きなのですが、下の句をなやみながら、ぎりぎりまでいじりながら9時部屋に滑り込みました。「とぞ」+連体形の係り結びにしたかったのか、正直分からないです。頭でっかちになってしまって。文法上の悩みポイントは、

  • 「とぞ」の係結びの間に主語が入れ替わってもいいのか?一応入れ替わっている用例を見つけたので採用したがいまいち自分自身でしっくりきていない。

  • 「とぞ」の係結びで結句が連体形になるので、助動詞をつけると字数がたりない。完了形「たる」「ぬる」がつけられると安心だったけど、字余りになってしまう。はだかの「はじむる」どう読まれるのか自分でまだしっくりきていない。

 というような感じでした。

目標は文語で詠む、ではなく文語をよむ

 まあなにをごちゃごちゃ言ってるんだと思われるかもしれませんが、じっさいごちゃごちゃしてます。詩情からは遠い。でも勉強しているときはこんなものですね。

 みなさんの歌も楽しく読ませていただきましたが、普段とはちょっと違って、この活用は~とか考えてしまって、評を書くようなところまで気持ちがいきませんでした。もったいない。けどしょうがない。こうやってちょっとずつ消化できないものがたまっていくことで、実際に用例に触れたときの感度があがるんだと思います。そして、そのうち自然に読めるようになってきたとき、鉱脈が目の前にひらける…、といいなぁとおもいます。

 でももうちょっとすなおな気持ちでみんなの歌を読みたかったなぁ。世界がとおいです。

#5 広泛無垠的沙漠熱烈地追求着一葉緑草的愛,但她揺揺頭,笑起来,飛了開去。
(広大無限の砂漠はひとひらの緑の愛を希求し、しかしそれは首を振り、微笑んで、去って行ってしまった。)
#2 世界上的一隊小小的漂泊者呀,請留下你们的足印在我的文字里。
(世界のちいさな漂流者たちよ、あなたたちの足跡をどうか私の文字のなかにのこしておくれ)

泰戈尔《飞鸟集》

#3 世界面対着它的愛人,把浩瀚的面具揭下了。它変小了,小如一首歌,下如一回永恒的接吻。
(世界は彼に向き合って、そのはるかなる仮面を取り去った。世界はとたんに小さくなった、ひとつの歌のように、ただ一回の永遠の接吻のように)

泰戈尔《飞鸟集》

 でも、とてもいい機会でした。ふだん口語で読まれている方のほとんどの参加者は「文語、げ!」って思ったんじゃないかと思ったんですけど(1ヶ月前の自分だったら思っていたなぁと)、戸惑いもありつつのみなさんの歌がぶわぁって入ってきて。そんななかで、すらっと詠める方もほんとうに素敵だなと感心したり。
 今日は以上です。刺激になったし、たのしかったです。ありがとうございました。

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