【文語⑥】立冬すぐ天いよいよ風を捲き子らに厚着をせしむれと捲く

立冬すぐ天いよいよ風を捲き子らに厚着をせしむれと捲く

品詞分解

すぐ:過ぐ [動詞、ガ行上二段、終止形]
いよいよ:[副詞]
捲き:捲く [動詞、カ行四段、連用形]
せ:す [動詞、サ行変格、未然形] (厚着を)する
しむれ:しむ [助動詞、命令形、未然形接続] 使役
捲く:捲く [動詞、カ行四段、終止形]

 今日はかなり寒かったです。スターバックスの中から外行く人たちを見ていたのですが、やはり皆さんだいぶ厚着になって。おもしろいなと思ったのが、ダウンとかを着せられてモコモコになったのは子どもたち。でも連れ添っている大人はまだそこそこ。冬物の準備が途中でひとまず子どもだけはと厚着をさせたのでしょうか。この北風が子どもに服を着させなさいよ言っているようでもある、と思ってよんだ歌です。

「せしむれ」

 サ行変格活用の「す」と、使役の助動詞「しむ」はどちらも使うのがはじめてで、調べたもののあまり自信がわかないです。「す」は「する」の意味なので、「厚着をする」ということで主語は子どもです。これに使役「しむ」をつけて「厚着をさせる」、さらに「しむ」を命令形に活用して「厚着をさせよ」の意味にしているつもりです。

 使役の助動詞は「す」「さす」「しむ」の三つがあり、短歌においては「しむ」の採用が多く、「す」は少ない、「さす」はかなり少ないということが、今野先生の『短歌のための文語文法入門』に書かれています。とくに「す」は四段動詞、ナ変動詞、ラ変動詞(のいずれも未然形)にのみ接続するということですので、サ変動詞「す」への接続は「しむ」一択ということになります。たしかに「せしむ」なら聞いたことあるかな。これをさらに命令形にするというパターンは少なそうですし、「せしむれ」に聞きなじみがなくてもおかしくはないです。

 なお、意思をあらわす助動詞「ん(む)」を使えば、「子らに厚着をせしめんと捲く」となり、ぐっと聞きなじみがある音はこびになりますので、こちらに逃げたい気持ちに少しなりましたが、あくまで風があおり立てているのは大人達であるという景を大事にして、「せしむれ」としました。

 今日はこんな感じです!

 



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