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なぜシミュレータ?と聞かれるので  パート③

Time Building(時間付け) 

パイロット資格取得や就職までの課程で良く聞く言葉です。Instrument Rating(計器飛行証明)やCommercial Piot(事業用操縦士)など資格取得に必要な飛行経験を満たすためのTime Buildingもあれば、プロパイロットとして就職に必要な飛行時間を満たすためのTime Buildingもあります。

FAA Part61スクールのInstrument RatingであればPilot In Command(機長)としてフライトしたCross-Country(野外飛行)が50時間必要となりますし、FAA Part61スクールのCommercial PilotであればTotal Time(総飛行時間)が250時間必要となります。

ほとんどの方は自分の技量に見合った飛び慣れたところで実施するのが一般的ではないでしょうか。時々チャレンジして遠出をしてみる。チャレンジする時には慣れたパイロットや教官を同乗させて飛んでみるとか。

プロパイロット資格を持っていても就職するためには、数百時間から数千時間必要となります。そのために教官としてTime Buildingをしているのが現状です。

チャレンジするフライトの意義

経験の幅を広げる。これは自身のパイロットとしての知識経験を広げることに繋がるだけではなく、安全飛行を遂行するためにはあればあるほどいいものです。パイロットはできるだけ多くの知識と経験があればあるほどいいですが、所詮一人の人間ができる量はたかが知れています。玉那覇がJCAB 事業用操縦士合格した時に試験官から「少ない飛行経験は知識で補ってください」と言われてことを覚えています。当時はフライトシミュレーターがゲームレベルでしたの知識と言われたと思いますが、今だったらフライトシミュレーターで知識と技術を補ってください。となっているかも知れませんね。

例をあげます。ここに二人のパイロットがいます。二人とも総飛行時間は同じく300時間です。Time Buildingとして200時間くらいです。残りの100時間は教官同乗訓練や必要な単独飛行などの訓練時間です。

二人の違いは二つあります。パイロットAは、Time Buildingをひたすらローカルエリアを中心に飛んでいました。あまりチャレンジしていないパイロットとしてます。一方パイロットBは、①できるだけ多くのエリアに飛んでいた。②フライトシミュレーターでこの時間とは別に100時間くらい飛んでいた。チャレンジしたフライトの前にフライトシミュレーターで検証してから実施した。フライトシミュレーターのフライトはシナリオを組んで飛んでいた。

シナリオとは、フライトの目的が設定されいて、使用する空港が全て異なり、フライトするエリアは山岳地域、超忙しい空域、砂漠のど真ん中、天候がいい時、悪い時、飛ぶ機材も単発多発各数種類、乗客貨物も少数から満載まで様々、Visual Flight RuleもInstrument Flight Ruleも、それぞれを組み合わせる方法も、と毎回フライト前には数時間かけて計画を立ててフライトしていました。フライトシミュレーターで。

パイロットAとパイロットB、Logbookに記載されている総飛行時間は同じですが、明かにパイロットBの方が知識と経験が豊富なことに気付きませんか?プロパイロットの登竜門である教官パイロットとして新米期間でも話のネタはたくさんあると思いませんか?そういう教官に教えて欲しくないですか?そういうパイロットになってみたくないですか?


FAAの推奨するFITS訓練

FAA-Industry Training Standards(FITS)には推奨する訓練がシラバスとして提示されています。各訓練課程に必要な知識技術をシナリオという形で提供して意思決定能力の育成も目指しているのです。様々なシナリオを通して前述のようなたくさんの経験をして欲しいというのがFAAの考え方です。

それぞれのフライトに次のようなシナリオが組み込まれています。

あなたの資格:例えば、Commercial Pilot(資格条件でできることできない事が分けられます。その差を知っていますか?)

フライトの理由:例えば、勤務先の上司から顧客から依頼された内容(ここは毎回変わるし、パイロットとしての判断を迫られる)

更に、使用する空港・エリア・天候・使用する機材など様々な要因を加える事で更に頭を使うことになるのです。シミュレーターであれば、その要因を容易に変更設定する事ができます。リアルな天候をインターネットを通じてダウンロードすることも可能ですし、リアルな人間との無線通信も可能です。リアルな人間との無線通信のプラグインにはフライト前のフライトプランの入力も必須なので、更にリアルが増します。なので、事前にかける時間ってリアルな飛行と同じくらいになります。

アメリカシアトル在住のBruce Williams氏は簡易的なフライトシミュレーターでもPrivate PilotやInstrument Ratingに実施可能なシナリオトレーニングを提案しています。。なぜシミュレーター?と聞かれるので・パート①でも紹介したBruce氏です。この二冊目の本を読んで玉那覇はすぐに彼に連絡をとり、お互いのベース(沖縄とシアトル)で飛行機に実際に乗り教育方法についてシナリオ訓練のノウハウをディスカッションしたという経緯があります。ビデオは沖縄に来て頂いた時に収録したものです。


Time Buildingが認められている

FAA Approved Aviation Training Device(ATD)を使用してPrivate Pilot、Instrument Rating、Commercial Pilot、Instrument CurrencyなどのFAA訓練を受けると、それぞれの必要要件に充当が可能なのです。

経験を付けながら、実機訓練時間を短縮する事ができるのがシミュレーター訓練の優位性なのです。

Private Pilotでは2.5時間

Instrument Ratingでは20時間

Commercial Pilotでは50時間

それぞれの課程で規定以上の時間を無制限に練習してログ付することには全く問題ありません。むしろ全てログ付して自身の記録としておくべきです。実地試験の際に許容される時間が上記の時間なのです。

FAA Part 61でのCommercial Pilotには250時間の飛行時間が必要とされていますが、その20%にあたる50時間がシミュレーターでできることはすごいことです。繰り返しになりますが、その50時間を実機とはいえローカルで慣れ親しんだところでフライトするパイロットと、その50時間を出発前に数時間かけて頭を使い実際のシミュレーター訓練では汗をかくパイロット、の違いです。

そのシナリオベース訓練については、次回のパイロットクラブメンバーシップデイでもお話しします。







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